*1
やばい!組織に殺される!
道を自分の所属していた組織から逃げるため、出来るだけ早く走る。
僕は元・最年少の殺し屋、今は十二歳。まだ『開花』していない未熟者、コードネーム『スノードロップ』。花言葉が『貴方の死を望む』とは、皮肉でしかない。なぜなら僕が殺すのだから。
組織はほとんどが大人ばかりで、ほとんどが『開花』していた。その力の中には索敵能力を持ったやつもいるんだろう。
というか、誕生日に殺されるというのも不幸な話だ!
嫌だ、死ぬのは嫌だ。どうにか生き延びれないか。
僕は仕事で失敗をしてしまったため、組織に追われていた。たった一人の少女を、殺せば良かっただけだ。殺していれば、こんなことになることも、幼馴染が殺されかけることもなかった。
必死に逃げ、林の中に入る。
こうすれば、あいつらの体力も少しは消耗させることが出来るだろう。
ただし、体力を消費するのは自分も同じだ。
どこかに隠れられる場所はないだろうか。後三十分だけでいい。そうすれば、僕が生まれた時を迎え、『開花』が出来るようになる。
その時、僕は選択を間違えてしまったことに気づいた。目の前に広がった、樹海。何故、樹海と分かるかと言うと、僕は一歩進めば崖の下に転落してしまうからだ。
僕はなんてついてないんだろう。そう思って皮肉なほどに美しい樹海を眺めていると、後ろから声が聞こえる。
「おーい、スノードロップー!どこだー?俺たちは別にお前を拷問したい訳じゃないんだぞぉー!」
ハナズオウが林の中で叫ぶ。もちろんこれもコードネームだ。
あいつは信用できるし、もしかしたらハナズオウにはついていっても良いかも…。
「ただ、組織長の命令だからお前を拷問しなきゃいけないだけだぞぉー!」
前言撤回。絶対にあいつについて行ってはいけない。
「お、スノードロップゥゥゥ!お前、ダメだぞぉ。組織から逃げようとするなんて。」
ガサガサと音を立てて、筋肉質の大男が茂みからでてくる。ハナズオウだ。彼は周りにヒマワリを舞わせながらこっちに近づいてくる。
「お!これは良い眺めだなぁ。死ぬ前にここに来たかったのかぁ?」
そう問いかける彼はなんだか哀しい表情をしていた。
「なぁ、お前と会って、これで何年目だろうなぁ…。俺は、お前のこと好きだったんだぜ。小さい頃から一生懸命働いて、俺たちみたいな、ならず者にも優しくてなぁ…。いつも、いつも俺たちのことを気にかけてくれたよなぁ…。」
まだ昇ったばかりの日を見つめながらハナズオウが呟く。強い風が吹き、林がざあっと揺れる。風が通り過ぎた後、彼は決心したように立ち上がった。
「よし、スノードロップ。お前には死んで貰う。」
さっきまで死にたくないと僕は思っていた。だが、こいつの話を聞いてる内にこいつになら、殺されてもいいと思えた。
「お前、本当の名前はなんだ?」
本当の名前。コードネームではない名前。
「僕の名前は、
「そうか、俺の名は
「は?それってどういう…。」
次に生きて会うなんてことがあるのだろうか?
「史上最年少で殺し屋になったお前なら、ここから落としても、何とか生きてはいれるだろう。今までありがとうな。さあ、スノードロップはここで死んだ!お前はこれから自由だ。白竺!お前は『生』を謳歌しろ!じゃあな。精々、俺に狙われないようにしろよ。」
ハナズオウ、いや、向日はそう言って僕を崖下へ突き落とした。
あ、これ、無理なやつだ。
僕は耐えきれなくなり、気絶した。
ああ、向日の声が遠く聞こえるな。
ジューンベリーの園で 砂葉(saha/sunaba) @hiyuna39
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ジューンベリーの園での最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます