無機的存在が映し出す現代の不条理、政治的心情は別として何を思うのか……

私たちは二十一世紀を迎えても、ガザ・レバノン、ウクライナ・ミャンマー等々、世界中の人道危機に対する国際社会の不条理を目の当たりにしています。そこでは、今日も幼子たちがたくさん亡くなっているというのに、国際社会と同じく私たち個人も何ひとつ手だてがないのが実情です。

この作品は、そんな現実を過去の遺物として目を背けてしまう人間の精神状態や、現代社会の無力さを鋭く描写しています。特に、組織的・集団的に陥りやすい「伝染性」のある精神状態という視点は非常に興味深いです。また、「無機的存在」という表現を通じて、人間として最も大切な部分が欠落してしまった現代社会の問題点を浮き彫りにしています。改めて自分自身を見つめ直す機会を与えていただき、ありがとうございました。