第16話 やっぱり……

フローティア王国から結と沙月が戻ってきて、まず行動したのは日本政府への悠一を日本国籍からフローティア王国籍に移そうと外務省や内閣府の事務官などとの調整を依頼したが……、

「異世界の国への国籍の変更ですか?

そんな前例の無い事は私では決めかねますので、時間を頂きたい。審議会を開き決めていただかないと判断できません。」の一点張りで

その審議会を開催するように依頼をすれば、「会期中に審査する。」といわれ、最低でも複数回の審議会を持って決めることとなるようで、早くも数ヶ月は悠一の国籍変更に費やされることとなった。

次に悠一を日本国内へ連れてくるための根回しを始めると、外務省や居住地の役場と数年間行方知れずだった者が見つかった場合の手続きを順番にして行ったが、ここでも認定と確認での本人を聴取するとなったが、今度は内閣府から悠一がいるとわかれば他国からのテロの危険があり賛同出来ないとの通達が来て、役所お決まりの聴取出来ないのであれば、認定はしないとなり、ここでも行き詰まった。

「結さ〜ん。役所の人殴りたくなりませんか?」

「沙月の気持はよく分かるわ。けど、役所ってこんなものよ。決まり事は自分たちの決まったルールで行わないと気がすまないのよ……。そういう沙月のいる自衛隊にも決め事がいっぱいあるじゃない。」

「うぅ〜そうでした。事務仕事面倒です。」

「まぁ〜色々とフラストレーションは溜まるわね。このまま行っちゃうとほんとにセレスが懐妊した上に産んでもまだ悠一が帰れないとかありえそうね。」

「それは絶対嫌です〜。美月もパパがいないとへそ曲げてますし、半年も会わないとまた知らないおじさんから再スタートになりそうで怖いんですが〜。」

「それは心もね。パパがいないしセレスもこないしと寂しがっているのよね……、このまま行くとなしくずし的に色々とグダグダになりそうだし……。」

「結さ〜ん、ネガティブに考えても仕方ないですよ〜せめて悠一さんにセンターゲートの中とかに来てもらうくらいはできないですか?」

「あ〜それね、悠一を…………イケるかも……。」

「本当ですか?」

「沙月……、バレなきゃ大丈夫と思わない?」

「…………大丈夫と思いたいですが、言ってなんですがバレたら他の方にご迷惑とかかかるのなら駄目と言いたいですね。」

「大丈夫、所長とか共犯に立候補してくれるわよ。けどやるのなら……所長たちは知らぬ存ぜぬを通してもらえばいいわよ。それで悪いのは私になるだけよ。」

「結さん、そこは私も一緒です。」

「駄目よ沙月……、あなたには心や美月をお願いしないといけないしね。」

「結さんズルいです。その言い方されると答えは一つしか無いのにほんとにズルいです。」

「悪いわね沙月……。悠一をセンターゲートに呼ぶ事にしても呼ばないにしても、とりあえずは所長に相談してみるわ。」

「わかりました。私も一度何かできないか考えてみます。大隊長とかなら何かいいアイデアとか持ってるかもしれませんしね。」

「沙月?さらっと共犯者増やそうとしないでね?」

「結さん、気にすると負けですよ。」

「なんでよ!?」



「で……卯花はなんでそれを俺に言ったのかなぁ?聞いた時点で私は共犯になるよね?ねぇ?」

沙月は翌日から原隊に復帰し、立花大隊長の所に大事な相談があると言い大隊長室へ来ていて、立花は沙月が休みの間に悠一の日本帰還について聞いていたので、卯花もとうとう除隊かぁくらいで思っていたが、話された内容がぶっ飛び話で聞いた時点で知ってるだけで色々とヤバい内容をサラッと言われ、頭を抱えていた。

「いや、大隊長?バレなきゃ何ともないので、バレないように知恵を貸してください。そういうのは私より得意ですねよね?」

「そうですね〜バレなきゃ…って、バレたら色々と終わりますよね!!」

「では聞かなかったことにしておいてください。あと、その日から有給休暇の消化でしばらくお休みしますので、それも御承認お願いします。」

「今さら聞けなかった事には出来ないですから、少し協力はしましょう。センターゲートの警備隊の人員も抱き込んで、特戦の人員も勤務させて、襲撃のおそれありとかで適当に増員理由作ってしまえばいい。本当に襲撃されそうだし、いいでしょう?」

「やっぱり頼りになる上官がいると色々と助かります。ありがとうございます。」

「あと、卯花?もう少し穏便な事の運び方も考えてくれるとありがたいかな?」

「それは事と次第によりますよ〜悠一さんが関係していきなりこうってなると、止める自信が無いですが〜。」

「いや、止めてくださいね!?」



結はセンターゲートの松岡所長に話をおこなっていた。

「所長申し訳ありませんが、悠一さんをここで預かっていただきたいのですが……」

「相楽君は出てきたのだね…、そうか……。でもなぜ家に帰らないのかね?」

「それが………」と結は外務省や内閣府、役所等とのやり取りを説明する。

「相楽君も大変だな。それでコソッとセンターゲートに連れて来るとなったんだね。………それなら外務省や役所の担当をここに連れてきて、面談なり何でもすればいいよ。色々と初の事があるのならセンターゲートとしても堂々とこれやりましたと成果として報告出来るからね。」

「ありがとうございます。松岡所長………。」

結は泣きそうなのを我慢しながら、頭を下げながら松岡所長に感謝した。


その日の夜に結と沙月はお互いの結果を話しながら、何故こんなにスムーズに事が進むのか?を疑問に思っていた。

「けど、スムーズに進みすぎて、何かを見落としてる気がするのは気のせいかしら?」

「ありますよね〜そういう時、大概は念のための確認程度で済むのですが〜たしかに怖いですよね〜。」

「怖いけど、なにもないわよね?」

「「ハハハッ………。」」





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