第二夜 変態共の宴

 ある時、このような夢を見た。

 桃色の部屋の中に視点だけがある。床も壁も天井も桃色で、明かりもないのに不思議と辺りの様子がわかるその部屋は、一辺が三十メートルほどもある。そして、ほかにたくさんの人がいるのがわかる。見ると、それはすべてが女性であり、その中には知り合いも含まれていることがわかる。その表情は、揃って不安げなものであった。

 部屋の中を見渡して少し、いつの間にかある方向の壁の中央に水晶の断面のような、縦に長い五角形の形で、壁よりはやや濃い桃色の枠を持った扉が現れている。ちょうど部屋の真反対の壁には壁と一体化した両開きの扉が一対現れている。その扉は一見すると、長方形の切れ目にも見えるので、そのことに女性たちは気づいていない様子であった。しかし、突然ウィーンという機械音とともに扉が開く。その向こうから現れたものに気づくと、彼女たちは悲鳴を上げる。

 その向こうから現れたのは、全身ピンクのタイツを着て、毛のないかつらをかぶった男、というか志村けん。つまるところ、そこにいたのはいわゆる「変なおじさん」であった。

 彼は

「変なおじさん、ったら変なおじさん」

 と、例の言葉を発しながら部屋のあちこちを歩き回り、女性に近づいていく。そのたびに部屋の女性たちは悲鳴を上げて彼から遠ざかる。

 そのような光景が体感で十分ほど繰り広げられたのち、水晶型の扉が開く。扉の向こうには黄色の通路が広がっている。扉が開くと、彼は扉の向こうへと向かっていき、部屋を出ていく。扉の閉じた桃色の部屋で、女性たちは最初に彼が来た方向の壁を向き、みなおびえた表情をしていた。

 その予感を裏付けるかのように、再び壁のような扉の方が先ほどと同様の音を立てて開く。そこから出てきたものに、女性たちは同じような反応をみせる。しかし、それは先ほどとは大きく異なっていた。

 同じであるのは全身ピンクのタイツを着ていることのみ。その背格好も、顔も、すべてが小学校のクラスメイトの一人に似ている、どころかそのものであった。

 そこまでほとんど感情の動かなかった自分が驚愕している間に、そいつはにやにやとした笑みを浮かべ、先ほどの男と同じように女性に近づいていく。そいつの声は不思議と聞こえないが、やはり女性たちは悲鳴を上げて彼から遠ざかる。

 そのような光景がまた数分ほど繰り広げられたのち、そいつも変な男のように水晶型の扉へ消えていった。女性たちの顔もそいつが去った時のようであった。

 しかし、無情にも再び壁のような扉は開かれる。その向こうにいたのは、複数の人影。誰もかれも一様に全身ピンクのタイツを着用し、先ほどのそいつと同じようににやにやと笑みを浮かべている。そして、次々と女性に近づいていく。その姿はみな、小学校の時の男クラスメイトたちと同一であった。

 そうして、幾度となく何度となく、変な格好の男たちによる襲来が行われていき、その中でふと目が覚めた。

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