第9夜

 真夜中の学校、その屋上で静かに見下ろす僕。校庭には激しい戦闘を行うものが数名。


「今宵地を照らす光は少々……眩すぎる。光の中でこそ闇を真の闇へと導くだろう」


 腕を組みながら、フェンスに体を預けた僕はカッコいいセリフを意味深につぶやく。

 

 最高シチュエーション。おそらくまた夢の中だろう、どうやら僕にもう1回チャンスを当て得られたらしい。

 

 ドーン!校舎に魔物がぶつかってきたせいでバランスが崩れる。

 

 安全フェンスの外に立っていたので、バランスを崩したまま空中に放り出されてしまう。


「やばっ!……ッと思ったけど夢の中だからセーフか。」


 真っ逆さまに校舎から落ちている最中に少し危機感を抱くが、すぐに夢の中であることに気が付いてあることを思いつく。


「このまま飛んでみるか。空を自由に飛ぶことは人類の夢!」


 地面に直撃する瞬間。重力を無視して天高く舞い上がった。


「素晴らしい!……前回より行動の制限が解放された気分だ!」


 天高く舞い上がったまま、両手を広げ、つかみ取った自由を謳歌していた。


 この時もちろん月の陰に入ることを忘れてはいない。カッコいいを追求してこそのこの世界夜に抜け目はなかった。


「さて今日はどうするか」


 校庭を見下ろすとデカい羊が一匹、角の生えた翼をもった大きな悪魔が1匹、牛みたいなのが3匹。その他もろもろの人間。

 

 僕はその中の一人光り輝いているオーラを放っている男に注目した。


「光の騎士っといったところか……。攻撃するたびにバラの舞い散る演出悪くない。」


 うんうんと首を縦に、うなずきながらしばらく様子を伺いながら考えた。しばらくどうしようか考えていると、眩い光の光線が牛を湧きつくしてしまった。

 

「しまった、考えすぎて獲物を取られてしまった。……それにしても眩しかったな……そうか!やっぱりさっきのあれでいこう!」


 今夜の遊び方の方針を決めた夜はワクワクしながら、目をつぶって想像し始めた。


 闇が夜の全身を覆っていく。ゆっくりと闇は形を変えていき、全身を漆黒の鎧の姿へと形を変えた。


 光沢のある美しいい金属、闇の中に刺す一筋の光を表すような黄金の薄いライン。シンプルにしてゴージャスさを醸し出す鎧は夜が想像した以上のカッコよさを兼ねそろえていた。


 手には重量感のある黒いロングソード。盾はいらない……。剣1本で勝利することにこそ意味がある。


 そして最後に何が何でも欠かせないもの。何のために必要かと聞かれたら、僕はこう答える。そう……ロマンであると。羽のようにマントを風になびかせると僕の準備は整った。


 最後に重要なのはタイミング。すべてにおいて、これを間違うと台無しになってします。今日1番の集中するべきポイントだ!あとせっかくだし演出も考えてみよう。


 黒い騎士はマントをなびかせながら、全力で空中からタイミングを見計らっている。しかしヘルメットの下ではカッコいい演出を考える顔はほころんでいた。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「どうした全力でかかってくるのではなかったのか?一撃、一撃が軽いぞ。スピードだけではないか」


 先ほどの攻撃よりも格段に威力、スピードが上昇した蓬郷の連撃であったが悪魔は余裕をもっていなしていく。

 

「いや……俺のカッコよさはとどまることを知らない!」


「カッコよさ?……何を言っているんだ?」


 話が伝わってないように感じた悪魔はただ速いだけ絵の連撃に少し飽き飽きしてきたので終わらせようと考え始めたとき。


 ザシュ!


 その瞬間、悪魔の皮膚に細かな切り傷が浮かび上がった。それは、初めて傷が悪魔につけられた瞬間であった。


(は?傷……?追いきれなかった?こんな訳もわからないやつに?)


 今までのうすら笑っていた、なめ腐った傲慢な態度から一変して、悪魔の顔にはこれまでに見せたことのない怒りの表情が浮かんだ。


 悪魔は蓬郷を睨みつけ、その視線は鋭く、かつてないほどの憎悪が溢れ出している。


「やっと俺のカッコよさに気が付いたのか?」


 初めて視線を合わした悪魔にあおりを入れる余裕を見せつけると、悪魔は態度を改め、目の前の人間が敵であると認識した。

 

 しかし、連撃は止まらない、むしろより速く、より強烈な攻撃が続く。

 黄金色のバラの花弁は美しく舞い散る。


 悪魔の体に刻み付けられる傷はだんだん増えていく。

 

 激しい攻撃の末、手ごたえのある一撃とともに悪魔は吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされた先に、援軍に来ていたメェーメェの重いパンチが入った。


「みゅう!まだだ!追撃するぞ!」


「分かってる!1発だけで終わらせるわけない」


 あくもの力を知った蓬郷は、確実に仕留めるために追加で攻撃を続けるように伝えるが、再生能力の厄介さを見たみゅうも手を緩めない。

 

「なめるな!!この虫けら風情が!!!!」


 油断はしていなかったが、しかし2人の攻撃は止められた。


 メェーメェは雷撃を纏った鋭い爪によって引き裂かれ、追撃のために近づいていた蓬郷もその攻撃に巻き込まれた。


 「噓っ!メェーメェ!」ふわふわの雲が形を整えられなくなり崩れる。

 初めてメェーメェがやられたショックでみゅうはその場に崩れる。


「よくも我をコケにしてくれたな!」


 悪魔に先ほど付けた傷は綺麗になくなっており、少し禍々しく、体もひと回り大きくなった姿で傷ついた蓬郷を見下ろす。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

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