第49話 去っていった侵略ロボ
あれだけのことがあったのだが、俺となつみさんは初体験の疲れもあってか、爆睡してしまった。
目覚めたら、同じベッドで上下にひっくり返って寝ていたので驚いた。
「夜に何があったんだ!? いや、俺たちの寝相が悪かっただけかあ……」
「う……ううーん」
なつみさんが唸ってもぞもぞ動いた。
あっあっ、俺の足を抱き枕みたいに掻き抱いて……。
ふくらはぎに大きくて柔らかいものの感触が。
「そう言えば昨夜はもう、卒業することに必死であの立派な胸に触らずじまいだったな……。次回はなつみさんにお願いして、たっぷりと触らせてもらおう……」
なにせ、俺たちは一線を越えた恋人同士。
これから何度でも触れ合う機会があるのだ。
まあ、初回で極薄超感覚0.01mmを付け忘れて直接お出ししてしまったのは大失態だったか!
で、できたりはしないよな……?
あのあと、洗い流してもらったし。
俺が喜びと不安で表情をコロコロ変えていたら、なつみさんがついに目覚めた。
「はっ……! こ、ここはどこ……!? あーっ、なんで私は足を抱きしめて……」
「おはようございます」
「春希くんがなんでここに!? あっ、キャンプに来たんだった……」
思い出されましたか。
とりあえず起き上がり、二人で歯を磨いて顔を洗い、事務所に用意された朝食を取りに行った。
おにぎりを焼くやつ。
美味い。
澄み切った朝の空気と、香ばしく味わい深い焼きおにぎり。
「なつみさん、コーヒー飲みます?」
「飲む! うう……まともにコーヒーすら淹れられない女でごめん……」
「だんだんできるようになりましょう! 今回は俺が手ずからお淹れする……」
「はーるき!」
とかやってたら、横合いからヤツが飛び出してきた。
「うわーっ! 朝っぱらからユタカが! なつみさん助けてー!!」
なつみさんはすぐさま動き、ユタカとの間に滑り込んだ。
ユタカは相手の大ボリュームにぶつかって、ボイーンと跳ね飛ばされる。
「うぐわーっ! く、くそー!! 大きいだけでそんなに強いのかー!!」
ユタカの言い分に、俺はコーヒーをマグカップに注ぎながら肩をすくめた。
「質量が全く違うんだから強いに決まってるじゃないか」
「春希くん、それは私が太っているという意味にもなるのではないか」
「あ、いえ、昨夜たくさん触りましたがお腹はほどよいお肉で、もうちょっと多くても……」
「たくさん触った!?」
ユタカが反応した。
そして俺となつみさんを見たあと、
「や、やったな!?」
「直接的過ぎる!!」
「やった! 君の出番はもうない!」
「なつみさん!?」
女の戦い勃発~!!
「まあまあ、朝から戦うものではない……。俺たちはダミアンを見送ったんだし、今日くらいはまったりして彼を偲びましょう」
「それもそうか」
俺の差し出したマグカップを受け取り、なつみさんはベンチに座った。
コテージはバーベキュー台の近くにベンチが用意されており、ここに座って日向ぼっこができるのだ。
ユタカにも特別にコーヒーを用意した。
そしてヤツとの間になつみさんを挟む。
「あーん! 春希と距離が遠い~!」
「絶対に近づかせないぞ。それに、彼は身も心も私のものだ」
「くうっ、強すぎる……!!」
ユタカ、昨日なつみさんにこてんぱんにやられてから、苦手意識ができてるな?
彼女なりに、俺がなつみさんと初体験を済ませてしまった事はショッキングだったようである。
昨日よりも明らかに大人しい。
「あー、やっぱり仕上がった男を狙うのはリスキー過ぎる……」
「君も自分で男を育てればいいだろう。いい男になったところを狙うなんて、上手く行っても他の女性から恨みを買うし、失敗したら全てを失うかも知れないんだぞ。というかそれでなびく男なんか、君が愛するべき本当にいい男ではありえない」
「せ、正論きついっすー」
ユタカがしおしおになっていく!
これは完全にヒエラルキーが決したな……。
ユタカは脅威ではなくなったのではないか。
どうやら本当にそうらしく、コーヒーを飲んですごすごと帰っていくユタカなのだった。
その後、なつみさんと葉っぱが少ないところをハイキングした。
「ダミアンは行ってしまったな……」
「行っちまいましたね……。俺たちの初体験をじっくり眺めて、大変満足した風になって行ってしまった」
「本当にそうなの? なんで?」
「あいつはずっと俺となつみさんの恋を応援していたんで。デートして、告白して、そして体験して……と言う感じで俺たちがステップアップしきったんで帰っていったんだと思います。宇宙に……」
「宇宙にか……」
空は、眩しい太陽が燦々と輝いている。
この空の何処かに、ダミアンがいる宇宙船が浮かんでいるのだろう。
周りから飛び立った逆さ流星雨は、みんなダミアンの仲間だったんだろうか。
一体どれだけの数のダミアンたちが、このあたりにいたんだろうな。
俺は結局、ダミアンのことを何も知らないままだった。
だが、一つだけ確かなことがある。
「あいつは俺の、かけがえのない相棒ですよ! 今までも、これからも! ありがとうよ、ダミアン!! 俺はこっちで、なつみさんと幸せにやっていくからな!!」
俺は叫んだ。
この声が、あのバスケットボールみたいなロボに届けばいいと思いながら。
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