第17話 変装する
シオンは、ルシルに連れられて、国王との謁見に向かった。
俺は、数人の騎士に囲まれ、屋敷まで送り届けられた。
騎士達は、そのまま俺の監視をするようだ。
屋敷の出入口に立ち、封鎖されてしまった。
え~~~この状況なに?
どうすればいいんだよ!
自室にて、ベッドにうずくまりながら、今後おこる展開を思い出す。
確か、この後はシーフの少女との出合い編になる。
彼女は、城下町に住んでる。
弟と二人で暮らす、孤児だ。
このイベントでも、レイアスは絡んでくる。
というより、序盤は殆ど絡んでくるんだよな。
物語のレイアスは、とある物質を探していた。
悪魔王をこの世界に顕現させる為に、必要な宝玉だ。
この宝玉は、魔力の高い人間の心臓に出来る。
そして、シーフの少女の弟は、高い魔力を持つがゆえに、魔力の制御が出来ず、不治の病を患っている。
魔力が身体の中を暴れ狂い、徐々に内臓を蝕んでいくのだ。
治療方法は、小説の後半で判明した。
とある高価な魔法薬を使用し、さらに魔力の高い他の人間が、魔力経路を無理やり開通させる。
この病は、魔力経路が詰まり、魔力の正常な流れが滞っているせいでおこる。
殆ど、力業のようなやり方で、その激痛に耐えられなければ、死ぬこともある。
何回かに分けて、ゆっくりと治療する方法もあるが、その度に魔法薬を使わなければならない。
治療法が分かったところで、庶民には到底不可能だ。
物語では、魔力の高い者で、消えても分からない者を探していた、レイアスに目をつけられ、徐々に心の闇を引きずり出される。
彼は、姉に対して、罪悪感を覚えていた。
そこを利用され、最終的に、魔力暴走を起こしてしまう。
宝玉を精製するには、対象者に魔力暴走を起こさせ、その際にある魔法を発動することで、そ
の命が尽きる時に、心臓が宝玉に変わるのだ。
レイアスは、その方法で、何人もの身寄りのない浮浪者や孤児を宝玉に変えていた。
まぁ、平民で魔力の高い者なんて、そう簡単には見つけられないけどね。
だから、一人一人をしつこく狙っていた。
レイアスは、この宝玉を魔王軍幹部に進呈することで、その地位を高めていったのだ。
俺は、もちろんそんな事はしない。
でも、物語は、強制力があるのか、大筋は原作通りに進んでいくようだ。
シオンの村は守れたけど、シオンの幼馴染みのカエデは、連れ去られてしまった。
俺が、介入しなくても、物語は進んでいくのかもしれない。
けど、シーフの少女の弟が、死んでしまうのを知っていながら、ほっとくわけにもいかない。
どうしたものかな~
・・・・そうだ、変装すればいいんだ。
変装して、バレないように、こっそり抜け出して、彼を助けにいこう。
そうと決まれば、早速変装道具を用意しよう!
初めは、あれこれ服を着替えたり、仮面を着けたりしていたが、どれもしっくりこない。
そこで、俺は変身魔法を思い付いた。
魔法石のピアスに呪文を込めて、それを装着している間は、姿を変えられるのだ。
思い付いても、普通は完成させるまで何年もかかる。
しかし、ユリウスだったときの知識と、現代知識を総動員して、たった三週間で作り上げた。
ピアスを装着すると、俺の黒い髪は茶色に、金色の瞳は緑色に変化する。
服装も、カルロスに頼んで、庶民的なものを用意した。
これで、レイアスではなくその辺の平民に見えるはずだ。
召し使いに紛れて、こっそり、屋敷を出よう。
確か、次の買い出しは2日後のはずだ。
その時、数名の召し使いが屋敷の外に出る。
一週間分の食料を買うため、馬車を使うはずだから、積み荷に隠れよう。
ああ、でも俺の不在を、知られるのは不味いな。
なにか、身代わりを用意しないと。
レイアスの得意な土魔法に、自分そっくりの人形を作る魔法があったはずだ。
あと2日ある。
それまでに、抜かりがないように準備しなきゃな。
前世と同じ世界に転生したら、悪役魔法使いでした 青色絵の具 @Mana2023
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