第14話 刮目せよ、先輩の水着!
俺はダミアンを抱えて待機する。
手持ち無沙汰だったので、海の家の店員にラムネを注文した。
あっ、ビキニの上からエプロン付けてるお姉さんだ!
エッロ。
『ハルキのメモリーに不純物が混じった』
「ごめんごめん。お前はすぐに俺の雑念を感じ取るな……」
『目移りはいかんぞ。何も手に入らないぞ……。作戦というものも本来の目的を果たすことを第一義とするべきであり、ついでにあれもこれもとやると、散漫なものになる。結果敗戦して何も手に入らないどころが失う事も多いのだ』
「妙に実感が籠もった言葉だな……」
ラムネが来た。
ビー玉をガツッと押し込んで、シュワーっと炭酸が出てきたのをグーッと飲む。
美味い!
暑い夏によく冷えたラムネは最高だな。
俺は完全にラムネに集中していたので、隣に誰かが座ったのに気付かなかった。
「ほう、ラムネを頼むとは分かっているじゃないか」
「でしょう。やっぱ瓶ごとってのは特別感があるっていうか……。あっ、先輩!?」
なつみ先輩がもう更衣室から出てきていた!
俺は慌てて彼女に向き直る。
なんか水色のビキニみたいなのを着てて、腰にはパレオ? なんか布を巻いてる。
ビキニなのか?
三角の布が左右の胸を包んでるんじゃなくて、なんか肩紐がなくて、ドーンと張り出した胸はやっぱりでかくて、えっ、胴体から腕に直接水着が繋がってるの?
大丈夫? こぼれない?
「近い近い近い! 正気に戻れ、迎田くん! わ、私の胸に顔がついてしまうぞ!」
「はっ!」
俺は我に返った。
なつみ先輩の胸元まであと数センチのところだった。
危うくエッチな男になるところだったぜ……。
シュッと戻った俺に、ダミアンが『今までにない素晴らしいメモリーエネルギー量だ! いいぞいいぞ、そのまま行け!!』とか煽ってくる。
そのまま行けねえよ!?
「じゃ、じゃあ先輩。お互い水着になったことですし」
「うん、行こうか……!」
この海の家、予約をすると鍵付きロッカーを使わせてもらえるので、ここに荷物などをしまい込む。
ダミアンはむき出しにしながら小脇に抱え……。
いや、歩いてもらった方がいいか?
「迎田くん! 大きい浮き輪も貸してくれるらしいぞ!」
「あ、いいですね! ビーチで日焼け止め塗ったら浮き輪やりましょう!」
『ハルキのメモリーエネルギーが天井知らずの勢いで上がっていくぞ! なんと素晴らしい。カイスイヨクとはこれほどのものだったのか……! 友軍の仲間たちにも教えてやろう。彼らもまた、人間をカイスイヨクに誘えばメモリーを得られることであろう』
なんかダミアンがピコピコ光り出した。
彼が立て込んでるようなので、俺はその間にパラソルとシートを借りた。
先輩は大きい浮き輪の予約をしている。
後で予約の時間に来ると、浮き輪が膨らんで置いてあるというわけだ。
「ほらダミアン、行くぞ……っておい! 子供に持って行かれてるじゃないか!」
ダミアンをビニールボールだと思ったらしくて、子供が拾って持っていってしまいそうだった。
慌てて追いかけて、子どもと親の人たちに説明してからダミアンを回収する。
「危ないぞダミアン……。お持ち帰りされたらどうするつもりだ」
『ダミアンが通信に機能の大部分を割いているうちにとんでもないことになっていたようだな……。ハルキにはまた助けられてしまった。さらに恩を返さねばならない』
「気にするな。行くぞダミアン!」
小脇にダミアンとシート、肩にパラソルを担いで、俺は砂浜に向かった。
先輩は海の家で買ったジュースに、パレオに挟んだ日焼け止め。
「日に焼けてしまう! 迎田くん、早くパラソルを展開するんだ!」
「了解です!」
俺はその辺りの砂の上にダミアンを放り投げ『ウグワーッ』シートを敷いてパラソルをぶっ刺した。
よーし、素晴らしい日陰ができたぞ。
「じゃあ、じゃあ先輩!!」
「ああ。お願いしよう……!!」
なつみ先輩は不敵な笑み……いや、ちょっとなんか引きつってるけど、そんな笑顔を浮かべて寝そべった。
水着の背中側のヒモを外してくれるが……。
背中、白っ!!
「言っておくが、変なところにはなるべく触らないように……」
「善処します」
「善処するってそれ、何も答えてないようなもの……ひゃん!」
両手に日焼け止めをたっぷり付けて先輩の背中に触れたら、かわいい悲鳴が聞こえた。
先輩、こんな甲高い声が出るんだなあ。
そしてお肌がしっとりしている……。
くっ、これが夢にまで見た、女の子の背中に日焼け止めを塗るシチュエーション。
これは堪りませんなあ……。
『ハルキ!』
「な、なんだダミアン!」
下心全開だったところをいきなり呼びつけられて、俺は我に返った。
うおっ、あと少し手をすべらせたら、先輩の体の下で潰れている柔らかいお肉の辺りにふれるところだったではないか!
背中からも分かる、先輩の心臓の鼓動。
めちゃくちゃドキドキしている……!
いかん、いかんぞ春希。
俺たちはまだただの先輩と後輩だ。
紳士的に行け、紳士的に……。
『ちょっとその辺りでメモリーエネルギーを採取してくる。ここは素晴らしいぞ!』
「そ、そうか……。またボールと間違えられて持っていかれないようにな」
『エネルギーさえ吸収できればこの機動力を活かせる。任せてくれ』
そう告げると、ダミアンは手足を生やして、ポテポテと砂浜を走っていってしまった。
なんというか、面白いやつだなあ……。
強烈な日差しも、ダミアンにはどうということはないようだ。
そう言えば、いつ触ってもほんのりと温かい程度なんだよな、あいつ。
炎天下でも触った温度が変わらない。
「むっ、迎田くん! そ、そろそろ!」
「あっ、どうしました先輩! ……うおおおっ!!」
俺の手がパレオの下に潜り込んでおり、先輩のお尻の辺りをぐっと掴んでいたのだ。
す、凄いボリュームだ……!!
というか、パレオの下、布地がやたら少なくありません!?
「実は、下が凄く過激だったから隠していたのだ……」
「なーるほど……」
観念した先輩がパレオを脱いだら、凄いローライズだった。半分近くお尻見えるじゃん。
エッチ過ぎる……。
本当に先輩と一緒に海に来て良かった……!!
「では、次は君の番だ。男子と言えど、過度な日焼けは禁物だ。たっぷり塗ってあげよう……ふ、ふ、ふ、ふ、ふ」
「お、お手柔らかにお願いします!」
「善処しよう……」
「ウグワーッ!?」
見事にやり返される俺なのだった。
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