第30話 悠一動きます。
「隊長、おかえりなさい。」
「えぇ、お疲れさま。準備はどう?」
「はい。第1小隊の復隊可能な者は全員出動準備完了しております。」
「了解。司令部に行くので、指示があるまで待機しておいて。」
「了解しました。」
復隊した沙月は、小隊に顔を出した後司令部へ出頭した。
「失礼します。卯花三尉入ります。」
「お〜、卯花来たな……、相楽君の行方は分かったぞ〜。」
「早いですね〜。さすが自衛隊です。」
「いや、情報部が情報を持っていてね、ちょっと脅したら出るわ出るわ……あいつらあとで全員締めたいくらいだよ。」
「………締める時に是非呼んでください。死なない程度に……いや、一度死んどいた方が良いですね。」
「そうか……相楽君を助けた後でゆっくり話そうか。」
「とりあえず悠一さんは何処にいますか?」
「今は、横浜にいるな、羽田からも近いから飛行機での移動や船で移動も行けるな〜。」
「動いてもいいんですか?」
「警察や県から要請来てないからまだだな。」
「外務省からは何も無いのですか?」
「外務省は、今の所静観しているな…情報は上(防衛省)から外務省や内閣府に届いているはずなんだが……。」
「来週の打ち合わせの際にチクチク言っておきます。」
「お〜怖い怖い。あんまりいじめてやるなよ、文官はすぐに折れるから困るんだよな〜。」
「自衛隊式にビシビシはやらないですよ〜さすがに可哀想です。ほどほどにチクチクしておきます。」
と冗談を交わしていると、防衛省から大隊長宛に連絡が入ってきた。
「はっ!現時刻より状況を確認、遂行いたします。」
「卯花きたぞ〜、全員へ連絡、これより日本国内にて発生した海外要人1名の誘拐事件に対応するように要請があった。各員は決められた事を確実にこなしていき、任務を完遂するように、では状況を開始する。相楽悠一氏のいる県の警察へ情報連絡し、自衛隊が対応する旨を連絡。要請があった県にも共有を忘れるな。」
「「「「「了解。」」」」」
「卯花は、突入班の指揮を頼むわ。使える者なら他の小隊から引っ張って来てもいいから、今回は出し惜しみは無しで行くぞ。」
「了解しました。」
「中隊長は連絡要員連れて、県や県警に道路封鎖や周辺エリアの情報統制をするように、指示出してこい。」
「「「了解しました。」」」
「第2小隊以下は現場指揮所に入り、以後は卯花の指示に従うように。」
「「「「「了解しました。」」」」」
司令部から隊舎へ戻った沙月は、すぐに隊員や他の小隊長に指示をだす。
「全小隊対人戦闘装備にて、出動します。装備を整えたら速やかに乗車、移動を開始します。」
「「「「「了解。」」」」」
と返事をして、準備が出来た小隊ごとに高機動車に乗り込んでいく。
全員が準備完了した所で車列を組んで駐屯地を出ていった。
「あのさ…、俺をどうしたいわけ?そろそろ目的を教えてもらってもいいんじゃないかな?」
悠一は何処かの施設の中に車ごと入った後、車から下ろされてソファーに座らされていた。
ソファーの周りには黒のコートを羽織った男性が3人居て、悠一を監視しているようだったが、悠一が問いかけても一切喋らずにいた。
30分程経った位で周りがざわざわとし始め、部屋の出入口から茶色のスーツを着た初老の男性が入ってきた。
「サガラユウイチクンダネ?ワガクニノタメニ、ソノミヲサシダシテモラオウ。」
「えっ?いやです。どちらの国の方でしょうか?」
「〇〇ダ。オトナシクツイテクレバ、コウグウ(厚遇)ヲヤクソクシヨウ。」
「お断りします。解放してもらっても良いですか?」
「イウコトヲキカナイノデアレバ……オイヤレ。」
と何かを指示すると、悠一に黒のコートを着た男性が近づいてきて、腕を振り上げた。
(あっ…、殴られる。…………痛いなぁ歯を食いしばってなかったら、歯折れたんじゃ無いかな?口の中切れたじゃん鉄の味がするよ。)
「痛いですね。こんな事で言うことを聞かせられると思ったら、間違いですよ。」
「ホウ……。ソウカ……デハベツノシュダンニシヨウ。コノエイゾウハワカルカ?」
初老の男性が服の中から取り出したスマホ操作し、何処かの映像を見せてきた。
「映像?ライブ放送?場所はどこだ?何処かの駅前のようだけど。」
「ココハヨコハマステーションダ。イマエイゾウニウツッテイルバショニ、カヤクヲシカケテイル。ドウナルカワカルナ?」
(横浜駅……まじかよ、カヤクって火薬?爆発物を仕掛けたって事かよ……これは悠長に構えている余裕なさそうだな……沙月が来るまで待ってようかと思ったけど、これは無理そうだな……。)
「分かったよ。言う事を聞くから、爆破はやめてくれ。」
「フム、ケンメイナハンダンダ。ジュンビガデキタライドウシテモラウ、ソレマデハココニイロ。」
「分かった。」
初老の男性と黒のコートを羽織った男性1人が退室していった。悠一と黒のコートを羽織った男性2人が部屋の中に残っている。
(さてと、どうやって逃げ出そうかな?口の中の傷も治ってるから、エーテルは使えてるしな……ペンダント外してエーテルを解放してもいいけど、制御できるかな?まぁ出たとこ勝負で行きますか!)
悠一は結束バンドのようなもので拘束された両手で、セレスからもらったペンダントを外し、ソファーの上に置いた。
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