ここはどこで私は誰状態なんて前途多難すぎる

転生した事に気が付いたのは4歳の時。はやり病による高熱から無事に後遺症もなく生還した時だった。




「あぁ、アシュリー!! 良くぞ耐え抜いてくれました! 」




そう言って泣きながら抱きしめるお母様を見て、母の身に着けている服が歴史の教科書のドレスみたいだなと思った。



(ドレスが古いって何? 今お母様が着ているのは仕立て屋に頼んでいた流行りのドレスの筈よ。デザイン画だってこの目で見たんだから)



そう思っていると誰かの記憶が濁流の様に流れ込んできた。はやり病に為ずっと高熱に苦しんでいた私の頭は頭に入り込んでくる情報を処理できずキャパオーバーを起こして再びベッドの住人となってしまった。



それから3日寝込んでようやく回復したころにはあの記憶が前世の自分の記憶であると落とし込むことが出来た。


それよりもやっと治ったと思った娘がまた倒れたものだから今の両親の過保護さが酷くなって未だに自分の部屋から出る事の許可がもらえていない。



(まぁ、その方がありがたいんだけど)



その方が前世の記憶の整理をすることに集中出来るから。


前世の私は乙女ゲームや恋愛小説が好きな大学生だった。

特に秀でたものがあるわけでもみんなの輪から外れることもなく可もなく不可もない人生を送ってきた。



そんな時にハマっていた恋愛小説をスマホで見ながら大学まで行く途中に信号無視したトラックが私に突っ込んできたのまでは覚えているけどそこから先の記憶はない。




「アシュリーとして生きているってことは死んだってことよね……?」




信号無視して突っ込んできたトラック運転手が絶対的に悪いんだけど、ながらスマホをしていた私は100%の被害者面は出来ないよなぁと自己嫌悪に陥ってしまった。

自身の死因についてもネガティブになってしまうのに更にネガティブになってしまう原因があった。



「ここはどこの世界だろう?! 転生って普通は知っている世界にするものじゃないの!? 」



勿論、死ぬ原因になった恋愛小説にはアシュリーなんて名前の女の子は出てこない。それどころか私の知っている恋愛小説や乙女向けゲームにだってその名前は聞いたことが無い。



異世界転生ものを読んだりゲームでプレイしてきたせいか転生=知っているゲームや小説という固定概念があったからかもしれない。




「私って立場的には悪役令嬢ポジション? それとも皇女様の取り巻きAからCのどれか!?そもそも今いる世界で私は死んだりするのかしら!?」




アシュリー・ルーマン侯爵令嬢。たくさんのゲームや小説の知識をもってしてもそれ以外の情報は分かることは無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る