第43話 調印式

サートゥルヌスはピリピリしていた。


調印式がはじまり、国交への日本の思いを何とかと言う外交担当が長々と話しているのを聞いていて、イライラしていた………。




熊田首相はヒヤヒヤしていた。


調印式が始まったのはいいが、桜木外務大臣が長々とどうでもいい事をダラダラと話しており、外相に任命したのは間違いだったと後悔しつつ、早く終われと思いながら、フローティア国王がイライラしているのを横目に見えていて、後でどう言い訳しようか等、胃が痛くなる思いをしながら顔は笑顔で心の中は色々と渦巻いていた。


主役2人を、置き去りにして独演会をしていた桜木大臣の調印式の演説が終わった。


悠一はフローティア王国の外交担当兼通訳として、サートゥルヌスの後方についていた。

桜木大臣の話が長く、座っていたら…なんか学校に行ってた時の校長の長い話のような気がして眠気が襲いかかってきていて、必死に戦っていた。(まじ眠い…早く終わらないかな?……………はっ!?終わってた。ヤバい国王様に合図出さないと!!)


ようやく調印式のメインイベントである、調印が行われようとしていた。


悠一はサートゥルヌスに合図を出して、調印の書状にサインを書いてもらう。

そのサインを書いた書状をもらい、熊田首相に手渡し、熊田首相がサインをした書状を受け取り、サートゥルヌスに手渡した。

悠一の仕事はこれで終わり。

サートゥルヌスと熊田首相が立ち上がり、握手してそれを報道陣が写真撮影している。


写真撮影が終わり、もう一度席に着き報道陣からフローティア王国への質問が始まった。

「フローティア王国国王様に、質問です。今回日本との国交を持つきっかけを教えていただきたい。」

『のう、ユウイチ国交を持つきっかけって、おぬしだろう?それを話してやればよかろう。』

『え〜!?ある程度濁して話しますよ?』

『なんじゃ…まぁよかろう。』

「質問にお答えします。国交を持つきっかけですが、簡単に言いますと私個人とフローティア国王様の御息女と仲良くさせていただいておりまして、今後私は国籍を移す予定となっておりまして、その一環で国交が無い国への渡航や籍の離脱が出来ない日本の為に、国王様が日本との国交を樹立させていただきました。」

「すいません。申し訳有りませんが、外交担当の相楽さんがいなければ国交は結ばれなかったのですか?」

『すごいな〜、正解。』

「正解と申しております。」

「では、次の質問です。日本とはどのような関係となるのでしょうか?」

『簡単じゃないか、特に何もない。』

「え〜、何もありません。と申しております。わたくしの方から付け足させていただくと、国交は結びましたが不干渉になると思っていただいて問題ありません。」

「はあ………、不干渉ですか……何か協力して何かをするというのは無いのですか?」

『特に無いな?』

『特にありませんね。』

「特にありませんと申しております。」

「………ありがとうございます。では次の質問です。地球の他国とは国交を結ぶことはあるのですか?」

『無いな。』

「無いと申しております。」

「他国と国交を結ばないのはなぜでしょうか?」

『彼は何を聞いているのだ?さっきユウイチが言ったことが回答だと思うが………。』

『………ですね〜。』

「他国と結ぶ必要性が無いから、結びません。」

「他国から国交や同盟等を、打診されてもお受けにならないと言うことですか?」

「その通りです。」

「それは、他国から見ると傲慢ではないのですか?」

「なぜ傲慢だと言われるのですか?」

「日本以上の列強諸国や国連での常任理事国がありますが、それらからの要請を断るのは傲慢ではないのでしょうか?」

「相手国が強ければ、要請すれば誰でも国交や同盟を結ぶと言われているのですか?それを断るのが傲慢だ。と言いたいのですか?」

「……そうではありませんが……。」

「はっきりと言わせていただきますが、フローティア王国は異世界の国です。他国が脅してこようが、攻めてこようとしても不可能な場所に居ます。その上同一世界にあるわけでもない国と取引をするにしても、貨幣価値が意味を無くしています。円、ドル、ユーロ何も持っていっても、フローティアでは紙くずや鉄くず同然ですので、意味がありません。もちろんフローティアで使用している貨幣についてもこちらに持ってきても意味はありません。それらを考慮して、国交や同盟をしないと言ってます。」

「…………わかりました。ありがとうございます。」

「……他に質問がなければ、会見は以上とさせていただきます。」

『国王様、行きましょう。』

『おう。ユウイチ、ナイスな返しだったぞ。』

『さすがにあの言い方はムカつきましたので……。』

『あれでまだ言ってくるようなら、私が一喝していた。』

『……そうならなくて良かったです。』

調印式が終わり、サートゥルヌスがラフな服装に着替えて、のんびりしていると迎えが来てくれたようで、ユウイチとサートゥルヌスは東京の観光に出発した。

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