第28話 締めは今回もカラオケ
おおよそ計画は詰めた。
茶々を入れてこようとする美来を、花咲によるカウンターで弱体化させることにも成功している。
これはなかなか良いチョイスだったな。
美来はもしかして、俺とユタカが会っている話を先輩にして色々台無しにしようとしていた可能性もある……!!
なんとなくそんな気がするぞ。
だが、花咲がいる以上、美来も今回の話を対外的にできなくなるからな!
こうして俺は目的を達成し……。
「そんじゃ、行こっか」
「行くか」
ユタカとの作戦会議を終えたら、やることは一つ。
カラオケだーっ!!
俺とユタカがノリノリでデュエットする。
初合わせだが、男性パートと女性パートの歌い分け、ハモリまでバッチリだ!!
「すげええええ! 二人でよくカラオケ来てんの!?」
花咲が心底驚いている。
「いーや? 私と春希は二回目だよねー」
「おう。どうせカラオケ行くだろと思って歌いこんで来たけどな」
「私も、春希は絶対これ歌うと思ってたし」
「春希やっぱりユタカを狙ってるんじゃん!」
「ノーノー! いいお友達のままだ!!」
「そ、それを男子から言われるとは思ってなかったあ!」
ユタカががっくり来たところで、俺が頼んでおいた人数分のジュースとキングサイズポテトフライ唐揚げボックス到着だ。
「春希さ、ポテトフライ頼んでおけばいいって思ってない? 昔からそうだよね?」
「なんでだよ、ポテトフライ美味しいだろ!」
「俺もポテトフライ好きだよ」
「私もー」
「ぐうう、あたしも好きよ!」
文句を言ってた美来も分が悪くなり、もしゃもしゃポテトフライを食べ始めた。
幾らでも食えるよな、ポテトフライ。
「しかしさあ」
美来が歌い始めたので、花咲がそれを目で追いながらしみじみと呟く。
「年頃の男女でカラオケボックスって言ったら、あれじゃん。エロだろ?」
「そうなるのか……」
「俺の経験だとそうなんだよ。ラブホたけーじゃん。だけど……まさか本当に全力で歌うことになるとはなあ……」
「歌は気持ちいいぞ」
「それは否定しねえな。おっ、次俺だ」
花咲が出ていった。
おっ、横須賀乃風のノリノリソングだ。
外見がチャラいからめちゃくちゃマッチしてるなあ花咲。
上手くはないが大いに盛り上がる。
これは俺もタンバリンで応援したりコーラスせねば無作法というもの。
俺は立ち上がり、大いにカラオケを盛り上げた。
ユタカもコーラスに加わり、いやあ実に楽しい楽しい。
美来もぶすっとしていたのだが、音楽にやられて体をゆらゆらさせている。
音楽のパワーだな。
いい汗かいて戻ってきた花咲。
俺が手を上げると、やつは見事なハイタッチを返した。
「サイッコーに面白かったぜ……。思った以上に歌うカラオケ、楽しい……」
「気付いたか……」
「エッチも楽しいっちゃ楽しいんだが、終わったあと賢者モードになるんだよな……。そこで女子のケアをするの何気にきつい……」
「チャラ男の本音出ちゃったな」
「今度は男同士でカラオケ来ようぜ」
「いいぞいいぞ」
「私も私も!」
「よし、ユタカも連れて三人で……」
「あ、あたしは!?」
「美来もいいよ……仲間はずれはかわいそうだし」
「なんであたしがかわいそうな子扱いされてんのよ!!」
べしべし叩かれた。
懐かしいなあ、このやり取り!
だが、お前は既に他の男の女なのだ。
さらば、美来!!
なんかお前との思い出、かなり減ってるからサラッと対応できる。
『ダミアンの仕事が生きているな』
ほんとにな。
カラオケの喧騒に紛れて、ダミアンの声が聞こえづらくなっている。
ここなら会話しやすいな。
「ダミアン、どうだメモリーは」
『ハルキの狙い通りだろう。メモリーエネルギーは分散している。多人数だとこのような効果があるのだな。歌……歌か! 歌の力で、一方向だったメモリーが広く分散する! 集中した時程ではないが、平均して高まっているな。友軍にも共有しよう』
ピコピコ光り始めた。
こんなしょうもないデータを共有してどうするんだ。
しかし、カラオケで大いに盛り上がるとユタカも美来もあまり俺に反応しなくなるんだな。
これはいい事を知った。
あわよくば、花咲もここでユタカとかと付き合ってもらってだな……。
身を固めてもらってだな……。
あっ、花咲、ユタカとアドレス交換してるじゃん。
いいねいいね。
美来ともアドレス交換してる。
いいのか? いいのか?
例え相手がマッシュルームとは言え、浮気されるのはどうなんだ?
いや、まだ浮気と決まったものでもないし……。
そもそもマッシュ、なつみ先輩にもモーション掛けようとしてなかったか!?
ま、まさかこの、寝取り寝取られが恋愛の世界だと言うのか?
修羅の世界ではないか。
俺は一刻も早く、この苦海から身を退かねばならん。
そして先輩を掬い上げるのだ!
まあ、そこから脱出した人間をターゲットにするユタカみたいなプレデターもいるわけなんだが……。
プレデターにはプレデターをぶつけるんだよ!
頼むぞ花咲!
「さっきから春希、無言で私たちを交互に見てくるんだけど……。ちょいちょい! まだ花咲くんとは知り合いレベルでしょ」
こいつ、察したか!
洞察力が高すぎる。
危険だ……。
「頼む、頼むぞ花咲」
「ああ、分かったぜ。任せておけよ!」
こちらはなにも分かってない状態で、安請け合いする花咲なのだった。
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