第7話

「っはぁっ、ぁ、はぁっ、」

ずく、ずく…下腹が張りすぎて、我慢してるのかしてないのか、わからなくなってきた。

「ほらさっさと走れよ!!」

「っひぃ、っひ、」

後ろから何人にも抜かされて、ちんこを握りしめながら走ってるところを見られて。はずかしくて、はずかしくて。

(しにたい…)

涙なのか汗なのかわからない水が顎を伝う。後ろから聞こえる笑い声が、うるさい。

じゅい…

「っふぁ、」

一瞬、熱くなるズボン。慌てて立ち止まってソコを両手で握りしめる。

「んっ、ぁっ、」

じゅぅ…じゅ…

「急に止まるなよグズが」

ぱつぱつの膀胱が収縮しようと暴れている。一歩も歩けない。歩いたら、出ちゃう。

「10秒止まったら罰ゲームって言ったよなぁ?」

ぐいっ、

じゅっ!!

「っひぃ、」

ズボンを貫通した液体が手を濡らす。グッと強くタンクを押されて、一気に尿道におしっこが押し寄せてくる。

「おしっこ、でちゃうからっ、やめっ、ぁあんっ、」

「走らずサボってる奴が悪いんだよ。あれ?何か手が濡れてない?」

じゅい、じゅい、じゅぅぅぅ…

手の指からポタポタと溢れる雫。最早止める術がなくて、でも、諦められなくてありったけの力をチンコに込める。

「おちっこ、もう我慢できまちぇんかぁ?」

ぐっ、ぐっ、ぐっ、

じゅぃ、じゅうううう、じゅぃぃぃぃぃぃ…

「っはぁ、っ!!ぁっ、んんんんんんっ!!」

「うわっ、水から出した魚みてえ!」

「ははっウケるんですけど」

びしょびしょの手で揉みしだき、太ももをびっちりと閉じて、お尻を突き出して。

(高校生にもなって、おれ…やだ、)

足に一筋、また一筋と水が伝う。

恥ずかしくて、みっともなくて、どうしようもない。顔が熱くて、目の前がゆらゆらする。

「あっ、、」

しゅぁあああああああ、

ばちゃばちゃばちゃ…明らかに重い音が地面の上で鳴り響く。

「うわっ、マジで漏らした!!」

「きったねえなぁ!!」

痛かったお腹の張りがみるみるうちに萎んでいく。

「っはぅ、っは、んぅ、」

っじょおおおおおおお、

「やだ、まって、とまって、」

しゃがみこんで、踵で出口をぐりぐりして、なんとか堰き止めようとするけど、意味もなく不条理にソレは流れていく。

いっぱい、いっぱい我慢したのに。頑張って走ったのに。あのときおしっこ行ってたら間に合ったのに。


っしぃぃぃぃぃっ…しぃ…

(や、っと…とまった…でも…)

目の前に広がる水溜り。ズボンも、靴も、大惨事。

「あーあ、やっちゃった」

一言だった。その、にやけを含んだ一言で、目の前が一気に熱くなる。

「う゛、うぁぁぁぁ…っひ、っぐ、ッヒグ、おし゛っこ、行き゛た゛いって、い゛った、」恥ずかしくて、惨めで、涙がボロボロ流れてくる。水なんて飲まなけりゃ良かった。やっぱり今日行かなければよかった。トイレ、無理にでも済ませておけばよかった。色んな後悔がぐちゃぐちゃで、みっともなくしゃくりあげてしまう。

「うわっ…まじ泣きしてるよこいつ」

「行こーぜ。汚くて近寄りたくねえし」

「その格好で更衣室来んなよ。汚れるから」


「グズ、ッヒグ、」

誰もいなくなった道を泣きながら歩く。一歩進むたび、ぐじゅりと音を立てる靴に悲しくなってまた涙が溢れる。

「もう、やだ…」

ちくちくと胃が痛い。涙も止まらない。バスケを思い切りやりたいだけなのに、何でこんなに難しいんだろう。なんで、こんな全く関係ないことで悩まないといけないんだろう。


「あれ?嶋?」

「え、なんで、」

後ろを振り返ると、驚いた顔で上から下に目線をやる水城が立っていた。

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