第28話 「ハルカ!!!」

 28


「ワウッ!!」


 ラッピーは吠えると、突然俺の腕の中で暴れだした。

 それはもう釣ったばかりの新鮮な魚の様に。

 体をくねらせ、足をバタつかせ……


「あ……おっおい!」


 ラッピーは俺の腕から抜け出すと一気に走り出した。

 今までのラッピーとの人生の中で、こんなに必死に走るラッピーは見たことない。

 前だけを向いて、まるで飛ぶように。


 俺も全力で走った。

 でもデブな俺じゃ全然追い付けない。


 ラッピーは並木道のすぐ近くにある公園に入ると、俺の方を振り返って、もう一度、


「ワウッ!!」


 大きな声で吠えた。


 そして、さっき入った入り口とは反対側の、俺の家に近い方の入り口の近くまで来ると急ブレーキをかけるようにして止まった。


 ラッピーは俺の顔を見上げた。


 俺は直感でラッピーが何かを訴えかけていると思った。

「なんだよ……どうしたんだって……ハルカは? ハルカはどうしたんだって? ハルカ……ハル………え?」


 俺は見付けた、暗闇の中で倒れるハルカを……


「ハルカ!!!」

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