因みにこの時の体感は3分だった
お互いの疑問点が解消されたところでジャックが仕切り直しをするようにパンッと両手を叩いた。
「さて、そんな事よりアシュリーのドレスだよ。早く製作に取り掛かろうよ。」
「着るのは私なのになんで貴方が一番やる気何ですか……。」
そう言うとだって楽しみじゃんと彼は笑った。
「誰よりも綺麗なアシュリーの姿を見た目立ちたがり屋の皇后陛下がどんな顔をするのか楽しみだと思わない? 」
その言葉に反応したのはアマンダだった。
「え、皇后陛下を呼ぶの!? いや、それよりも来るの!? 」
アマンダの意見はもっともだ。普通に考えたら親睦を深めてもいない成り上がり貴族の結婚式なんて行っても彼女にメリットが無い。でも、彼女にとってもこれは私に接触できる数少ない機会なのも確かだから私に話を聞く為に来る可能性がとても高いのも事実だと思う。
「招待状を送ったら喜んで来てくれるはずさ。本当は彼女の悔しそうな顔を見れたら結婚式会場っていうよりこの世界から永久退場してもらいたいんだけど、アシュリーの我儘を聞いて我慢してあげようかなって。」
(何で、私が我儘を言ったみたいになってるのよ! )
他の貴族の事で頭から抜けていたけど、しっかりとマリアベルに殺意があった事に頭が痛くなった。ジャックが傷つけられたわけでもないのに私と同じくらいの殺意を彼女に向けている彼に正直、どういう反応をしたらいいのか分からなくなる時がある。
そんな彼を見て何か思うところがあるのかアマンダは顔をしかめてはいたけど、本来の訪問理由がドレス製作な事もあってかペンとノートを取り出していた。
「取りあえず何か要望はある? こんな形がいいとか、流行を取り入れたものが良いとか……。」
その言葉で香水事業の事を思い出したのでアマンダに尋ねてみた。
「今回の結婚式の目的の1つが香水事業なの。香水を引き立てるおすすめなデザインってあるかしら? 」
するとアマンダはそうねぇと言いながらペンを走らせていた。
「香水を服につける事があまり良くないから……。香水を付ける部分を多くするんだったら必然的に肌の露出が多いデザインになるんだけど、---そう言えば式って何処で挙げるの? 香水を付けるって事は神父をここに呼んで盛大にやるって事よね? 」
アマンダの言葉に雷に打たれた気分になった。そうだ、この作戦を実行するんだったら教会は選択肢から外れる。その事にピンと来てないのかジャックは不思議そうな顔をしているので私は説明を始めた。
「教会は華美な服装を良しとしないでしょう? それはウエディングドレスにも当てはまるの。肌を見せずに厳かに執り行うのがルールなのよ。」
令嬢時代にお母様達に連れられて結婚式に参加したことは結構あったけど、どの貴族も自分の屋敷の大きな庭園やホールで結婚式を行っていた。後でお母様から聞くと見せびらかしずらいし、地味だから今の時代は教会で挙げるのはよっぽどの信仰深い貴族しかしないらしい。……そのことをすっかり忘れてジャックに教会で式を挙げる事を提案したことに少し恥ずかしさを感じつつも説明すると彼は納得していた。
「じゃあ、教会は無しだね。……って事は式場は此処になるの? 」
ジャックの言葉でこの部屋に隙間風が吹いた感覚がした。そうだよね、この屋敷は今何もない状況だもんね。
「……実家に相談してみます。」
そう言って何も決まらないまま第一回目の相談会は終わったのだった。
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