2023/12/24 part1
「さて……何しよっかなあ……」
自室の椅子に深く腰掛けながら、俺は独り言を呟く。
仕事を休んでから1ヶ月近く経過している。
今まで自分が一番熱中していたのはTVゲームだ。
昔は一日中ずっとゲームするくらいハマっていた。
時間もあることだし、最近は面白そうなゲームもたくさん出ている。
(久々にゲーム三昧な日々でも送るか……!)
自室の片隅にある、少しほこりを被ったゲーム機に視線を送る。
だが……何故か椅子から立ち上がる気にはなれない。
(うーん……ゲームも悪くないが……今は別のことがいいかもな……)
そうだ、旅行に行くのはどうだろうか?
スマホで適当に”観光地 おすすめ”で検索し紹介される観光地の画像を眺めていく。
目を奪われるような鮮やかな絶景から、見るものを圧倒する荘厳な建築物、心が洗われるような癒やしスポットなど、様々な魅力的な場所が紹介されている……のだが。
(うーん……なんか画像見てるだけで満足してきたな……)
そうだ。体を動かすのがいいかもしれない。
昔から体を動かすのは好きで、いろんなスポーツに手を出していた。
一通りメジャーなスポーツはどれもそれなりにこなせる自負はある。
(けどスポーツは一人ではできねーんだよなあ……)
こういうときってどうするんだろ?
地域コミュニティとかで一緒に体を動かす仲間とかを探すのか?
でも、今更新しいコミュニティに入ってくのも面倒だな……。
うーん……。
なんか……何するにしてもあんまり乗り気になれねえ……。
……仕事一辺倒の生活になっていたせいだろうか?
自分の人生を豊かにする趣味が疎かになっていた自覚はあるが……こんなにひどかったっけ?
ここ最近ずっと何かしようと思っては結局、何もしないまま時間だけが過ぎていく日々を送っている。
「はあ……もう何もやる気が起きねえ……!」
……仕事で精神を削られていった結果、もはや既に精神的な不調をきたしているのかもしれない。
休みがあったら何をしようかとあれこれ考えていたのに、いざ時間があっても何もする気が起きない。
学生の頃は暇さえあれば友達と遊び、いろんなことにアクティブに手を出していたのに……今となっては過去の自分の方が信じられない。
活発な少年時代の俺と無気力な今の俺──そんなコントラストに寂しさすら感じてしまう始末。
「いや虚しすぎんだろ……」
思考を停止させるべく、俺はベッドにダイブする。
と、ふと横になった視線の先にあったのは──古びたノートPC。
それは──俺が大学時代に使っていたもので当時の思い出が詰まっている。
大学の授業やレポートでも使っていたし、暇なときはブロクを書いたり……ゲーム実況なんかもしたりした記憶がある……まあ若気の至りってやつだ。
懐かしいような、でも恥ずかしくて目をそらしたくなるような、そんな思い出も詰まったPCを見ていると……当時に戻ったような楽しげな感情が自然と湧き上がって来るのを感じる。
「……久々に開いてみるか」
ノートPCに電源ケーブルを指して、俺はベッドに寝転がりながら、懐かしのPCを起動した。
──久しく起動していなかったPCのホーム画面が液晶に移る。
とりあえずロックを解除してChromeを開くと、長き眠りについていたChromeが待ってましたと主に映し出しだのは──『小説家になろう』の画面。
「うぉお……懐かしいな……」
そういえば、大学時代に小説家になろう、通称なろうにハマっていた時期がある。
最初は読むだけだったが、いつの日にか「俺でも書けるんじゃね」と思っていくつか作品を投稿したんだよなあ…。
一時期は、起きてネット小説を書いて寝るみたいな、何の生産性もない生活を送っていた。
つーか、当時は時間が無限にあって良かったよなあ……じゃないと小説を書くという、時間を膨大に消費する行為はできねーし。
ってか俺……一体どんな物語書いてたっけ?
……うっすらとしか覚えていない。
就活やら大学院の研究やらで忙しくなって、ネット小説から離れていったような記憶がある。
削除されていない限り、当時の俺が書いた物語が──今もなろうで読めるはず。
──わざわざ貴重な有給を使って、自分の黒歴史を掘り起こしてみる。
……うん、まあ意外と悪くないかも。
過去の自分が書いたものだ。
超絶つまらなくて遠慮なく罵っても、誰の迷惑をかけるわけでもない。
大人になった今の俺が読むと、恥ずかしくて身悶えするくらいのものを書いてるだろうな。
ならば高みの見物といこうじゃないか。
いっそ過去の俺を笑い飛ばしてスッキリするというのもいいな。
さて、どれどれ……
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