温もりの中で
「ふふ・・・」
ため息のような笑い声を君が漏らした。
抱き寄せた僕の腕の中で、古ぼけたジャケットを手にしている。
呆れた顔で僕が尋ねた。
「まだ、捨てていなかったんだ・・・」
僕の問いを得意気な表情で聞いている。
「だってぇ・・・」
僕にとって、「今でも」ドストライクなモジモジ顔が呟く。
「わたし・・二人にとっての記念の品なんだもの・・・」
甘い囁きに熱い気持ちが湧きあがる。
「あの時・・・」
遠い目をする先を僕も一緒にたどっていく。
そう。
あの時。
僕は彼女、君の家に電話をかけたのだ。
※※※※※※※※※※※※※※※
「あぁ・・・」
僕は懸命に祈った。
彼女が電話をとってくれることを。
呼び出し音が続く。
それは数秒だったのか、何十秒だったのか。
とにかく。
もどかしい時間が続いた。
もしも。
彼女が旅立っていたら。
再会しても。
気持ちを取り戻せる希望は無いと思っていた。
「はい・・・」
繋がった声は。
僕が望んだ。
透き通った彼女の声だった。
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