第10話 プレゼント
□ 涸れた地下水脈の空洞にて
衝撃で一瞬意識が飛んだが、殺し切れていないことを自覚していたのですぐ呪術師のところへ走った。
外套はどこかに飛んでいき、華奢な少年の身体が倒れている。
改めて背中と首に双剣をたたき込む。
数度の痙攣の後、ゆっくりと血が岩に流れ込む様を、じっと見ていた。
拍手の音が聞こえる。
「やあおめでとう、この未来は見えていなかったけれど、靄がかっていたからこれが僕の運命だったんだね。僕を殺しきれるほどの成長を見せたとは」
はじかれたように周囲を見渡す。人の姿、気配はなく、ただ声だけがかすかにこだましている。
「安心しなよ、その身体に入ってたのは正真正銘僕の魂だ。これは、君へのプレゼントに少しばかり仕込んであった僕の意識だよ、じきに消えるけどね」
その声と共に、崩落した天井からナニカが落ちてきた。
それを目視した瞬間、なにかいいようのない予感が脳を貫いた。
砂煙が晴れ、その姿がはっきりと見えた。見えてしまった。
「あ、あ、あぁ‥」
「気に入ってくれたかな?僕の意識が消えるから制御が利かなくなってしまって、君を襲ってしまうかもしれない。今の君なら返り討ちにできる程度の力はあるんだろうけどね?こういう結末を迎えるのは僕としては望むところではないんだけれど、今生きている者としてケリを付けて欲しいな」
その姿は、心から焦がれていた、いたずらっぽい目と八重歯が魅力的な、私の好きな彼だった。
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