第四夜 奇天烈なる景色

 男が二人、話をしている。

 見れば、二人ともが小学生時代のクラスメイトであった。

 姿も声も当時そのままの彼らは、他愛もない話を交わしている。

 ただ恐ろしいことが一つあった。それは、彼らがとんでもない場所で話をしていることである。

 まず彼らは完全に転覆し、乗る場所と水に本来ついている場所が完全に上下逆になった小舟の上に座っている。船を動かすためのカヌーやオールもなく、彼らはややとんがった船の底にまたがるように座って話をしている。

 また、この小舟は水の上に浮いている。この水がまた不思議な色をしており、濁って白っぽくなった茶色をしている。話している彼らは足首をその水に浸けながら話していた。

 この水はどうも大河のようにゆっくりと流れており、どこかに流されているらしいのだが、雲一つない青空の下、彼らがまっすぐ向かう先にはやけに大きな月が見える。その大きさは、遠近法が影響するはずであるにもかかわらず、視界の半分を埋め尽くすほどであり、見るものに威圧感と恐怖を与えるほどであった。

 川の端には、マングローブのような木々が整列されて植わっており、なぜか黒々としていたのでこれもまた恐怖の材料となる。

 第三者視点から見ている自分は、この光景に恐怖したが、何よりも恐ろしかったのは最初に述べたクラスメイトたちである。

 彼らはこの異常な光景の中で、それらに何一つ反応を示さず、淡々と話をしているのだ。

 自分はその光景から目を逸らそうとするが、結局逸らすことができない。やがて、光景から来る恐怖がゆっくりと蓄積していき、頂点になって目を力いっぱいつぶった瞬間、ハッと目が覚めた。

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