第29話 拉致されました。

悠一と沙月が市役所に到着し、車を駐車場に停めて庁舎の中に入っていく。

戸籍課に行き、戸籍謄本の写しをもらい、そのまま帰途につこうとしたが、駐車場に向かっていると、複数人の男性に囲まれた………。

「サガラユウイチダナ?コチラヘキテイタダコウ。」

黒のスーツを着た50歳代位の男性が片言の日本語で話しかけてきた。

「なんですか、あなた達は?」

「イイカラツイテコイ。」

「どこの国の人ですか?」

「ウルサイゾ、サワグトマワリニキガイヲクワエルゾ。」

「お〜怖い怖い。分かりましたよ。」

「ワカッテイナイヨウダナ。………オイ、ヤレ。」

と指示したあと、周りにいた取り巻きの一人が銃を取り出し、近くを歩いていた人に、発砲した。

乾いたパンという音をたて、歩いていた人は身体を撃たれてそのまま動かなくなった。

「イウコトヲキカナイト、マワリニシタイガフエルゾ。」

「わかった。沙月、まだだぞ。」

「はい。」

周りを見渡すと最低でも7人は不審な男性がいる。

そして、倒れた人の周りには一般の人が集まってきており、救急車を呼べとか叫んでいた。

「ツイテコイ。」と促され近くに停めてある黒いワンボックス車へ乗るように指示された。

そのまま悠一が乗り込むと車の扉が閉められ、沙月は他の男性阻まれて、そのまま拘束され後ろ手に結束バンドのような物で縛られて、その場で解放された。

「沙月!」

「オトナシクシロ!!」

と立ち上がりそうになった悠一を静止しながら、手を抑えられ結束バンドのような物でそのまま両手を拘束され座らされる。そして、悠一は同乗してきた男性に銃を向けられ、動かないように指示され、車が動き出した。


動き出した車を眺めることしかできなかった沙月は、車から動きが見えなくなった所で、身体強化をして、手の拘束を引きちぎり、倒れていた人の下へ向かった。

倒れていたのは80歳代の女性で腹を撃たれており、出血していた。

沙月は看護資格を持つ自衛隊員と周りに伝えながら、女性の応急処置に取り掛かる。

(脈は……大丈夫。けど意識は無い……出血自体は少量ですね。貫通してないのが気になりますが、今は止血しかできないですね。速く救急車が到着してくれれば何とかなりそうですね。………悠一さんを追いかけたいけどこのままに出来ないし、応援を呼ぶにも大事おおごとになりましたね……。)


悠一は車で移動しつつ車の中の状況を確認していた。

(車の中には俺以外に5人、全員何らかの銃器を持っていると思ったほうがいいよな?なんで俺を拉致したんだ?沙月は大丈夫かな?撃たれた人も気になるし、これ……暴れたら周りの人に危害を加えるたぐいの奴らだよな〜。)

「おい。俺をどうするつもりだ?」

「ウルサイゾ、ダマッテイロ。」

(あ〜はいはい。黙っていろと……さて、移動しているけどここ何処だ?地理が全くわかんないや……。)


その頃、沙月は救急車が到着し、警察も着いて、事情聴取を受けていた。

「では、卯花さんはたまたま来ていた外交官が拉致されたというのですか?」

「はい。外務省に確認を取ってもらっても大丈夫です。フローティア王国の外交担当をしている、相楽悠一で確認していただければ。」

「その相楽さんを拉致するために何も関係の無い女性が撃たれたと?」

「そうですね。暴れると困るからと周りの人が人質にされて、自分たちはやるぞと言うのを見せるために、発砲しましたね。」

「………そうですか。にわかに信じられませんが、実際に発砲事件が発生しておりますし、それで人が一人拉致されたということですか…。」

「その通りです。」

「わかりましたが、今周辺のカメラを確認させてますので、そのあたりも証明出来るかと思いますし、行き先や不審車の行方もわかると思いますが……銃器を持っているんですよね?」

「そうですね。確認出来ているのは9ミリ口径の拳銃と同口径の短機関銃ですね。」

「はっ?短機関銃ってマシンガンですか?」

「そうですね。M◯5系の短床タイプですね。」

「エッ…MP◯系ですか…、警察で対応できない気が……。」

「そんなの(◯P5)持ってるのであれば、自衛隊も動く案件ですね。要請を出していただければ、すぐにでも動けますよ。」

「それは私の方からは出せませんので、本部へ確認します。」

「早期の要請をお願いします。」

「わかりました。」

事情聴取を終え、沙月は結へ連絡する。

「結さん、お疲れ様です。沙月です。悠一さんが攫われました。」

「はい?…………沙月、どうすればいい?」

「話が早くて助かります。子供達を迎えに行って、センターゲートに居てもらえるとありがたいです。少しの間私も復隊して対応しますので、連絡取れなくなるかもです。」

「オッケー。分かったわ……沙月、悠一を頼むわね。」

「多分大丈夫ですよ。悠一さん死なないですから、もしかすると一人で何とかするかもしれませんが、被害が大きくなりそうなので、早めに何とかします。それじゃあ。」

と通話を終え、次に所属している駐屯地司令部へ連絡し、特戦群大隊長である立花へ状況を伝える。

「お疲れ様です。卯花です。」

「この連絡方法を使うということは何かあったのか?」

「はい。相楽悠一さんが拉致されました。」

「………犯人に見当はついているのか?」

「おそらく隣国の方ですね。ただ装備が9ミリ径拳銃とサブマシンガンでしたので、はっきりとはいえないですが……。」

「まぁ、拉致されたのは間違いない。情報部と連携して対応を急がせよう。卯花、現時刻をもって復隊し本隊に合流しろ。」

「了解しました。」

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