第2話 地球人、接待する
「な、な、なななな何か御用でしょうかぁ?」
ある一国の大使が、手もみをしながら宇宙人に近づく。
その後ろにはその他の国の大使が続く。
「……」
一番大きな宇宙人がじっと大使を見、ゆっくりと近づいてゆく。
「ひぃぃぃ!」
大使達は小さく絶叫した。
「……遠くの星から来たのだが、少し話がしたい……」
「……は……?」
宇宙人は地球人の様子に戸惑ったのか首を一回転させた。
「……言語については、どの星でも通じるようになる技術を使用している……。意思疎通に問題はないはずだが……?」
宇宙人は頭の横についている黒い塊とトントンと叩いていた。
「翻訳機が少しばかり古い大丈夫か?」
「大丈夫です! しかし……侵略などの目的ではなく?」
宇宙人は首を再び一回転させた。
「我々は叩くつもりはないが……? 資源を見せてもらいたいのだ」
「はいぃぃぃ! 好きなだけご覧くださいぃぃ!」
「しかし、資源というと……何だ……?」
「資源といっているが、何か地球の持つ文化を見たいのだろう。何でも連れて見せればいいのさ。大事なのは機嫌を損ねないことだ」
「どうした? 何をこっそりと話し込んでいる?」
宇宙人はギョロリと人間を捉えた。
すぐに宇宙人の観光接待が始まった。
世界各地の自然遺産、文化遺産、そして人間が用意できるもてなしをして、宇宙人の期限を損ねないように努めた。
「……あれは何だ?」
宇宙人がふいにある建物を指さす。
それはかつて人間たちとの間で起こった戦争の跡地だった。
凄惨な戦争を忘れないようにするために、残されていたものである。
「あれは、その……」
その建物をそのような悲しい遺産にしたA国の大使が口ごもる。
宇宙人へ同じ種族同士で争いがあったこと、今も解決には至っていないことを察せられること、他国への後ろめたさが様々に駆け巡った。
変なことを口走ろうものならば、国から命を狙われたり、他国から非難されるか分からない。
各国の大使は彼がどのような説明をするのか興味深く伺った。
「それは、古くから残っている歴史的な建造物ですよ」
その建造物を持つB国の大使がそう説明した。
A国の大使は、驚きB国大使を見つめる。
「……そうか。古い建物も取っておくのか」
宇宙人は納得したのか、その場から去っていった。
「さっきは助け舟のつもりかね? 我が国に恩を売ったとでも?」
A国大使が不服そうに問う。
「別にそんなものじゃないが、そう思ってもらっても構わんよ。今ここで我々の不仲を悟られるにはいかんからな」
B国大使は、彼の目を見ずにそう答えた。
C国では、その土地の食べ物が振舞われた。C国大使が対応する。
「いかがでございますかな? 旦那様」
大使は三体の宇宙人を座らせると、目の前の巨大なテーブル目いっぱいに料理を運ばせた。
「うちの国はこの星で一番料理がおいしいと評判なんですよ~」
手もみしながらそう言う。
「……」
宇宙人は料理をまじまじと見つめている。
すでに一番小さな宇宙人は機嫌が良さそうにカチャカチャと音を立てながら食べている。
「そんなはずはない。C国め、媚びをうっておこうということか。あの国がやりそうなことだな」
「我が国の方が上手い料理がそろっておるわい!」
「あの国は私たちの国からほとんどの食材を輸入しているくせに、なんだあの態度は……!」
「納得いかんな」
その後も何とか各国大使はお互いに嫌味合いながらもピンチを切り抜けていった。
一方で宇宙人の様子はというと、一番小さい宇宙人は目にするものすべてに素直な感情を見せているように見えた。動物園では子供のように楽しんでいるようだった。
二番目に大きな宇宙人は小さい宇宙人を保護しているようにも見え、一番大きな宇宙人はひたすら沈黙を貫いた。
「……お気に召していないのでしょうか?」
「そうだな。しかし喜んでもらわねば、どんな事をされるか分からぬ。やりきるしかない……!」
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