第21話 買い出し
目が覚めたら横に僕の寝袋に入った明がいた。僕はどうやら酔い潰れたらしい。エアコンの暖房がつけっぱなしだったので、凍死しないで済んだ。
流しで水を出す。コップもないので手に水をため口をすすぐ。冷たい。
スマホを見るともう八時近い。バッテリーの状態に気づいてあわてて充電する。ついでに明を蹴っ飛ばしておこす。
「なんだよ、痛えなぁ」
「うるせぇ起きろ。今日買い出しだろ」
「そ、そうか」
ごそごそと明が寝袋から出てきた。交代でシャワーを浴び、着替える。
「明、家にいても何もないから、早いけどショッピングセンター行こうぜ」
「そうだな」
ショッピングセンターでは神崎さんたちと待ち合わせだ。新居から徒歩で30分近いが、歩いていくことにする。幸い天気はいい。
待ち合わせはフードコートにしてあった。かなり早く着いたから、もちろん神崎さんと緒方さんは来ていない。ドーナッツとコーヒーで朝食にした。
たべおわったところで明が言う。
「女子が来る前にちゃんと片付けておこうぜ」
「なんで」
「女子より先に甘いもの食ってたなんて、カッコ悪いだろう」
「そんなもんか」
やがて神崎さんと緒方さんがやってきた。厚着の僕たちと違って、上着を着ていない。車は便利だと思う。
「おまたせ~」
「僕たち早く着いてただけだよ」
挨拶してきた神崎さんに返事する。
「明くん、札幌第一夜はどうだった?」
緒方さんの質問に明が答える。
「生活用品なんにも無いからさ、修二のところで飲んでた」
「そうか、私も同じ。聖女様のところで飲んでた。聖女様の部屋広くて快適だった」
それはいいなと声に出さず思っていたら、緒方さんに釘をさされた。
「聖女様のとこ、女性専用だから男子入れないよ」
早めの昼食を摂る。僕も明もドーナッツを食べたばかりだから、軽めにハンバーガーにした。女子二名は丼ものをガッツリ食べている。
「あんたたち、意外と少ないね。飲み過ぎ?」
神崎さんの感想だが、ドーナッツを食べたからとは言えない。だから、
「で、どうしようか?」
とごまかす。
「まずはここで、食器類とか雑貨買ったほうがいいかな。ホームセンターにもあるけど、かわいいのはこっちのほうがいいと思う」
とのアドバイスに全員一致で乗ることにした。
食器のお店では、モノトーンで統一された食器セットが目についた。実は母が食器ずきで買い物にさんざんつきあわされてきたので、食器の良し悪しには自信がある。これなら洋食でも和食でも合いそうだ。レジに向かうと神崎さんが恥ずかしそうに、
「私もそれ買った」
と言う。ならば一緒に暮らしても食器が統一できていいなどと妄想してしまった。
続けてホームセンターに向かう。いくら車でも三人分の食器でトランクはすでに結構埋まってきている。炊飯器、電子レンジ、ちゃぶ台、寝具を買う。いずれも配送を頼んだ。
鍋類も買わなくてはならない。安いセット品にする。安物はコーティングの耐久性が心配だが、あまり料理もしないだろう。料理経験が少ないから、計量カップも買わなくてはいけないだろう。
「修二くん、軽量カップ買うの?」
神崎さんである。
「うん、あんまり料理しないから、レシピ見るにしても正確にしないとね」
と答える。
「そうか、私も無いから買おう」
二人で色々見るが、結局目盛りが細かいプラスチック製のものになった。食器セット同様、神崎さんとおそろいになってしまった。
三人分の大荷物を積んで、神崎さんは走り回ってくれた。
「神崎さん、ほんと助かった。ありがとう」
車の後ろの座席から、運転中の神崎さんに話しかけた。
「おたがいさまよ。それより明日みんなで遊ぼうよ。来週からどうせ大学出るんでしょ」
嬉しい提案である。すぐに緒方さんが反応した。
「ならさ、私小樽行きたい。夏、三人で小樽行ったんでしょ。ずるいじゃん」
明が口を出す。
「別にのけもんにしたわけじゃないじゃん、でもいいとこだよ」
そういうわけで、明日は小樽に行くことになった。夏の小樽も良かったが、春の小樽はどうなんだろう。
その夜も明と痛飲した。
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