またしても旦那のせいで大変な事になりそうです

自身の心を新たにし、再び二人のいる場所へ向かうとリリアナが私の元へ駆け寄ってきた。



「お母様、大丈夫!? 私が我儘を言ったから……。」



しゅんと落ち込んでしまったリリアナの頭を撫でて違うわと否定をした。



「リリアナとお仕事できることはとても喜ばしい事よ。……少し、びっくりしてしまっただけなの。」



心配かけてごめんねと言えばリリアナは首を横に振った。



「お母様が悲しくないならいいの!! お母様とお仕事とても楽しみだわ!! 」



楽しそうなリリアナの顔に俄然やる気が出てきていると、ジャックが本題を忘れてるよと少しむくれたような表情でこちらに話しかけてきた。



「結婚式!! これが大本命でしょ? 香水は副産物に過ぎないんだからそっちに力を入れられると困るんだけど。」



アシュリーのドレス姿楽しみだなぁと言っているジャックがやる気十分なのは結構な事だけど一つ聞きたいことがあった。



「そもそも、結婚式はどこでやるおつもりですか? 教会で挙げるなら早々に決めておかないといけませんし、違う場所なら牧師を呼ばないといけませんし……。」



ドレスももちろん大切な要素だけど貴族の結婚式は普通の結婚式とはわけが違う。案の定ジャックは良く分かっておらずポカンと口を開けてこちらを見ていた。


「貴方がイメージしている結婚式ではない事はお分かりですわよね? 」


「えーと……、君の言いたいことは分かるよ。貴族の結婚式は富と権威を示す重要なイベントだもんね? 」



それが分かっているなら何でそんな顔をするのか疑問に思っていると頬を掻きながら気まずそうにこちらを見ていた。



「正直、貴族の結婚式のイメージが思いつかないんだ。何が必要で準備するべきなのかアシュリーにはそれを教えてほしかったんだ。」


(何だ、ちゃんと考えてるじゃない)


ジャックが分からないのなんて当たり前だ、だからこそ失敗しない様に私に相談してくれた事が嬉しかった。


(この人に頼られるのは悪い気はしないのよね)



そんな事を考えているとジャックはさらに言葉を続けた。


「俺が笑われるのは別に構わないんだけどアシュリーが笑われたら結婚式に参加した人全員を氷漬けにしちゃう自信があるしね。」



えへへと彼は笑っているがこの男、とんでもないこと言いだしたので注意しようとすれば何とリリアナが素敵!! とジャックに賛同していた。


「一面の氷の中で行われる結婚式なんて早々見れるものじゃないわ! きっと幻想的なものになるのでしょうね!! 」



香水は別の機会に発表すればいいものね!なんて言い出すものだから冷汗が止まらない。



(結婚式失敗=参加者の死!? 冗談じゃないわ!! 今回はリリアナもジャック側に回るなんて……)



リリアナの発言に驚いたけど、度々、私に関わることで怒っていたリリアナがジャックの意見に賛成するのは可笑しな話じゃ、ない……のかも知れない。



(これは失敗できなくなってしまったわ……)



成り上がり貴族の結婚式なんて嫌味や嘲笑は当たり前に出てくると思っていたので参加者の反応なんて気にしないようにと決めていたのにジャックのせいで一番気にしないといけなくなった。



「絶対に完璧な結婚式にして見せるわよ!! 」



気合を入れる私に二人は不思議そうな顔をしながらもパチパチと私に拍手をくれたけど原因は貴方達よという言葉をグッと飲み込むのだった。






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