第3話 宇宙人の要求とその後の地球
その後も手厚いもてなしを受けても大きな宇宙人は何も言わず、感情を見せなかった。
しかし、遂に大きな宇宙人が沈黙を破る。
「見せてもらいたいのは、このようなものではなく使われることのなくなった資源なのだ。この星にある不要な有機物はあるだろうか」
「不要な有機物……?」
「それは、ゴミのことではないでしょうか」
そこで試しに宇宙人をごみ処理施設へ案内すると、宇宙人の目が変わった。
「これは素晴らしい! ぜひこれを宇宙船の燃料に使わせてもらいたい」
「はいぃ! もちろんです。どうぞお好きなだけ使ってください!」
すぐさま大量のゴミは宇宙船の燃料としてトラック何百台で運ばれた。
宇宙船に大量のゴミが投げ込まれていく。
そして遂に満タンになると、宇宙人は満足そうな表情を見せた。
「いろいろと感謝する。我々は出発することにする。世話になった」
そう言って、金属片を手のひら大の大きさのものを置いていった。
どうやら宇宙人なりのお礼のようだ。
宇宙船は地球のゴミを燃料にすると、すぐに地球の外へ飛んで行ってしまった。
宇宙船が見えなくなるまで空に向かって手を振り続けた人間たち。
「……」
「ふう、一時はどうなることかと思ったが、何とかなったな」
「もう二度と来てほしくはないな」
息を吐いた束の間。
「しかし、彼らが置いていったこの金属片、この星にはない物質だぞ! これがあれば大きく技術が進歩するかもしれん!」
「おいおい、それは彼らが私たちの国の接待をした大使の前で置いていったものだぞ! 私たちのものだろう!」
「我々の国が一番宇宙人を接待しただろう。もらう権利は我が国にある!」
「何を言うか! 宇宙人が降り立った地は、我々の国の領土だぞ。それは我々のもの
だ!」
「私たちの接待が一番うまくできていたのは間違いない。それは私たちのものだ!」
最初は議論の中で、この金属片の使い道を決めようとした。
しかし、次第にそれだけでは収まらなくなり、各国はいがみ合うようになってしまった。
金属片は国だけでなく、民間の人間もそれを欲し、争いに参加をし始めた。
デモが繰り返され、民間人と公的機関の衝突。
実力行使のテロが起こるようになった。
治安の悪化、強奪、殺人なんでありの実力主義の弱肉強食の世界が台頭。
軍が出動し、常に攻撃準備のために待機する事態になった。
遂には兵器を持ち出し攻撃をしあうようになってしまった。
地球は宇宙人が襲来する前よりひどい状況になってしまった。
一片の金属片をめぐり、世界各国は再び混沌の世に入っていった。
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