第10話side、ルシル・シュタイン

最悪だ。

クルル村から直接、騎士団の派遣要請があったので、手続きの為訪れた魔法省で、レイアス・ブラックに出くわしてしまった。


私は、ブラックこそ、師匠を殺した男だと、ずいぶん前から疑っている。


証拠こそ無いものの、奴の行動は、考えれば考えるほど怪しい。


「あっ、ルシ・・・」


あろうことか、奴は私に話しかけてきた。


「これは。これは。レイアス・ブラック公爵ではありませんか。悪名高い貴方が、今日は、どのような用事で、こちらにいらしたのですか?」


「あ、俺は、、、いや、私は、、、」


身長こそ高いものの、ガリガリの身体。

暗い瞳には、底知れぬ悪意が、渦巻いているようだ。

禍々しい気配が、以前より強くなっている。


忌々しい男だ。

虫酸が走る。


「しかし、安心しました。本日は意識がはっきりしている様子。先日お会いした時は、会話が成り立たないほどでした。」



「じ、実は、私は、ユ・・・っ!!!私は、お前の師匠・・・・っ!!!ぐっ!」


なんだこいつ?

いよいよ、様子が可笑しい。

それに、私の師の事をこいつが口にするとは!

その薄汚い口で、師匠の事を話すな!!


「師匠がなんだって!やはりお前が師匠を

・・・」


殺意を必死で押し殺す。

今はまだ、その時ではない。


気持ちを鎮めていると、邪悪な魔力の気配。


「貴様、何をしている?また!何か企んでいるのか?魔法省で、攻撃魔法を発動しようとするなど、言語道断だ。」


ブラックが、何をしても対応出来るよう、魔力を練る。

魔法が発動する前に、一瞬で氷付けにしてやる。


「答えろ!レイアス・ブラック!貴様からは、禍々しい物を感じる。他の奴らは、騙せても私は騙せないぞ!」


こちらも魔法を発動する直前、ブラックから感じていた魔力が、霧散した。


何故か、泣きそうな目で、私の事を見ている。


なぜ、私の事をそんな目で見るんだ?

気持ちの悪い奴だ。


「失礼する。」


足早に去って行く背中を、憎しみを込めて睨み付ける。

時が来たら、必ず真実を明るみにして、殺してやる。


そもそも、今回のクルル村への騎士団派遣だって、領主である、ブラックがきちんと対応しなかったせいだ。

貴族としての価値もない。


あいつのせいで、すでに多くの犠牲が出ている。


沸き上がる怒りを抑えながら、魔法大臣室に向かう。




それから、数日後、私率いる魔法騎士団はクルル村に向かって旅立った。


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