第11話クルル村2
後半は、何事もなく、クルル村にたどり着いた。
リリアに、鳥の事を話したら、簡単に調理出来る食材ではないと知って、恥ずかしかった。
リリアからという事で、持ってきた食料を分けてもらった。
アルト率いる3人の冒険者とは、少し仲良くなれた。転生して、初めてまともに話せたので、嬉しい。
魔法使いのザビルは、夜になると姿が見えなくなるし、無口なので、ぜんぜん喋れなかった。
護衛だから、その辺に居たと思うけど、鳥を捕まえる時のソナーにも、引っ掛からなかったんだよな~~。
本当は、騎士達と村の現状確認をする筈だったが、逃げ出したまま、戻ってこない。
まぁ、残っていた騎士は、ごろつきとほとんど変わらない、忠誠心の欠片もない奴らだったから、仕方ないか。
クルル村の門の前にたどり着くと、門番の男が立っていた。
「見たところ、貴族様のようだが、クルル村に、何かようか?」
「俺の名前は、レイアス・ブラック。この村の領主だ。魔物が活性化しているとの報告があった為、調査をしにきた。」
「レイアス・ブラック!?お前のせいで、俺たちが、どれだけ辛い思いをしてきたと思っている・・・!」
すかさず、リリアが前にでる。
「なんと無礼な!レイアス様にそのような口を利くなんて。この場で、斬首されても文句は言えませんよ!」
「リリア、大丈夫だ。このくらいは、想定内だ。俺は魔物の調査に来たのだ。事は一刻を争うと、あなたも分かっている筈。村の代表者を呼んできてくれるか?」
男は、しぶしぶながら、村長を連れてきた。
やってきた、村長は、初老の男性だ。
村人らしく日焼けした肌に、畑仕事でついた逞しい筋肉。
まだ、まだ現役といった感じの風貌だ。
「私は、村長のジルバと申します。わざわざ足をお運び下さりありがとうございます。
ところで、ブラック家の騎士団は、どこですかな?」
やっぱり、そこ気になるよね~~
「騎士は、大半が辞めた。残ったものも、逃げた。」
「!!!では、どうやって、魔物達と戦うおつもりか?!」
村長は、怒りを隠せない様子だ。
無理もない、俺だって、そんな頼りない領主は嫌だ。
でも、居ないものは仕方ない。
俺自身の運命だけじゃない。
悲劇が起こると分かっていて、屋敷でじっとなんてしていられなかった。
「怒る気持ちも分かる。でも、騎士はいない。出来れば、被害状況を教えてほしい。」
「・・・・っ、分かりました。私の家にご案内します。」
「手間をかけさせる。」
俺達は、村長の家に向かった。
村長の家は、村の外れにある、少し大きめの家だった。
中に入ると、村人の家にしては、多少豪華な内装のようだ。
アルト達冒険者は、入り口の手前で戸惑っている。
「おまえ達も、一緒に話を聞いてくれ。依頼の内容にもあった筈だが、改めて協力してくれると嬉しい。」
「分かった。」
アルト達冒険者も、続いて入ってきた。
全員が、進められた席に着くと、村長が話し始める。
「この辺りに、魔物が出現するようになったのは、半年ほど前からです。一匹のオークに青年が襲われたのが始まりでした。初めは、はぐれ魔物だと思っていたのですが、次第に、わたしたちでは、対応出来ない数の魔物が現れ始めました。ギルドや、領主様に助けを求めたは、この頃です。ギルドの冒険者が、何度か魔物討伐に来てくれたものの、次から次へと現れる魔物に、きりがなく。先日、大暴走が起こる可能性が高いという事で、ギルドを通して王国騎士団に報告しました。」
「そうか・・・・」
「これまでの間に、多くの犠牲が出ました。領主様がお忙しいのは、承知しておりますが、出来ればもっと早く対応をしていただきたかった。」
「・・・すまなかった。今日より、原因の調査をしよう。」
「謝られたからといって、変えられないものもあります。領主様のお心は有り難いですが、既に王国の魔法騎士団が来てくれるとの事。正直いいますと、あなた様の事を、あまり信用出来ないのです。」
「そうか、しかし、調査はさせてもらおう。どこか、宿泊できる所はあるか?」
「分かりました。この村に宿屋はありません。あまり、お構いできませんが、私の家に泊まって下さい。部屋は用意出来ますが、後の事は、ご自分達で、お願いします。」
今までの事を考えると、当然の対応か。
「それでいい。明日から、周辺を調べる。今日は、休ませてもらおう。」
「お部屋に、ご案内します。」
簡素だが、清潔な部屋に案内された。
俺は、改めて今後の展開を考えてみる。
確か・・・魔物の暴走が、起こった後に、魔法騎士団が到着する。
既に、魔物に蹂躙された村は、ひどい有り様だった。
幸い、まだ魔物の暴走は始まっていない。
俺は、かき集めてきた魔法石を袋から出した。
勇者シオンは、聖魔法を魔物を倒すための手段として、攻撃的に使っていた。
対して俺は、他にも風と水の属性があったので、攻撃魔法よりも、防御や治癒魔法として、使用出来るよう研究していた。
その結果、ある程度の結界魔法や治癒魔法は使えるようになった。
しかし、結界魔法は、特殊属性の空間を使える者の結界には遠く及ばず、治癒魔法は、クレリック達の魔法の上位互換でしかなかった。
確かに俺一人で、クレリック10人分くらいの魔法は使えるが、それだけだ。
人数が、集まれば俺の魔法より上位のものも使えるはずだ。
結局、聖属性魔法は、聖剣と、合わせて使用してこそ最大の効果を、発揮する。
この村の傍にある森に、封印されているはずだけど、正確な場所は分からない。
そして俺は、剣の才能が全くない。
レイアスは、分からないが、ユリウスは運動全般がからっきしダメだったからな。
ちなみに、間宮誠だった時も、そんなに運動神経は良くなかった。
聖剣は、シオンに任せて、俺はこの魔法石で村に結界を張ることにする。
少しは、魔物達の妨げになるだろう。
その間に、広範囲魔法で、魔物達の数を減らしていくしかない。
リリアに、余っていたパンとチーズを出してもらい、簡単な食事を取った。
明日朝早くから行動する為、今日はもう眠る事にした。
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