予期せぬ出会い(恐らくヒロイン)

文通を始めてみて思った事を紹介していこうと思う。


まず第一に、やはり私の知らない文字が使われていた。耳では理解できているし英語かなと淡い期待もしたけど英語に似た全く知らない文字だった。

この時は記憶を思い出したのが幼い時で良かったと本気で思った。一から学んでいても何も思われないし、大人になって思い出してたら頭がパンクしてしまう気がする。


そして第二に、皇子様はジェレミーという名前で私より6歳年上の人だった。

手紙の文章を見てとても真面目なのだろうと伺える。そもそもで文字を覚えたての4歳の女の子相手に良く手紙のやり取りを承諾したなと思った。



(代筆を疑ったけどお父様がお城に行った時には手紙を書いている姿を見受けられるって言ってたしサボり方を知らないのかも……)


齢10歳にしてそんな生き方をしていて疲れないのだろうか? 将来は国を背負う人ではあるけど、全てを全力で取り組んでいたら近いうちに倒れそうだ。


「今回の手紙には睡眠の大切さを書いておこう……。」


睡眠時間を削っても物事は上手くいかない事は前世で体験したのでそうはなって欲しくないと思った。そんな事を考えながら送られてきた手紙を読み返す。


手紙の内容を見る限り何をしたかは書かれていても何を思ったのかは書かれていなかった。私が小学生の時に書いた読書感想文の方が書いていると思えるくらい事務的な内容だった。


「皇子様のスケジュールを完全に知っていても他は何も分からないわ。」



 お母様の提案によって始まった文通だったけど流石にどんな人か気になって両親に聞いた。


しかし、二人して教えてはくれなかった。

それどころかお父様の提案により皇子様の肖像画すら見せては貰えなかった。



「お母様が言うには見た目で判断しない様にって事だったけど……見惚れてしまう程のイケメンなのかな? いや、逆の可能性もあるなぁ……どっちだろう? 」


 慎重に言葉を選ばないと不敬罪で首が飛んでしまうかもしれない----私がではなくお父様とお母様が。



「いきなりハードモードすぎる……。何も知らない状態で書くことはもう無いっていうのに。」



 そう呟いてからふと思った。もしかしたら皇子様も同じ事を考えているかもしれないという可能性もあることに。


「こっちは何も教えてないのに無条件で貴方の事を教えてほしいなんてフェアじゃないわよね。----よし。」


書きかけの手紙に向かい直り、さっき書いた睡眠の大切さを書いた後ろに文章を付け加えた。

 


『私は黄色の薔薇が好きです。お父様とお母様が私の眼の色と同じだと喜んでくれるからです。ジェレミー様の好きな花は何ですか? 』



「これでよし! 」



侍女に頼んで蝋で封をしてもらっているとノック音と共に侍女長が入ってきた。


「お忙しい時に申し訳ございません。本日から働く侍女を紹介させていただきたいのですがよろしいでしょうか。」



「えぇ、構わないわ。」


そう言うと侍女長が後ろに向かって声をかけた。すると、後ろから出てきたのは私と年もそんなに変わらないだろう女の子だった。


「あの……マリアベルです。よろしくお願いします。」



私への挨拶がなっていなかったからなのか侍女長はお小言を彼女に向かって言っていたけど私はそれどころじゃなかった。


(びっくりするほど可愛い容姿と整えたら綺麗なピンクの髪……。これってもしかしたりするんじゃないの!? )


マリアベルと名乗った女の子は様々な小説サイトに出てくる王道中の王道のヒロインの様な見た目をしていたのだった。


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