第22話 緊急

沙月は緊急の連絡が入り、急ぎ復隊し、大隊長室へ足を運んでいた。

「失礼いたします。卯花三尉入ります。」

と中に入ると、立花大隊長以外に中隊長が3名が勢揃い、小隊長も数名おり、大隊長室は人で一杯となっていた。

「来たか…、これで関係している小隊長は全員、中隊長も全員集まったな。いま来た卯花は何事?と思っているだろうが黙って聞いてくれ……頼むわ。」

と話を振られた小隊長の一人が数枚の紙を取り出し、全員に聞こえる声で報告を始めた。

「はっ!では第4小隊より報告いたします。昨日ヒトハチマルマル(18時)に富士演習場近辺にて魔物が出たと近隣住民より110番通報があり、警察及び消防にて検索、検索中フタマルフタマル(20時20分)頃に富士演習場へ警察より連絡その後本隊含む特戦群第1から第7小隊までが検索に参加し、本日マルフタサンゴー(2時35分)に熊型魔物2体を富士演習場内にて発見、包囲戦を開始、マルフタヨンマル(2時40分)に銃器の使用許可受諾し、殲滅戦を開始マルフタヨンニー(2時42分)に対象魔物2体を駆除完了。マルフタゴーマル(2時50分)に戦闘終了を報告しました。ですが、その後ゼロヨンヒトフタ(4時12分)にさらに熊型魔物1体が発見され、先の魔物2体の搬出を担当しておりました研究班に襲いかかり、研究班2名が死亡7名が重軽傷、他に周辺警戒で残っていた第1と第2小隊が対応しましたが18名のうちが1名が重体17名が重軽傷となりました。その後魔物1体は先の魔物の死骸を食べている所を第3から第7小隊にて包囲殲滅戦を行いましたが、20式小銃が効果無しの為、LAM(110ミリ個人携帯対戦車弾)を使用しゼロヨンゴーマル(4時50分)駆除、ゼロヨンゴーゴー(4時55分)に戦闘終了となります。

なお、復隊可能な者は最短で一週間程が2名、復隊不可の者が10名程出ております。私からは以上です。」

「そうか………報告ご苦労。特戦群始まって以来の負傷者の多さだが、これも任務によるものであるが、こんな強力な魔物がいるとは思わなかった。すまん。隊員を危険な目に合わせたのは大隊長である俺の責任だ。」

と立花が頭を下げた。

それを見た中隊長や小隊長陣は動揺を隠せない様子だ。

「大隊長、一応今後策ですが、欠員の出た第1と第2小隊はどうなさいますか?」と中隊長が意見を述べる。

「それだが……卯花小隊長。」

「はい。」

「卯花小隊長、フローティア王国に行ってくれないかな?」

「はっ?どういうことでしょうか?」

「卯花……怒気を抑えてくれないかな?怒るのは重々わかるが、小銃が効かない魔物に対しての対応をフローティア王国へ確認してほしいんだが……行ってくれるか?」

「そう言うことならわかりました。」

「よし、その間は変則的だが第1と第2小隊は合流とし、分隊はそのままの運用として、第2小隊長が面倒見るということで。卯花わかった?」

「了解しました。」

「ちなみにだが卯花?小銃効かない相手にどう対応する?」

「手に魔法を顕現させて手刀ですかね?」

「ちなみにそれ(手刀)鉄板とかは何ミリまでいける?」

「鉄なら何ミリでも貫通出来ますが複合装甲なら300ミリ位ですかね?」

「卯花が最終兵器みたいな感じに見えてきた……、やばかったら呼び戻すけどそれでもいい?」

「わかりました。それでお願いします。」

「よし、今はこれで解散とする。わかれ!」

「「「「「はっ。」」」」」

(なんかうちの隊員怪我してるのに離れろとか流石に納得は出来ませんが…、小銃の効かない魔物ですか…確かに気にはなりますが、結さんにも聞いてみよう。とりあえずは隊員は何処に入院してるのかな?)

沙月は小隊の詰所へ行き、昨日非番の分隊員がいるのを見つけ、怪我をした隊員が何処に入院しているのかを確認する。

(自衛隊病院に全員受け入れてたんですね。なら行きましょうか。)

残っている小隊の分隊員に今後の運用を説明し、今後の指示は第2小隊長に仰ぐ様に指示を出し、沙月は隊舎を後にし自衛隊病院へ向かおうとした所、立花大隊長に呼び止められた。

「卯花、病院に行くのか?」

「はい。そのとおりです。」

「そうか……卯花すまんが私服と私用車で向かってもらってもいいか?マスコミが嗅ぎつけて病院の周りが厄介な事になってる。」

「まぁ死人が出てますからそうなりますよね。了解しました。」

沙月は一度私服に着替えに自宅へ帰り、病院へ向かう。

大隊長の言った通り、病院の周りをマスコミが囲んでおり、敷地から出てくる人に声をかけたりしていっていた。

車で中に入る者には声をかけないようで、沙月は何事も無く病院へ入っていった。


「失礼します。」

「あっ隊長!お疲れ様です。」

「あら、元気そうね?」

「お疲れ様です、隊長。」

「「お疲れ様です。」」

病室は4人部屋となっており、そこには第1小隊の隊員が4名入院していた。

「怪我の具合はどう?」

「俺らは大丈夫ですよ。あと数日で全員退院出来ますよ。ただ、あいつだけは………。」

「そう……後で見てくるわ、あなた達は復隊するまではのんびりしなさい。」

「「「「はい。」」」」

「あっあと果物買ってきたから、全部食べといてね。」

「「「「うっす。」」」」

「じゃあね、お大事に。」

病室を後にしもう一つの病室にも顔を出しそこに入院している隊員達にも声を掛けてから、病院内の集中治療室を訪れる。

ここでは町田一曹が眠っていた。対応した中で唯一重体となっており意識不明で今も眠っていた。

「町田君……ありがとうね、他の子達庇ってくれて。」

「すいません……自衛隊の方でしょうか?」

「はい。町田一曹の所属しております隊の責任者をしております卯花と申します。」

「町田正人の母でございます。」

「お母様でしたか、この度は申し訳ありません、町田君に怪我をさせてしまいました。」

「いえ、正人もこの通り無事でしたので、自衛隊に所属していればこういうこともあると本人から聞いております。」

「そうですか……。町田君は優秀で仲間思いの良い隊員です。今回の怪我も詳細はお伝えできませんが、同僚を守った末の負傷になります。」

「そうなんですね………。卯花さん教えていただきありがとうございます。」

その後、すぐに沙月は退室し、そのまま病院を後にし、結と悠一に会うためセンターゲートに向かった。








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