新事業開始の前に何かやる事があるらしい
「師匠は辞めてしまったのね。」
ヨハンがギルドを辞めてジャックが後任になった事を一番言いづらかったのは師匠と慕っていたリリアナだったが、予想はしていたけどやっぱりあっさりした感想だった。
「ヨハンの行方については伯爵様が探しているけど見つからないみたいで……。今は逢うのは難しいと思うわ。」
そう言うとリリアナはそうなのねと悲しい顔をしたので思わず抱きしめると大丈夫だよと言った。
「いつか会えるって信じてるから私の事は心配しないで。」
「そうだよ。それよりもこれからの事を考える為に集まったんだから早く話を進めようよ。」
今までの私達を見ていたジャックはむすっとしているがリリアナはそんな彼を見て鼻で笑っていた。
「お母様に受け入れてもらえてる私に嫉妬するのはご勝手ですがお父様のやらかしに対して何故私達が協力しなければならないのですか? 」
(それはご尤もかもしれないわね……)
いくらギルドを手に入れるのが本命だからと言って魔法具も魔法薬もびっくりするくらい安く売っていては此処から赤字をどうにかするのは凄く難しい。
それに、いくらリリアナが賢いからって経済や政治についての策を考える手助けをしろってかなり酷な気がする。
(協力って言っても私ですら令嬢時代は一切政治や経済の事についてお父様は教えてくれなかったわ)
だからこそ社交界や新聞を読んで情報を集め、お父様の書斎で独学で勉強した。この世界での女性の地位は男性に依存するし、私の偏見だけど貴族ほど不自由で残酷な社会は無いと思う。---貴族の女性は美しい鳥だ。
豪華な鳥かごの中に居る鳥は傍から見ればご飯の不自由もなく幸せに見えるかもしれないが、番を勝手に決められて主人の欲しいと思っている時に子供を産むことが決められている人生が幸せかと聞かれると答える事は今の私には難しい。
(お父様達に育ててもらった恩もあるしそれが当然だと思っていたけどリリアナを産んでからは考えが変わってしまったもの)
そんな事を思っているのにも関わらずまた貴族社会に戻って来ているのだから今思っている事を言ったところで綺麗ごとに聞こえるのでしょうけどと思っているとジャックがこちらをジッと見つめていたので咳払いをしてから私個人の見解を答えた。
「私は新しい事業を始めるのが良いとは思います。その事業が成功すれば既存の物の安さに誰かが口を挟まずにはいられないと思いますし。伯爵様は事業について何かお考えがありますか? 」
すると、質問の内容との相違があったのかジャックはきょとんとして何の話?と逆に問いかけてきた。
「何って……これからの伯爵としての地盤を固めると言うお話でしょう? 」
そう言うとジャックはそんな事よりもっと大事な事があるでだろう!? と私の方に前のめりになりながら言ってきたけど生憎思い当たる節が無いので考えているとジャックが私の両肩を掴みながら叫んだ。
「俺と君の結婚式がまだじゃないか!! 」
思いもよらない彼の言葉に私は言葉をなくしてリリアナがジャックと言い争いになるまで立ち尽くすのだった。
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