第41話 キャンプ計画

 いよいよ……。

 いよいよ、今夏最大のイベント、なつみさんとのお泊りキャンプがやって来る……!!


 俺はこのために、まず彼女の家で許可をいただくことにした。

 いや、黙って泊まっちゃえばいいんだろうが、バレたらことだろ。

 それにあのパパさんに嘘はつきたくない……。


「なつみさんと、一泊のキャンプをしたく……! 許可をいただきたくてまいりました!!」


『いいぞハルキ!! 実直な直接の一撃が見事に効いている!』


 ダミアンの分析通り、パパさんが強烈なブローを出会い頭に食らって揺らいでいる。

 包み隠さず、俺の思いをパパさんに届けるぞ!!

 なお、ママさんは最初から許可する方向の模様だ。


 このままでもママさんのパワーで押し切れると思うんだが、パパさんの顔を立ててこそだろこういうのは。

 将来的にいい関係を築くためだ!


「何かあった時に責任を取れるのか」


 ようやく絞り出したらしき言葉が、大変大人げない。

 俺はまだ未成年なので、責任を法的にも取らせてもらえないのだ。


「あと二年したら責任取ります!! 必要であれば血判状も書きます!!」


「むう!!」


 パパさんが目を見開いた。

 俺の本気度を感じ取ったらしい。


「いいだろう……。許す」


 ぼそっとそれだけ告げて、職場に戻っていくパパさんなのだった。

 ママさんがそれを見送ったあと、


「良かったわねー! 彼、すっごくドキドキしてたわよ! 彼をあそこまで追い詰めたのは春希くんが初めてじゃないかな? 彼、私と結婚する時もあのキャラと圧力でおじいちゃん……私の父だけど、押し切ったからね」


「なるほどぉ……」


 パパさんと俺は似た者なのかも知れない。

 とにかく!

 一泊の許可はいただいた!


 あとはなつみさんとどこまで行くかだ。

 彼女は一階で事務作業をしている。

 15時ころにはフリーになるそうだから、そこでそこら辺をぶらつくために誘う予定。


 でも、どこまで行くかを彼女の共有すると、ドキドキ感が薄れちゃうよな。

 かと言って露骨なサプライズはよろしくない。

 なんとなく察してもらえるレベルで……。ドキドキを継続して感じてもらえるレベルに……。


 なつみさんがフリーになるまで、ちょっとコンビニ行こうかな。

 駅前まで走れば、祐天寺家最寄りのコンビニがあるんだよな。

 片道十分。


「よし、思い立ったらすぐ行動! 行くぞダミアン!」


『うむ。ハルキからピンク色のメモリーエネルギーが漏れ出しているな』


「俺の思考を毎度読むやつだなあ」


 だがお陰で色々察して行動してくれるんだから助かる。

 さて、カンカン帽を被って日陰をたどるように移動し、コンビニに到着。


 そして極薄超感覚0.01mmというのを手に取り、サイズを吟味した。

 俺のサイズはどうだ?

 どうなんだ元気さん?


「ダミアン、どう思う……? 俺のはでかいのか、小さいのか……?」


『最大拡張時のサイズ感からすると、Mサイズでいいだろう』


「データ提供助かる」


『ちなみに現地人から情報を集めた友軍によると、男性種が気にするサイズに関しては、女性種はそこまで考慮に入らないそうだ。現実的なサイズ的にも人種が同じであればオーバークラスはむしろハンデキャップだろう。友軍機が同居している男性種がそれで悲しみのメモリーを溢れさせたらしい』


「デカ過ぎて悲しいことになったのか……。色々あるんだな……」


 遠い国の彼の事を思いながら、俺は極薄超感覚0.01mmを買った。

 堂々と胸を張って買った。

 ついでになつみさんの会社への差し入れに、冷えたお茶を五本買った。


 コンビニから出ると猛烈な熱気が襲ってきたが、今の俺のハートの方が熱い。

 妙な達成感が胸に満ちていた。

 俺は一つ大人になったのだなあ……いや、これからなるのだ!


 ぶらぶらとなつみさんの家に帰って来る。


「どもっす。これ差し入れっす」


「えっ、マジで? 嬉しいなあー」


 浅木さんと、もう一人の白髪の社員さんが嬉しそうにお茶を受け取る。

 冷えたお茶美味しいからね。


 で、事務所にも差し入れだ。


「差し入れっす」


「ありがとう」


 パパさんが受け取り、ぐーっと一気飲みした。

 男らしい飲み方だ。

 なつみさんは「もうちょっと待っててね」とか愛を感じる返答。


 俺は浅木さんの作業を横で見ながら、待機することにした。

 バリバリ整備してますねえ……。


「車検の期間が来るとまた忙しくなるんだけどねー」


「そうなんですねえ」


「迎田くんさあ、高校出たらうちに就職しない? 超忙しいんだよね。だけど社長からするとあんま社員増やせないらしいし。ほら、婿入りしてさ」


「話が早いっすねー。ただ、親はなんか大学行って欲しいみたいで」


「えー、大学行かせてくれんの? いい親じゃん! 行きな行きな。親からもらえるものはみんなもらっときなよ」


「やっぱそうっすかねー」


 ちょこちょこ相談に乗ってくれるの嬉しいな。


「でさ、迎田くんさ、今度うちの嫁と娘とピクニック行くんだけど、お嬢と二人で一緒に来ない? どうせそんな遠くないうちに迎田くんとお嬢も三人家族になるでしょ」


「浅木さんの話が凄く早い」


『ハルキ、ポケットから極薄が顔を覗かせているぞ』


「あっ」


「ははは、近々お泊りにでも行くんだな? カッとなって行動できるのは若い頃だけだからね。頑張れよ若者! 下手に頭で考えるとチャンスは逃げてくからさ。逃げたいなーと思ったら思いっきり前に踏み込め!」


「う、うっす!」


 別の意味で外堀を埋められてきてないか……?



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