第2話 地球人、接待する
「な、な、なななな何か御用でしょうかぁ?」
ある一国の大使が、手もみをしながら宇宙人に近づく。
その後ろにはその他の国の大使が続く。
「・・・」
一番大きな宇宙人がじっと大使を見、ゆっくりと近づいてゆく。
「ひぃぃぃ」
大使達は小さく絶叫した。
「・・・この星の資源を見せてもらいたい」
なんと宇宙人は地球の言葉を発したため、地球人は皆キョトンとした表情を見せた。
「・・・言語については、どの星でも通じるようになる技術を使用している。意思疎通に問題はないはずだ」
宇宙人は、地球の言葉でしっかりと注文を伝えた。
「はいぃぃぃ! 好きなだけご覧くださいぃぃ!」
各国の大使達はこの事実を国へ持ち帰り、すぐに宇宙人の観光接待が始まった。
世界各地の自然遺産、文化遺産、そして人間が用意できるもてなしをして、宇宙人の機嫌を損ねないように努めた。
「・・・あれは何だ?」
宇宙人がふいにある建物を指さす。
それはかつて人間たちとの間で起こった戦争の跡地だった。
凄惨な戦争を忘れないようにするために、残されていたものである。
「あれは、その・・・」
その建物をそのような悲しい遺産にしたA国の大使が口ごもる。
宇宙人に対して、同じ種族同士で争いがあったこと、今も解決には至っていないことを察せられること、他国への後ろめたさが様々に駆け巡った。
変なことを口走ろうものならば、後々国から命を狙われたり、他国から非難されるか分からない。
各国の大使は彼がどのような説明をするのか興味深く伺った。
何か失言があれば、あとでこれを理由にして非難してやろうと考えていたのである。
無論、宇宙人の脅威が去った後で。
「それは、古くから残っている歴史的な建造物ですよ」
その建造物を持つB国の大使がそう説明した。
A国の大使は、驚きB国大使を見つめる。
「・・・そうか」
宇宙人は納得したのか、その場から去っていった。
「さっきのは助け舟のつもりかね? 我が国に恩を売ったとでも?」
A国大使が不服そうに問う。
「別にそんなものじゃないが、そう思ってもらっても構わんよ。今ここで我々の不仲を悟られるにはいかんからな」
B国大使は、彼の目を見ずにそう答えた。
その後も何とか各国大使はお互いに嫌味合いながらもピンチを切り抜けていった。
一方で宇宙人の様子はというと、一番小さい宇宙人は目にするものすべてに素直な感情を見せているように見えた。
二番目に大きな宇宙人は小さい宇宙人を保護しているようにも見え、一番大きな宇宙人はひたすら沈黙を貫いた。
「お気に召していないのでしょうか?」
「そうだな。しかし喜んでもらわねば、どんな事をされるか分からぬ。やりきるしかない!」
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