第13話魔物の暴走

村に着くと、村長や冒険者に、結界の事を話した。


俺の結界は、魔物を村の中に入れない為のものだ。

人や、動物は出入り出きるようになっている。


冒険者達の報告を聞くと、かなり魔物が活性化しているとの事だった。


村人達に、結界中に入るよう、伝えてくれるよう、村長に頼んだ。

俺は、転移の魔法具で食料を屋敷より移動させているリリアのところに向かった。


「リリア、どんな感じだ?」


「はい、大体転移し終わりました。」


リリアの隣には、沢山の食料が置いてある。

そして、地面には、魔方陣の書かれた大きな布が敷いてある。

これは、屋敷と繋がる転移の魔方陣を描いた布だ。


あらかじめ、屋敷の方に用意しておいた魔方陣に、カルロスが、食料などの物資を乗せてくれ、それを転移させる事ができる。


ユリウス時代に、開発したものだが、生き物の転移はまだ出来ないのが難点だ。


また、魔力を持つもの同士が発動させないと、効果を発揮しない。

本当は、魔法石などを活用したかったが、研究する前に死んでしまった。


・・・これで、食料などは何とかなりそうだ。


とりあえずは、大丈夫かな?




その日の夜、カンカンという音で目が覚めた。

村に設置されている、非常鐘の音だ。

俺は、着替えて、外に出た。


どうやら、村は魔物の襲撃を受けているようだ。

だが、幸いにも結界が機能している。

今のところ、村の被害はなさそうだ。


ふと、気配を感じ、横を見てみると、冒険者のアルト、ケビン、アリアの三人が隣に立っていた。


「旦那、本当に暴走が起こってしまいましたね。」


「俺たちは、どうしたらいいか、指示はあるか?」


「私は、支援魔法、回復魔法だったら、自信があります。レイアス様、ご指示をお願いします。」


・・・俺の指示にしたがってくれるのなら、ありがたい。


「アルトとケビンは、村に魔物が入ってこないか、警戒してくれ。

アリアは、怪我人が、出たときのため、準備を頼む。」


三人は、了承してくれたようだ。

足早に去っていく。


俺も、結界の様子を直接確認しようと、村と森の境界線に急ぐ。


その時だった。


パキッ


という音共に、結界に穴が

開いた。

しばらく維持できるはずだったのに、おかしい。

ちょうど、俺が向かっている方向だ。


その場所にたどり着くと一軒の民間があるのが見えた。

玄関から這い出すような形で、人が倒れている。

周りには、4匹程のゴブリン。


無詠唱で土魔法を使う。


地面から飛び出たトゲが、ゴブリンを串刺しにしていくのを横目に、倒れている人に駆け寄った。

壮年の女性のようだ。


「大丈夫ですか?!」


「ううう・・・」


出血が酷い、腹部を刃物で刺されている。

すぐに、治癒魔法で傷を癒していく。

暫くすると、出血は治まった。


よかった~


「回復薬です。これ飲めますか?」


ゆっくり、女性を起こし、薬を飲ませる。

これで、大丈夫そうだ。


「む、、むすこ、むすこは居ませんでしたか?」


「この家に倒れていたのは、あなただけでした。」


「そ、そんな。じゃあ、あの子は、あいつを追って・・・・お願いです、息子のシオンを助けて下さい。幼なじみの女の子を人質に取られて、誘き出されたんです。ぐっ、うう・・・」


シオン。


ということは、シオンの母親か?

本来は、ここで死ぬはずだったのかもしれない。


「傷を治したとはいえ、失った血液は戻りません。落ち着いて下さい。息子さんは、私が探してみます。」


俺は、シオンの母をベッドに寝かせた。


外に出ると、結界の穴を探す、よく見てみると、魔法石を掘り出した痕跡がある。

懐から、余りの魔法石を取り出すと、結界の穴を修繕した。



探知魔法を発動させる。

シオンは、どうやら森の中にいるようだ。

すぐに、結界を出て、森の中に足を踏み入れる。


暫く進むと、洞窟が見えた。


・・・・ええ、まさかとは思うけど、聖剣の祭られている洞窟か?


原作のイメージと、一致する所が多い。

こんな、森の浅いところにあったのか。


シオンは、聖剣を手に入れるはずだ。

タイミングは分からないが、今日なのは間違いない。


探知魔法の結果から見ても、この洞窟にいる可能性は高い。


俺は、恐る恐る洞窟に入った。

洞窟内は、真っ暗で、何も見えない。

ライトの魔法を使い、光の玉を出現させた。


結構、深い洞窟だな。


恐々と、洞窟を進んでいく。


暫くいくと、広い空間にたどり着いた。

空間の奥には、岩に刺さった聖剣がある。

その手前には、血まみれのシオンが倒れている。


「!!!シオン!大丈夫か?」


先程のシオンの母親と同じように、鋭い刃物で、胸を刺されている。


何とか、息はあるが、時間の問題で死んでしまうのは、確実だ。

以前から考えていた、探知魔法と治癒魔法を融合させて使ってみるしかない。

シオンの体に、探知魔法を掛ける。

現代転生した時に、興味深く思って解剖学や細菌学の本を読んでおいたのが役に立った。

こんな風に、治癒魔法をより確実に使えるかもと、何となく想像していたんだ。


破損部分を再生させていく。

漆黒の翼が、バサッと広がった。


更に、集中を深める。

血管、心臓、皮膚と再生させ、シオンの様子を見る。


呼吸が、大分戻ってきた。


危なかった、主人公を死なす所だった。



















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る