第36話 良好な?

「ど〜も、1週間ぶりです。前田さん。」

「お久しぶりです。相楽さん。」

「えっと…そちらの方は?」

「相楽さん、こちらは私の上職の桜木さくらぎ外務大臣になります。」

「えっ?いきなり外務大臣が来たんですか?」

「いきなりで申し訳ないね〜、外務大臣をしている桜木です。よろしくお願いします。」

「……失礼しました。相楽です。よろしくお願いします。」

「そちらの女性は?」

「彼女は、政府から警護の為に派遣された自衛隊員さんです。」

沙月は、悠一から紹介されると、頭を下げてそのまま悠一の後方に立ったままでおり、この場ではあくまで警護として同席しているとアクションをとった。

「そうですか…他国の外交担当に自衛隊が警護に就くとは初耳ですが、君、所属はどこかね?」

「警護に付いては、相楽さんが外交担当になられる前の3年前より実施しております。所属については、私からはお伝えできませんので、防衛省に直接お問い合わせをお願いします。」

「何故言えんのだ?」

「申し訳ありません。機密事項が含まれる情報がありますので、私ではお答え出来ません。」

「そういうことか。分かった。」

「桜木大臣、私から質問があります。」

沙月への質問が終わるとすぐに悠一が大臣へ質問をした。

「何故大臣がここに?」

「ふん、そんなことか……前田君ではろくな交渉も出来ずに帰ってきたのでね。不甲斐ない部下の変わりに、上席が来ただけだよ。」

「そんな事ないですよ。前田さんはこちらの要望を聞いて、最善と思うことを持ち帰っていただいたかと思いますが……。」

「それが、彼の国は何も欲していないので、国交の樹立以外を求めていないだと?なんのための交渉だ?そもそもフローティア王国の目的はなんだね?」

「たしかに国交の樹立以外求めていないですね。前田さんにもお話しましたが、フローティア王国は日本に求める物はありません。ある程度の人間の移動を認めていただければ話は終わります。」

「それはフローティア王国の総意かね?本当に日本との取引は必要ないのかね?」

「必要ありません。あと、総意と言われても、フローティアは王権制度の国ですので、国王が必要ないと判断すればフローティア王国の総意となります。」

「そうか…相楽くんと言ったかな?君も日本人であれば、少しは日本の国益になる動きをしたらどうかね?」

「といいますと?」

「少しはフローティア王国から、日本に有益となる物を用意させるとかしたらどうだ?」

「すいませんが、私はフローティア王国の外交担当です。何故王国が不利益になる事をしなければいけないんですか?桜木大臣、貴方は日本に不利益になるようなことを、他国から要求されたら、それを受けるのですか?」

「君は日本人ではないのかね?日本人なら日本の為に利益になることをせんか!それに今は不利益かもしれんが今後利益に変わるのであればそれを受けることがある。」

「今は日本人ですが、国交が樹立されれば、フローティア王国に籍を移す予定です。それにフローティア王国では、今後利益に変わるかも?という不確定要素で他国と取引はありえませんよ。国民を守るためにもそう言った不確定な事は極力除くのが国王の判断です。」

「そうか……分かった。私は退室させてもらおう。後は前田と話しを詰めてもらおう。」

と桜木大臣は離席し、そのまま会議室を後にした。

「……前田さん。」

「はい。相楽さん何でしょうか?」

「桜木大臣、帰り道わかりますかね?」

「あっ……ちょっと中座しても良いですか?」

「大丈夫ですよ。センターゲート内をふらふらされたほうが、センターゲートとしてもいい顔はされませんので、お願いします。」

前田さんがあとを追いかけて、すぐに案内したらしく、桜木大臣は迷子にならずにセンターゲートを後にしたとの事で、前田さんから結果を教えてもらいひと安心したところで、打ち合わせの続きを開始した。


「相楽さん…申し訳ありませんでした。」

「いや、良いですよ。」

「いや、今回の事もですが、拉致されたそうで……。」

「あぁ、その件ですか……私は大丈夫でしたが、撃たれた一般人の方や動いてもらった自衛隊や警察等の方々に言ってあげてください。」

「いや……そうですね……はい。」

「何か歯切れが悪いですね。」

「実は、事前に警察の外事課や政府の方から外務省宛に連絡がありまして、不穏な動きをしている国があるから牽制してくれとの事でしたが、本省での対応が遅く、後手後手になりまして……該当国には繋がったのですが、していない。知らない。の一点張りでしたし、交渉していたら救出して終わったと自衛隊から連絡があり、結局はこの件自体うやむやになってしまいましたので………。」

「交渉お疲れ様でした。向こうとしては知らないと通すしか無いですよね。……まぁこちらとしては貴重な時間を奪われただけで、あとは軽く殴られただけですかね。まぁすぐに治る程の物だったので、気にされても困りますが……。」

「そう言っていただくとありがたいですが……そのいいんですか?一応日本の中で襲われ拉致されたとなったら、日本にも責任があると言われても仕方がないことなのですが……。有利な条件で交渉が進めるための手駒が増えた。などは考えないのですか?」

「そこを普通に聞かれる前田さんだからこそ、真摯に話を進めれると思っていますので、そんな降って湧いた話しをしても必要ないと思っていますよ。」

「そうですか……。分かりました。」

「では、打ち合わせの続きをしましょう。フローティア王国からの交渉内容については変更ありません。」

「承知しました。日本としては、何かしらの技術の提供を……具体的に言いますと魔法関連と魔物関連の技術もしくは知識の提供をお願いしたく…。」

「……?鉱物資源の取引は良かったのですか?なければ王国としても助かりますが……。」

「はい。鉱物資源については支払える対価が金等の鉱物との交換になりますので、お互いに益とはならないかと、別の事柄に切り替えることになりまして、現在日本が必要としている魔法や魔物の情報や技術の提供をお願いします。」

「分かりました。ただ、提供に対しての対価はありますか?」

「はい。対価は早期の国交樹立と日本国内での活動拠点の無償提供を考えております。」

「なるほど……わかりました。そういうことであれば国王に相談し、技術提供等をどのくらいの期間実施するのかを確認してまいります。」

「ありがとうございます。では、次回の打ち合わせの時期ですが……。」

「それは、来週の同じ曜日の同じ時間で良いと思いますね。」

「分かりました。では技術提供について、来週ご回答いただけると言うことで良かったですか?」

「案として、でいいなら来週お知らせできると思いますよ。」

「では、また来週よろしくお願いします。」

「はい。ありがとうございました。」

と打ち合わせを終了した。


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