第12話クルル村3

次の日、朝早くに起きた俺は、早速魔法石を村を囲むように埋めていく。

結構数を埋める必要があるから、大変だ。

冒険者達には、付近の警戒をお願いしている。


暫く作業を続けていると、青い髪の少年がやってきた。


「おじさん、何してるの?」


「おじさん・・・ではない。俺は、レイアスと言う。お前は、誰だ?」


「僕?僕は、シオン。朝の鍛練をしていたら、おじさんが見えたんだ。」


シオン!

こいつが、勇者シオンか!


原作では、レイアスの事を両親の敵だと思っているから、こんな友好的に接してくるのは、驚いた。


「そうか。俺は、この村に魔法を施そうとおもってな、こうして、魔法石を埋めているんだ。」


「魔法?レイアスおじさん、もしかして悪い魔法使いなの?なんか、おじさんの見た目普通じゃないし。」


腰の剣に、手を当てながら聞いてくる。


ちょっと、やつれているだけで、元は美形なんだぞ。さっきから、おじさんとか、普通じゃないとか、失礼なやつだな。


「これは、結界魔法の為のものだ。最近、魔物が多くなっているだろ、村を覆う結界を張ろうと思っている。」


「本当?」


「信じられないなら、見張っていろ。そして、暇なら手伝え。間に合わなかったら、大変な事になる。」


もう、ぐだくだやってる暇はないんだ!

今日、明日にでも暴走が起きるかも、しれないんだぞ。


「え~やだけど、おじさんを野放しにしてる方が、不安だから分かったよ。」


こいつとは、やっぱり合わないな。

イライラしてきた。

無視しよう。

もう、何も言わずもくもくと作業に集中した。


シオンは、手伝いもせず。

ず~っと、傍で素振りをしたり、話し掛けてきたりしてきた。

はっきり言って、邪魔だ。


俺は、シオンの存在を忘れるように、作業に没頭し、想定より、かなり早く終わらせる事ができた。


「終わったーーー!」


めっちゃ大変だった。

うーんと伸びをする。

ずっと屈みっぱなしで、凝り固まった体を解すように、体操をする。

運動神経無さすぎて、変な体操になったが、体はほぐれた。


「よかった~、これで暫くは、大丈夫。

後は、魔法を発動させて・・・」


「へぇ~~おじさんて、人目につかないとそんな感じなんだ。その踊りなに?くねくねしてたけど。」


「!!!!!シオン・・・・」


はっず、シオンの存在を忘れようとして、マジで忘れてた。


恥ずかしすぎて、顔に熱が集まってきた。

絶対、真っ赤になってる。


「わ、忘れてくれ。」


「はは、どうやらおじさんは、良い人みたいだね。疑ってごめんね。」


穴があったら、入りたい。

だが、恥ずかしがっている場合じゃないと、気持ちを切り替える。


「・・・魔法を発動するぞ。」


俺は、そう言うと、シオンを少し下がらせた。

息を整えると詠唱を始める。


「聖なる神の光よ、世界に降り注ぎ、光の壁となれ。広範囲結界術発動。」


魔力を高めていくと、世界に光が満ちる。

そして、バサッという音と共に、漆黒の翼が広がる。


あ~、前は白だったのに、転生したら黒くなった。


聖魔法の難点。

それは、本気を出すと、何故か翼が生える事。

以前は、意味が分からなかったが、今なら分かる。


カッコイイからだ。


魔王との戦いで、大技を放つ時、聖剣を持ち、純白の翼が生えた勇者。


魔王との最後の一騎討ち。

翼をはためかせ魔王に迫る勇者。


中二心を擽られるシュチエーション。

なんか、カッコイイ気がする。


だから、作者は聖魔法を使うと、翼を生やすようにしたのだ!



しかし、この世界を現実として生きている、俺からしたらどうだろう。

今の所、この翼で飛べたことはない。

高い所から、飛び降りてみたら、飛べなくて、骨折した。


恥ずかしいし、邪魔なお飾りにすぎない。


「わわ、おじさん、何か生えたよ。悪魔・・・・いや、堕天使みたいでカッコイイねwwww」


笑いを耐えながら言うんじゃない。

今のこの姿じゃ、似合わないのは知ってる。

ユリウスだった時は、それなりに似合ってたのに。


というか、お前だって、後々はこうなるんだからな!


・・・と、言いたいのを必死で飲み込んで、結界を完成させた。


「ふぅ~、間に合ったな。」


「おお、本当に結界だ。何か透明の壁がある。」


「それじゃあ、俺は村に向かう。他にも準備があるからな。じゃあな。」


さっさと、立ち去ろうとするのだが、何故かシオンがついてくる。

しかも、やたらと距離が近い。


「おじさん面白いから、まだ遊びたいな。」


「いや、だからそんな暇はない。お前は帰れ。そして、最大限、警戒しておくんだ。すぐに魔物の、暴走が始まる可能性が高い。」


「それは、分かったけどさーーもう少しくらい良いじゃん。」


こいつ、しつこいな、逃げよう。


俺は、土魔法を使い、地面をすべるように高速移動した。

信じられない事に、暫く追いかけられたが、なんとかシオンから逃げる事ができたのだった。


前々世と似た世界だったので、原作は、しっかり読んだが、悲劇に襲われる前のシオンが、こんな奴だったなんて。


もう合いたくないな。


たけど、両親や幼なじみを殺される悲劇には、合ってほしくない。

一応、警戒するよう言ったが・・・

原作でも、その辺り詳しく語られて無いんだよな。



俺は、もやもやしながらも、そのまま村まで戻っていった。






*年齢について。

ルシル(23才)

ユリウス(28才)亡くなった時の年齢

レイアス(36才)

シオン(17才)


おじさん、おじさん言われてますが、魔法使いは、200才くらいまで生きます。

(魔物や、魔王との戦いがある世界なので、そこまでは生きられない人が殆どです。平均寿命は、80才くらいです。)


力がある魔法使いは、もっと寿命がある人もいます。

そんなご都合主義世界なので、長い間最盛期の見た目を維持できます。

レイアスも、本当は25才くらいの見た目です。


今は、やつれてしまって、老けた見た目になってます。















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