千里の道も一歩からなので取りあえず手紙を書いてみる

うんうんと唸っているとお父様もお母様も難しく考えなくて大丈夫だと言ってくれたが問題はそれではなかった。侯爵令嬢と皇太子の婚約話なんて定番すぎる展開なのに事前情報がないせいでどう動くのが正解なのか全くわからない。


(困ったわ、婚約破棄が前提だとしても恋愛小説のジャンルが成人向けだとしたら此処で会う選択をとるのだってリスキーだわ)


皇子様に会ってしまえばトントン拍子に婚約は進んでしまうだろう。皇室が我が家との縁談で得られるメリットはあれど、それを覆すようなデメリットは存在しないはずだから。


(私が追放されるだけなら未だしも、これが成人向けの残酷描写やアダルト的展開があったら私も家族も無事じゃ済まないわ)


一族諸共無残に殺されるか死んだほうがマシという思いをするかもしれない。

そんな未来は避けたいから会いたくは無いけど、皇子様がどんな人なのか知れたら今までの異世界恋愛の小説知識でどういう結末を迎えるか予測できるかもしれない。


(何かいい方法はないかなぁ……? )



そんな事を考えているとお母様が心配して私を見ていたけど何か思いついたのかお父様にこんな提案をしてきた。


「アシュリーもただでさえ同年代のご令嬢と遊ぶ機会が無かったから困惑するのも当然だと思うんです。それならまずは文通から始めてみるのはどうでしょうか? 皇子殿下の事を少しでも知ってからの方がこの子も話しやすいかと思いますわ。」


文字を書く練習にもなりますしと話していたがお父様は皇子殿下を文字の練習にすることに対して少々不安げだった。


「仮にも血縁関係がある私の娘を蔑ろにはしない筈ですわ。年も近いですし皇子殿下も皇帝になれば手紙を各国に送る機会も出来ますし良い機会だときっと承諾していただけますわ。」


(お母様って皇族だったんわ。……あれ? じゃあ、お母様が嫁ぐ先は侯爵ではなくて公爵では?)


確か小説の中では皇女は公爵家に嫁ぐ事が多かった気がすると思っているとアシュリーの記憶からある仮説が立てられた。


(コートニー公爵はお母様の叔父様だったわ。二人が結婚すれば近親婚になってしまう)


今の公爵様はお母様のお父様、つまりは先代皇帝の弟君だ。先代皇帝とは年がかなり差があったからお母様との年齢は近いけど流石に家族内で結婚はさせたくなかったのだろう。この世界では近親婚をすれば子供が呪われるとされているから。


(そう考えるとこの婚約話も従妹で結婚になるから結構グレーな気がするけど……)


もしかしたら、数年経てば私のあずかり知れぬ所で破談になってそうだなと思いながらも情報収集には持ってこいの提案だったので翌日から文通が開始される流れになったのだった。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

追放される悪役令嬢だと思ったら産んだ娘が『稀代の悪女』だった emi @emi_1012

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ