第10話
サテライトシュガー。
それは、とある敵からしかドロップしない貴重なものだ。
微量ながらも、そのとろけるような甘さと驚異の肉体強化能力のせいか、高値で取引されている。
1g10億円といったが、数が少ないため数回しか売られたことがないため、実際はそんなに高くない。
そんなにって言っても、1億ぐらいだが。
「こんな貴重なものくれるんですか?!」
「1gしかないけど、欲しかったらやるよ」
「これって貴重なものですよね?!売らないんですか?!」
「サテライトシュガーってのは、売るのが面倒なんだ。出回ってないのもこれが原因だな。だから、せっかくならパンをそれで作って、高値で売ればVIPが来るんじゃないか、って」
たしかに、いい案だ。
普通、パン屋で売ってるパンは手頃な値段で買えるのが売りだ。
高級なパンでも、殆どは庶民が頑張ったら買える程度。
でも、これを使えば一個100万でも300万でも売れるってことだよな。
俺は、早速試作をしてみた。
「ちゃちゃっと作ってみたんですけど、食べてほしいです!」
「何だこの美味さ、ありえんぞこれ」
「これはVIP限定って言われても納得だわ」
「やばい体が軽いwww」
といったように、メンバーからは好評だった。
俺は、少しビジュアルを良くした後、SNSで新しいパンの告知をした。
ダンジョンベーカリー【公式】@DanBakery :220万フォロワー
【新発売】VIPブレッドの登場。
お値段はなんと150万円。予約限定。
なぜこんなに高くなってるのかというと、サテライトシュガーとかいうバチクソ高い素材を使ってるから。あと、上品になるようにダンジョンカウ産のクリーム・ミルク
と変異麦を使ってみたよ。涙が出るほど美味しい(らしい)。VIPはぜひ。
♡95万
>高杉wwww
>こんなの売るって許されるのかww
>いや、サテライトシュガーどこで手に入ったんだよ、まずw
>サテライトシュガーか、なら納得
>俺一応貯金大量にあるから、買ってみようかな
>↑一切れくれw
といったように、ネットでは大盛りあがりだ。
店舗で売ったら盗まれるのが怖いから、予約限定にした。
すると早速、一件の注文が入った。
予約注文は電話だけで、今のところVIPブレッドだけ受け付けている。
「はい、こちらダンジョンベーカリーの三河です」
「突然お電話失礼します。冒険者の木崎です。VIPブレッドを注文したいです」
めっちゃすごい人だった。
冒険者の木崎っていったら、超有名人だ。
一人でS級ダンジョンを踏破したことで有名な、元冒険者だ。
今はやっていないのだけれど、あだ名が「冒険者の木崎」だからそう言っているのだろう。
そんな有名人が俺のパンを求めてるって、、、まじか。
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