目標達成への思わぬ着眼点
「私の貴方の結婚式が最優先事項なんて正気ですか? 」
リリアナを何とか窘めて話を聞くと当たり前だよと力強く言い放った。
「認識阻害の魔法をかけたけど、君と俺の結婚式は皆の認識では結婚式を挙げる前にリリアナが生まれたからやってないという認識に変えたんだ。あまり現実との齟齬が大きすぎると俺たちだって話が合わせづらくなるからね。」
「タイミングが合わなかったと皆が理解しているのならする必要はないのでは? 」
「君の可愛い花嫁姿を皆に見せつけたい!! 」
(どの口が言うのやら……)
ジャックの言葉に呆れてしまった。そもそも結婚式をしないと言ったのは彼なのに気持ちが変わったからと言って結婚式をしたいとは都合がよすぎるんじゃないだろうか。気持ちが表情に出ていたのかジャックは慌てて他にも理由はあるよと言いだした。
「それに君は社交界に繋がる糸口を探していたじゃないか。沢山の貴族を呼ぶのにこれほど都合のいい理由は他にないと俺は思うんだけど。」
その言葉に成程と頷く。
「確かにそれは一理ありますね。」
一から繋がりを作っていくのはかなりハードモードだとは思っていたのだ。それに結婚式の準備と大義名分を作ってしまえば実家からの援助も期待できそうだ。
(親のすねなんてかじれる時にかじるものなのよ!! )
持参金を用意せずに嫁がせた負い目だってあるからきっと色を付けて持参金を用意してくれるだろうし、実際にこの話は前から侯爵家から出ていたのだ。
「結婚式を開くとなると両親も援助してくれると思いますしこれを機に屋敷の使用人等を調整しようと思います。その理由であれば私は結婚式をすることに賛成です。」
通常の結婚式より何倍も忙しくなると思うけどマリアベルへの復讐の第一歩には丁度いいんじゃないんだろうかと考えていると、リリアナがジャックから私を庇うように前に出てきた。
「二人に色々と考えがあるって事は私にだって分かるわ。でも、お母様をこれまで蔑ろにしてきた分、素敵な結婚式にしないと私はお父様を一生恨むからね!! 」
「リリアナ……。」
私を誰よりも近くで見てきた分、私にとっては今までのジャックとの生活に不満は無いけど第三者から見れば待遇は良くないのは私だって分かる。もしもリリアナが私と同じような結婚生活を送っていると聞いたら家まで飛んで行って相手を怒鳴りつけてるのが簡単に想像できた。
(あれ……? そう言う事ならお父様達ももしかして同じような行動をとるのでは? )
只でさえジャックに対する好感度はマイナスに振り切っているのに今の状況を話して果たしてジャックは無事に済むのだろうか?
(……まぁ、大丈夫でしょう。ジャックだし)
軽く現実逃避をしているとリリアナからふわりと良い香りがして思わず犬の様にふんふんと嗅いでしまった。
「あ、お母様気が付いた? お母様の好きな薔薇の香りの香水を作ってみたの。これは試作品だけど気に入ってくれたならぜひ貰って欲しいわ!! 」
紅茶もいいけどお母様に身につけて貰えるものを作ってみたかったのと可愛い事を言うリリアナをありがとうと言ってぎゅうと抱きしめるときゃらきゃらと笑ってくれたので心が温かくなった。
そんな私達を見ているとそれだとジャックは言ったので何の事かと聞くと新事業と言った。
「リリアナの作った香水をアシュリーが売るんだ。」
何を言っているんだと思いながらもジャックの表情を見て本気で言っている事を悟り、聞く体制を整えるのだった。
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