「水の音」の理由
月明りもない闇である。僕は、藪の中に逃げた。奴は、後をつけてくる。シュ、シュと、草を掻き分ける音が鳴る。奴が、僕の後を追っているのは確実である。おぞましい妖気で窒息しそうになる。奴の両眼を思い出した。一片の憐憫もない冷酷な目である。それが今、僕を狙っている。
奴は、僕を追い詰めて、食い殺そうと迫る。理不尽だ。理屈が通じない奴だから、捕まれば逃れる術はない。
僕は、草の中を駆けた。すぐ後ろに、鋭い殺気が迫っている。奴は身体を縮めて、僕に襲い掛かろうとしている。舌を出して、僕の居場所を確かめているんだ。
空気が動いた。奴はついに、必殺の一撃を繰り出した。毒牙が迫る。僕は、両足に満身の力を込めた。宙を飛ぶ。
ポチャリ
「いかがかな」
「はい。 古池や 蛙飛び込む 水の音」
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