第27話 どうしてお前がここにいる
花咲を呼びつけた。
「へへへ……小規模な合コンと聞いてやって来たぜ……。かわい子ちゃんを紹介してくれよな」
馴れ馴れしく肩を組んでくる、茶髪に色黒で一世代前のチャラ男みたいなこいつが花咲だ。
女にだらしなく、中学の頃から付き合っては別れ、付き合っては別れ、振った女に刺されたりしていた。
だが!
妙に男同士だと義理堅くていいやつなんだよな。
今回はこの、チャラ男みたいなやつをユタカたちにぶつける!!
俺の必殺兵器だ。
なお、この男がなつみ先輩に気を見せたら叩き潰し、記憶を奪って赤ちゃん返りさせてやる予定である。
「頼りにしているぜ花咲……。俺一人ではユタカにやられるかも知れんからな」
「そんなに積極的な女子なのかよ!? へへへ、腕が鳴るぜ!!」
味方である間は頼もしい男だ。
敵に回すと恐ろしい男なのである。
裏切ったら叩き潰してやるからな……!!
花咲の方も、そこら辺が分かっているらしく、きちんと俺の領分には踏み込まないでいる。
砂上の楼閣みたいな友情関係だが、まあまあこの砂山がベストバランスで保たれているので、中学から俺たちはそこそこな友人なのだ。
さーて、本日もあのファミレスに……。
いた。
ユタカだ。
俺が連れている花咲を見て、目を丸くしている。
そしてユタカの隣には……。
「ゲゲエッ!!」
「うおーっ!! 美来ちゃんじゃん!」
俺が汚い悲鳴をあげ、花咲が歓喜の声をあげた。
そう!!
俺の幼馴染であり、BSSなNTRで俺の心にトラウマを刻みつけかけたあの女、小山内美来がそこにはいたのである!
「ユ、ユタカてめえ、一緒の女子っていうのは……」
「春希、私がいるとグイグイ迫られるかもって不安だったんでしょ? だから最高の監視役を連れてきちゃった」
「ふーん、先輩と付き合ってると思ったら、ユタカにまで手を出してたの? 知らない間に随分積極的になって……。なんであたしと一緒の時はずっと何もしてこなかったのよ」
美来の目がこえええ!
くそー、ユタカめ、許さん……!!
それと、美来にひどい目に遭わされたから俺は覚醒したのだ。
この命尽きるその時まで攻め続け、必ずや先輩をモノにしてやると誓ったのだ!
『いいぞハルキ!』
ダミアンが声を発したので、他の三人が訝しげな顔をしてキョロキョロした。
「ま、いいか! 美来ちゃん久しぶりー! えっ、こっちがユタカちゃん? いいじゃんいいじゃん! 美来ちゃんは凄くキレイになってるし、ユタカちゃんもコケティッシュで魅力的だね! こりゃあ両手に花だなあ! 美女に囲まれるなんて、真夏の暑さにも負けないくらい俺のハートもホットになって来た!」
気を取り直して口説きモードになったな花咲!
いいぞいいぞ!
「な、なんで花咲連れてきてるのよ! 春希、いつもあたしを花咲からかばってたじゃない! なんで遠くからにっこり笑いながら見てるのよ!」
「な、なるほど! 春希が他の男を連れてくるって言うから、きっと文系の大人しいタイプだろうなと思ったら……! 彼なら美来と私にアタックするバイタリティがあるから、春希にアプローチする暇を与えてくれないわけか!」
「ククク、俺の術中にハマったな。じゃあ、デートスポットについて教えて下さい……。今回も飯代を持つので」
「オッケー」
「ちょっとー! 二人でさっさと中入らないでしょ! あー、もう花咲! 近い近い近い!」
「連れないじゃん美来ちゃーん! 彼氏ができたんだって? 先輩なんて世代が違うから話題も合わないって。やっぱ同い年でしょ。俺さ、向こうでSASUKE部入っててめっちゃ体鍛えてて、筋肉とか凄いから! 見る? 見る?」
「見ないっつーの!! シャツをめくるな! 腹筋触らすな!」
賑やかに騒ぎながら、二人も後に続いてきた。
花咲、いい仕事をしてくれるなあ……。
味方にすると本当に頼りになるやつだ。
席について、俺はフライドポテトのキングサイズと人数分のドリンクバーを注文する。
俺とユタカ、俺の向かいに美来、斜向かいに花咲。
「それで次のデートスポットなんだが、いよいよキャンプの予定日も近くてな」
「オッケー。より仲を深めるための最後の一手ね。前回の動物園で反応が良かったってことは、かなり先輩の気持ちは春希に傾いてるでしょ。今回のが決め手になるはずよ」
「ほうほう、それは期待できる」
それはそうと、ずっと俺を名前で呼んでくるなユタカ!
俺が先輩と関係を成し遂げた瞬間に牙を剥く腹積もりであろう。
つまり、この女は今、俺を養殖しているのだ。
させんぞ、お前の思い通りにはさせん……!!
「このシネコンで話題の映画を見て、そこから食事をして感想を言い合う」
「王道のデートコースだなあ……」
「実際にはもう先輩、どこで押しても落ちる状況でしょ? だからふたりきりで喋る機会を設けてね……。あと、その翌日には夏祭りだから。二人で出かけては……」
「おおーっ」
ダメ押しまで用意されていたか!
俺は感心してしまった。
向かいでは花咲に迫られて、なんかわあわあ言い返している美来がいるが、気にならない。
ほどよい騒音は集中力を養うのだ。
「じゃあプランを送るね。ホイホイのホイ」
「ありありのあり」
「春希あんた、ユタカとそこまで仲良くなってるの!?」
「何を言う。情報屋と馴れ合ってはいないぞ……!!」
「私は春希をこうやって育てて、一番美味しくなった頃合いをいただくつもりだから」
この話を聞いて、花咲がゾッとした顔をする。
「お前らの関係、こえー……。なんだよ、人の心がない昆虫か何かかよ……?」
お前には言われたくないなあ!
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