第33話 「ラッピーさん! 起きてください!」

 33


「あれ? 何だコイツ、肉食べながら寝ちゃったよ」


 ラッピーは俺から肉を奪っておいて、完全に食べ終わる前に寝てしまった。

 まったく……面白いヤツだなぁ。


 -----


「ラッピーさん、ラッピーさん!」


 眠ってるオレを起こすな……むにゃむにゃ。


「ラッピーさん! 起きてください!」


 この声はメガミさまだな……起こすなって……むにゃむにゃ。


「こら! 起きなさい! このバカちんが!」


 バシッ!


「いて!!」


 オレはお尻に走った痛みに飛び起きた。


「ん? あれ? メガミさま、何でここに?」


 そして、驚いた。起きたオレの目の前にはメガミさまがいたんだ。

 でも、いつも知ってるメガミさまと少し違う。足がないし、半分透明だ。


「何でここには私の台詞ですよ。ラッピーさん、あれ程道を間違えてはいけないと言ったじゃないですか、それなのに……」


「ごめんなさい……」


『クゥン』と鳴いてオレは素直に謝った。


「しかも、道と道の間を落ちて幽霊でもない生まれ変わりでもない、まさかの甦りというスーパープレイをしてしまうなんて!」


「スーパープレイ?」


 オレはメガミさまの言葉の意味が分からなくて首をかしげた。


「さぁ、そろそろ甦りも終わりよ。神王しんおうさま曰く……あっ、神王さまって言うのは私たち神様の王様ね。神様の中で一番偉い神様ね………因みに、ラッピーさんが道を間違えてしまったから、私の監督不行き届きって事で、私はここ数日にも渡って神王さまに叱られていたのよ………で、話が逸れてしまいましたが。その方曰く、ラッピーさんがこのままの状態を続けていると、魂が甦る方法が地獄の住民に知れ渡ってしまうらしいの。『アイツ、ああやって甦ったらしいぞ!』って。で……そうなると、甦ろうとするヤカラが増えてしまうらしいの。そうなると下界は大混乱……だから、サッサとあなたの甦りを終わらせて軌道修正しなければならないのよ」


「う……う~ん、そうなんだ」


 オレは訳の分からない説明を早口でされて、全く内容が頭には言ってこなかったけど、とりあえず頷いた。


「そうなんだではございません! まったく、他人事みたいに!」


 そんなオレに向かってメガミさまはピシャリと言った。


「それじゃあ、軌道修正を行いますよ」


 そう言うとメガミさまはオレを抱っこした。


「え……じゃあ、サトシとハル姐と一緒にいられるのも終わり? まだママにも会っていないのに?」


「そうです!」


「えぇ!」


 オレは寂しくなって『クゥン』と鳴いた。


「『えぇ!』でも『クゥン』でもございません。ラッピーさんは始めから転生すると決めていたでしょう?」


「う……うん、そうなんだけど。もうみんなに会えないと思うと」


「寂しいですか? でも、違いますよ。あなたは生まれ変わって、またサトシさんやハルカさんに会えるのですから」


「そ……そうだけどさぁ、あっ! 分かった! じゃあ、最後に一個お願いを聞いてよ!」


「何ですか? 無理なものは無理って言いますけどね!」


「分かってる……でも、多分無理じゃない。ねぇ、オレをサトシとハル姐の近くに連れてって」


 オレがお願いをすると、メガミさまは「はぁ……」とため息を吐きながらだけど、サトシとハル姐が眠るベッドへオレを連れていってくれた。


「……で、何をするおつもりなの?」


「そんな怖い顔しないでよ。サトシとハル姐への挨拶さ……ねぇ、もうちょっと近付けて。二人の顔に」


 オレは並んで眠ってるサトシとハル姐にもっと近付けてもらうと


「ペロペロ……」


 二人の頬を舐めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る