第15話 悪役補正なのか?
シオンを何とか、助ける事ができた。
「シオン、大丈夫か?痛くないか?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとうレイアスおじさん」
起き上がろうとするシオンを慌てて、止める。
「まだ、起き上がっちゃだめだ!」
「でも、僕はカエデを助けに行かないと。聖剣を取りに来たんだ。眉唾の伝説かもしれないし、僕には抜けないかもしれない、でも縋るしか、あいつには勝てる方法がない。」
シオンは、勇者だ、必ず聖剣を抜けるだろう。
そして、あの聖剣は本物のはずだ。
彼が、勇者にならなければ、物語は始まらず、世界は闇に呑まれるかもしれない。
「わかった。俺はここで、見守っている。」
シオンは、ゆっくりと立ち上がり、歩いていく。
聖剣の台座に登り、手を掛ける。
映画みたいなシーンに、目が離せない。
ゆっくりと抜ける聖剣。
眩い光が辺りを照らす
照らす
照らす
いや、照らしすぎて、何にも見えない。
まぶしい~
頑張って耐えていると、肩に手を置かれた。
見ると、シオンが聖剣を片手に隣に立っている。
い、いつの間に。
「おじさん、いつまで目をつぶってるの?」
さっきまでとは、雰囲気が違うような気がする。
「これ、本物みたい。握った瞬間、誰かに話しかけられて、力の使い方が自然と頭に入ってきたよ。」
「そ、そうか」
「ザビルに、拐われたカエデを探しに行くよ」
「ザビルって、俺の護衛だった冒険者の?」
「そう、どうやら魔王の手先だったみたいだね」
ザビルが、魔王サイドだったとは・・・
よりにもよって、俺の護衛から。
嫌な予感がする。
「シオン、俺の探知魔法を使おう。そうすれば、居場所がわかるかも知れない。」
「?!本当?お願いするよ。」
俺は、探知魔法を発動する。
すると、ザビルらしき反応が、この洞窟の下から感じられる。
ちかい!
かなり近くにいるみたいだ。
「・・・ちょうどこの、下から気配を感じる。どこかに地下に降りられる所があるのかも知れない。」
暫く探していると、聖剣の台座が動く事を発見した。
シオンと力をあわせて動かすと、横にスライドし、階段が現れた。
地下へと続く階段を下りていくと、地下通路にたどり着いた。
暗い道をライトの魔法で照らしながら歩いていく。
だいぶ古いようだが、誰がなんのために作った通路なのか?
やがて、開けた場所に出た。
そこには、ザビルと転移魔方陣の中央に立たされているカエデの姿があった。
発動する直前のようだ。
なんとか妨害しようと、火魔法を放つ。
ザビルに当たる直前で、障壁を張られてしまった。
「おや、誰かと思ったら、レイアス様ではありませんか。あなた様は、こちら側でしょ。なぜ邪魔をするのですか?」
「何を言っている?!」
人聞きの悪いことを言わないでほしい。
俺は、断じてそちら側ではない。
「ザビル!!!カエデをかえせ!」
シオンが、聖剣でザビルに斬りかかる。
「それは、聖剣?本物だったんですね。」
ザビルが魔法の杖で聖剣を受け止める。
シオンに、押されながらも、嫌らしい笑みは変わらない。
「まさか、あなたが勇者だったとは!私では、到底かないそうに、ありません。ですが、悪魔王様への良い報告になりそうです。」
「このまま、逃がすわけがないだろ!」
俺は、シオンとザビルが戦っている間に、カエデさんを、助けようと転移魔方陣に近づいていった。
「レイアスさま。何をなさっているんですか?私の邪魔はしないで頂きたい。」
シオンと戦いながらも、ザビルは魔法で俺を牽制してきた。
こいつなかなか強いな。
聖剣を手にした、シオンと戦いつつ、俺にまで、注意を払うなんて。
「だから、俺はお前らの仲間じゃないんだってば。」
「何を言いますか、そのような禍々しい物をお持ちのくせに。決心が着かないのなら、私がお手伝いしましょう。」
そう言うと、ザビルが呪文を唱え始める。
やな予感がした俺は、すぐにファイアーボールを放った。
しかし、ザビルの方が一歩早かった。
右手に焼けるような痛みが走る。
「くっ、ぐわぁぁ」
悪魔に刻み付けられた、契約紋が光を放つ。
俺の意思に関係なく、魔力が集まっていく。
なんだ、これは。
視界が霞む。
意識が、薄れていく。
ためだ!
ここで、意識を失ったら、確実に大変な事がおこる。
「し、シオン!逃げろ!!!!」
「!!レイアスおじさん!?」
ふと、目を開けた。
冷たい、身動きも取れない。
日本で死んでから、分からない事ばかりだ。
「!!!!!」
「う、うそだろ!ルシル、ルシル様を早く呼べ!」
数名の、研究者のような白衣を着た人々が、慌ただしく動き回っている。
皆、一様に驚愕の表情だ。
「ルシル様は、緊急の連絡があったと言って、辺境の村に向かったぞ!」
「なんで、こんな時にいないんだよ!早く連絡を」
「それが、此方からの通信を遮断しているようで、連絡が取れません。」
「そんな、嘘だろ・・・」
また意識が薄れていく。
ああ、眠い。
目蓋が、自然と閉じていく・・・・
暗闇。
しばらくすると、光が見えた。
そうだ、早く目を醒まさなければ。
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