私の立ち位置が悪役令嬢の可能性、急上昇

前世の記憶を思い出してから数日経ったけど、未だに思いつく小説やゲームの世界線が分からないでいた。


「全く関係ない世界でアシュリーとして生まれ変わったって思えたらよかったのに。」


恋愛小説を読み込んだ私にとってはここが物語の世界であるという考えがどうしても抜けなかった。


「いやいやいや……。高熱が出て前世の記憶を思い出しただけの普通の侯爵令嬢かもしれないし!! 」


ベッドの中で口に出して言葉にしてみると中々のパワーワードで逆に冷静になった。

こんな状態で小説やゲームの中の世界に転生したって考え付かない方が無理じゃない!? 高熱出して前世思い出した普通の侯爵令嬢なんているわけなくない!?


「でも、アシュリーって侯爵令嬢が出てくる物語なんて聞いたことないしなぁ……。知っていれば私や家族がどうなるかだけでも分かるのに。」


そう、一番の懸念は私達は平穏無事に過ごせるキャラクターであるかどうかこれが私の中で一番重要だった。


「前世よりは長生きしたいし、今の家族が没落なんてして苦労するなんて絶対に嫌だわ。」


どうしようと考えているとノック音と共にメイドが入ってきた。


「お嬢様、お身体の状態はいかがでしょうか?」


「平気よ、どうかしたの? 」


入ってきたメイドが言うにはお父様とお母様が体に違和感が無ければ書斎に来て欲しいとのことだった。呼ばれた理由に心当たりがなく、取りあえず身だしなみを整えて向かう事にしたのだった。



広い廊下を通り、書斎の前に行くとついて来ていたメイドが扉を開けてくれたので中に入るとお父様とお母様が座って待っていた。

お母様が私に気が付くと微笑んで声をかけてきた。


「来てくれたという事は体はもう大丈夫という事ですね? 本当に良かったわ。」


「心配かけてごめんなさい。」


お母様は流行り病にかかった時に私の熱が引くまでずっと傍に居てくれたらしいので病気を移して無いか心配だった。見る限りでは体に異変は見られないが少しやつれた感じがした。


(治ったと思ったら今度は原因不明の高熱を自分の娘が出したんだもの。心配を沢山かけてしまったわ……)


申し訳ない気持ちになって謝るとお母様は慌てて駆け寄ってきて私と視線を合わせてくれた。


「謝ることは無いわ、アシュリー。こうして元気な姿をもう一度見ることが出来た事がお母様は嬉しいのよ。」


そう言って優しく頬を撫でるから思わず涙が溢れてしまった。どうやら幼いせいか涙腺も弱くなっているらしい。お母様が抱きしめて私の背中を優しくさすってくれていると、お父様が明日にしようかと言ってきた。


「ううん、大丈夫よ。お話って何? お父様。」


そう言って微笑むとお父様もニコッと笑ってくれた。


「実はね、アシュリーに皇子様との結婚の話が来ているんだ。」


4歳の娘になんて事を言うんだと思いながら結婚って何ー? と言うとお父様はやはりまだ難しいかと困った顔をしていたけど、その表情をしたいのは私の方だった。


(侯爵令嬢……皇子様との婚約……これって!! )


どうやら私は物語で言う悪役令嬢の確率が高いことを予測して頭が痛くなった。






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