第12話 やり直しを求めます。

悠一が謁見の間に入って、まず目に入ったのは3段ほど高い所にある玉座に座っている国王様に王妃様。そして部屋の真ん中にセレスと結が居て、沙月がいる。結と目があい、沙月とも………



沙月が飛んできて悠一に抱き着いて……

悲しい事故だった。


抱き着かれた悠一は沙月を受け止めれず、沙月とともに後ろに吹き飛び、近くの壁にぶつかり止まった。

周囲は静まり返り、何が起こったかわからないといった空気になっていた。


まず声が上がったのは、ぶつかった沙月で、

「悠一さん。悠一さんがいる。」と声を上げたが、沙月の顔が真っ赤に染まっており、それを見たサートゥルヌス、オプスルア、結、セレスはドン引きしていた。

美月と心はすぐにサートゥルヌスとオプスルアが目を隠すようにして、母親の惨劇を見せないようにしていた。


「沙月!あなた血が出てるわよ!」

「えっ?私、怪我なんて………あっ………」沙月が下を見ると悠一が倒れており、

悠一は沙月がぶつかった腹のあたりがばっくりと裂け血を流して倒れていた。

すぐにセレスと結が悠一の所に走っていき、意識の確認や身体の状態を見ていったが、意識は無く、腹部の損傷具合からしたら普通は即死と言われるレベルであったが、少しづつではあるが、悠一の身体が元に戻っている。

あと数分もすれば元に戻りそうだが、その普通ではない状況にセレスも結もどうしたらいいか分からず、見ているだけになったが、それでも、悠一が帰ってきて顔が見えたと言う喜びが顔に出そうだが、この惨劇の中、血だらけの沙月が放心状態で自分達も手は血まみれといった状況で、どういう顔をして良いのか分からないといった感じになっており、サートゥルヌスもオプスルアも孫にこの惨状を見せてはいけないと、美月と心の目を手で覆っており、手が出せない。

謁見の間の外にいたマールスが音に気づいて部屋に入ってきてみると、沙月が血まみれなのにびっくりはしていたが、悠一も倒れており、結とセレスもその場を動こうとしていない為、まずは動きそうなセレスに声をかけた。

「姫様、動けますかな?」

「マールス?どうしたらいいと思う?」とセレスが今にも泣きそうな声で助けを求めてきた。

「まず、説明してください。」とその場に近づいて行き、セレスから悲しい事故の顛末を聞き出した。

それを聞いた沙月も自分がした事をようやく理解したようで横で何も言わずに涙を流していた。

それを見た結が何も言わずに沙月を抱きしめ、泣いた顔を見ないようにしていた。

「とりあえず、状況は理解しました。とりあえず姫様とユイとサツキはお風呂にでも入ってきてください。その間にユウイチはこちらでユウイチが泊まっている部屋に運んでおきますので、落ち着いたら私に教えてください。国王様に王妃様は………子守りをお願いしてもよろしいでしょうか?この部屋は侍従長やメイド長と何とかしておきますので……。」

と言うとセレスは無言で頷き、沙月と結を浴場に連れて行った。

サートゥルヌスとオプスルアは「分かった。あとは頼むぞ」と言い残し、自分たちの私室へ美月と心を連れて行った。

悠一は数分もしないうちに身体は元に戻ったが、付近に飛び散っている血までは戻っておらず、意識も戻らずにいたが、すぐに悠一の部屋のメイドであるアメルダを呼び、部屋に連れ帰ってもらい、従士らに壊れた壁や扉をできるだけ修繕してもらい、血を魔法できれいにしてもらい、跡は残っているが、何とか出来たと判断できる程度まで部屋を元に戻せた。


後は沙月と結、セレスだ。特に沙月は自分が起こした事故なだけにショックは大きいだろう。危うく最愛の者を殺しかけたというのは、自分でもこたえるものがあると思うほどに。

と言っても落ち着いたら教えて下さいと姫様に言った領分もあり、部屋の片付けも落ち着いたのでマールス自身も休憩を取ることにした。

他にやる事や確認することもあるが心労というか、疲れたというのが、本音だ。


30分位して、メイド長からサートゥルヌスが呼んでいるとマールスが休んでいた騎士団長室にやってきたので、メイド長と共にサートゥルヌス達がいる部屋を訪れると、そこは国王の私室で、ベッドには美月と心が寝ており、横にはオプスルアが添い寝をしている状態で、サートゥルヌスは応接セットに座っていた。

マールスはサートゥルヌスのそばに近づき、

「お疲れ様です。国王様。お呼びと聞きましたが………。」

「おお、マールス……子供は元気だなぁ久々に疲れた。ユウイチはどうだ?」

「身体は元に戻りましたが、外に出た血は戻らないようで、目は覚ましてないようです。」

「そうか、サツキ達は?」

「そちらもまだ音沙汰なしです。」

「そうか……のうマールスよ、………何でもない。」

「国王様………心労お察し致します。また何かありましたら、お知らせに上がりますので、少しお休みください。」

「そうだな……そうさせてもらうよ。」


マールスは国王の私室を後にすると、そのままセレスの私室を訪ねた。そうすると目を腫らしたセレスが出てきたが中にはユイとサツキもいるようで、部屋の中は見せてはくれないようだ。

「姫様、ユウイチは身体は元に戻りました。いまは眠っております。サツキやユイたちはいかがでしょうか?」

「サツキの精神が不安定で、さっきユイが薬を飲ませて眠らせてくれたわ。」

「そうですか、では落ち着いたらまたお話しをしましょう。あと子供たちは今国王様の私室で遊んで疲れて、お眠りになられてます。」

「うん……分かった。サツキが目を覚ましたら、ちゃんとお話しして落ち着いたら教えるね。」

「わかりました。」

セレスの部屋を後にし、最後に悠一の部屋を訪ねた。アメルダが対応の為に出てきたが、悠一は目を覚ましているみたいで、面会も問題無かったようで、そのまま入室すると、悠一は食事をしていた。

「ユウイチ……無事そうだな……?」

悠一は声をかけて来たマールスに気が付かなかった様子で食事を掻き込んでいたが、手をマールスに上げて、口の中の食べ物を飲み込んでようやく喋りだした。

「いや〜マールスさん。気が付かなくてごめんなさい。血が足りなくて慌てて性のつくものを用意してもらって食べてました。」

「どうだ?身体の方は?」

「血が足らなすぎで常に頭痛はしてますが、食事を取ればそれが急速に改善しているので、何とかなりそうですね。」

「そうか……ユウイチは倒れたときのことは覚えているのか?」

「いえ!全くと言いたいんですが、さっきアメルダさんから沙月とぶつかってこうなったと聞きました。と言うことで、再会のやり直しを求めます。」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る