第23話 「元気出せ!! 元気出せ!!」
23
ドサッ……
ハル姐が突然倒れた。
オレはハル姐が「ちょっと待って……」と座った時からハル姐の異変に少し気付いていたんだけど、倒れたその瞬間だけ目を逸らしてしまっていた。
公園の外から良い匂いが漂ってきてたんだ。
だからそっちに目をやってしまっていた。
そんなオレが大きな物音にびっくりしてハル姐の方を見ると、ハル姐はお腹を押さえて地面に倒れていた。
「うわっ! っととと……って……え? あれ? どうしたのハル姐? 急に寝ちゃって……ん? お腹押さえてる……まさか! お腹痛いの?!! 病気? 病気なの?」
オレはお腹を押さえて倒れたハル姐に気が付くと、驚いて、慌てふためきそうになってしまった。
だが、苦しそうな顔のハル姐を見てすぐに気持ちが切り替わった。
助けなきゃ! ハル姐を助けなきゃ!
って……
オレはすぐに地面に倒れたハル姐に近付くとハル姐の匂いを嗅いだ。
こういう時はまずは匂いを嗅ぐんだ。
病気をしている人や疲れている人の息の匂いはいつもとちょっと違うから。
ハル姐の息は散歩した後のオレみたいに「ハァ……ハァ……」と荒く、顔はびっしょりと濡れていた。
顔色もいつもみたいにキレイな白じゃない、くすんだ白をしている。
肝心な息の方は……
やっぱりな、いつもと違う。
タバコの匂いとご飯の匂いと混ざって、また別の匂いがする……
サトシのオナラみたい匂いだ……
よし……
とにかくハル姐の体がおかしいのは分かった。
後はどうしよう……
いつもだったらすぐにママを呼びに行くんだけど……
でも、ここは家じゃないし……ママは居ない……
じゃあ、ママが居ないときは……
サトシか……ってアイツも居ないよ!
居るわけ無い、外だもん!
ここは外、オレは散歩中………
ん? あっ……そうか!
外なら他の『人間』も居るはず!
サトシやママじゃなくても、誰か『人間』を連れてくれば良いのか!
そうか、そうか……
そう言えば、オレもお腹痛くなった事あるけど、その時はママが"白い服着た人間"の所に連れていってくれたっけ!
したらあっという間にお腹痛いの無くなった!
よし……
オレがあの"白い服着た人間"の所にハル姐を連れていってやる!
ちょっと待ってろハル姐! オレが探してきてやるぜ!
オレはクルリと振り返って走り出そうとした。
だけど……
グイッ!
勢い付けて走り出そうとしたオレの体を何かが引っ張った。
「なんだよ!!!」
オレは怒鳴った。
「誰が邪魔をするんだ! ハル姐が大変なんだぞ!」
って……
でも、振り返ってみると引っ張っていたのはハル姐だった。
いや正確に言うと、ハル姐がオレの"首に付けられたヤツ"をギュッと握って離さないでいたんだ。
これじゃあ身動きが取れない……
どんなに前に行こうとしても、"首に付けられたヤツ"がオレの動きの邪魔をして止められてしまう……
オレはもう一度ハル姐に近付いた。
「離して、ハル姐離して……お願い!」
オレはそう呼び掛けながら、オレの"首に付けられたヤツ"を掴むハル姐の手を舐めた。
「うう……うぅ……ラ……ラッピー」
「あ! ハル姐!!」
オレが手を舐め始めると、今まで何も言わなかったハル姐が喋った。
きっと目を覚ましたんだ。
今まで苦しくて眠っちゃってたけど、オレの『ペロペロ』が嬉しくて目を覚ましたんだ!
「元気出して、いつものハル姐に戻って!」
オレは手の『ペロペロ』を止めて、ハル姐の顔を『ペロペロ』した。
『ペロペロ』はみんなが元気になるヤツ!
ハル姐! 元気出せ!!
がんばれ! がんばれ!!
"首に付けられたヤツ"を離してくれるのはその後で良い、今はまずは元気を出してくれ!
ハル姐!!
オレは舐めるのに必死で思った事が言葉に出来なかった。
でも、心の中で
『元気出せ!! 元気出せ!!』
って祈った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます