第4話レイアス・ブラック
レイアス・ブラックは、ラディアン王国物語における悪役である。
公爵家の三男である彼は、火と土2つの属性を持ち、公爵家の生んだ最高の天才とまで言われていた。
そんな彼だったが、今まで負け知らずであった為、特大の自尊心を持っていた。
12才になり、魔法学院に、入学すると、ユリウスに出会った。
格下の、伯爵家出身のユリウスをレイアスは、見下していたが、ある時行った模擬試合で、ユリウスに負けてしまった。
このまま敵対する事になるかと思われた二人だったが、レイアスが意地でもみすぼらしい姿を見せまいとした事と、ユリウスの柔軟な態度が、奇跡的に、二人を親友にした。
学院の卒業後、レイアスの家族は流行り病で次々と、亡くなってしまう。
ユリウスが、魔法騎士団に魔法使いとして入団した頃、レイアスは公爵を継ぐこととなった。
筆頭魔法使いになる事を夢見ていたレイアスは、夢を諦めるほかなかった。
そんな背景があったからかもしれない、レイアスは、次第に力を追い求めるようになる。
数年後、筆頭魔法使いになったユリウスに嫉妬し、彼を暗殺してからは、より一層それに拍車が掛かった。
レイアスは、世界の敵として、突如現れた魔王に傾倒し、闇の力を極めるため、大量の奴隷を生け贄に、悪魔と契約したのだ。
闇落ちというやつである。
闇落ちしたレイアスは、魔王軍の幹部になるほどの力を得て、主人公の勇者シオンと、ルシル達、勇者パーティーと敵対するようになる。
その後、数回主人公達と戦う事になるレイアスだが、勇者シオンの聖なる力に阻まれたり、師匠を殺された怨みから、限界を越えた修練を繰り返したルシルの氷魔法に阻まれたりして、
主人公を破るに至らなかった。
そのうち、罪悪の悪魔ブリューゲルに飽きられ、右手の魔法紋を媒介に、悪魔の世界と人間界を繋ぐゲートとして利用される。
肉体は崩壊し、ブリューゲルが人間界に顕現するため、再構築され、レイアスという人物は跡形もなく消えてしまうのだ。
本の内容をここまで思い出して、俺はガックリと肩を落とした。
学院で、親友となった事、俺を殺した事は、紛れもない事実だ。
あの小説の内容は、多少脚色はあるものの、誰かかが見てきたように、そのままだ。
死んだ後の事は、解らないが、多分この後の事も大体同じように進むんじゃないか?
日本に、転生した後暫くは、レイアスの事を恨んだが、最早今さらだ。
霞みが掛かったように、思い出せないこともあるし、彼にそんな背景があるなんて事も、当時は知らなかった。気づいていたら、物語を変えられたのかもしれないという、後悔さえある。
ずいぶん変わってしまった見た目に驚いたが、間違いなく、あのレイアスだ。
彼の魂はどこにいってしまったんだろう。
あの悪魔に食べられたのか?
疑問は尽きないが、小説の内容通りにバッドエンドを迎えたくない。
レイアスの、魂を探すにしても、あの本の内容通りになってはいけない。
取り敢えず、思い出した事は、全て紙に書き出しておくことにする。
それは、そうとこれからどうしよう。
俺が、この世界で死んでから、どのくらいたったんだろう。
ユリウスの時と同じように、魔法が使えるのだろうか。
「いったい、どうしたらいいんだぁ~~~~」
一人で、頭を抱えていると、扉をノックする音が聞こえてきた。
「レイアス様、如何されましたか?」
男性の声だ、この家の執事だろうか?
ちょうどいいから、この人に色々聞いてみるか。
怪しまれないよう、可能な限りレイアスを真似た方がよさそうだ。
「丁度いい、入ってこい。」
「かしこまりました。」
扉を、開けて壮年の男が入ってくる。
「確認したいんだが、今は王国歴何年だったか?」
「今は、王国歴215年でございます。」
「ふむ、そうか成る程な。」
ユリウスが死んでから8年経ってるって事ね。
「ちょっと体を動かしたいんだが、訓練場はどこだ?」
「?旦那様は、知っているはずでございますが。屋敷の裏手にございます。」
「そ、そそうだったな。はは、うっかりしてた。」
ちょっと、冷や汗出てきた。
「レイアス様、どうされましたか?いつもと様子が違うようですが。お身体の具合が優れないようでしたら、魔法医を呼びますが。」
「い、いや、大丈夫だ。問題ない。」
執事が、鋭い眼差しをむけてくる。
怖い、めちゃくちゃ怖い。
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