第9話 悠一の………

オプスルア王妃が城を出発し、30分程で神殿に到着した。但しお付きもつけずに一人で。

神殿に関しては秘奥の地とされ、侍従長や騎士団長でも神殿の入口までしか入れないとされており、今回は王妃が一人で行くと言うワガママを国王が許可したため、城から一人で出て神殿に来たということになっている。なっているだけで、影から護衛が入口までくっついて来てはいたのだが、一人で来たことになっていた。

オプスルアはそのまま奥へ進み神殿の中へ入り、悠一が封印されている場所にやってきて、そのまま結界に触れてまるで封印を透過するかのごとく、あっさりと中に入って行った。

中に入ると悠一は日本で言う座禅を組み岩に座っていた………全裸で。

オプスルアはそのまま悠一の前に座り、約3年ぶりに会う悠一を見つめ、かなり痩せてはいるが生きていることに感心し、悠一がいつ気がつくのか試してみたいという茶目っ気が出てきて、そのまま座り込み、悠一が気づくまで静かにする事に決めた。

10分が経ち……

20分が経ち……

30分が立つ前にオプスルアは行動を起こした。何が嬉しくて旦那以外のイチモツを見ているのか?こいつ寝てない?と思うほど微動だにしないし!!

声をかけることにした。

「コホン……ユウイチさん。」

「………………?」

「お久しぶりです。覚えてますか?」

「………………??」

悠一は目を開け、前にオプスルアがいることを視認したが……幻覚と思ったようで首を傾げながらもう一度目を閉じた………。

「えっ?見えてますよね?今見ましたよね?ユウイチさん。こっち見てください。」

「………………!?おびざじぶりでず。#$%*ざま」

3年振りの発声で声がおかしくなっていて何言ってるのかわからないユウイチを見て、オプスルアは腹を抱えて笑い転げた。

「ハハハッ♪声出すの久々だと思いますので、ゆっくりでいいので、お水でも飲んでください。」

「………ごごびじゅにゃいでじゅよ。」

「………………はい?水がない?」

確かに周りを見渡しても何も無い……。

食べ物、飲み物、排泄する場所、寝床全てが無い。

「たしかにないですね……って、どうやって生きていたのですか?っと聞く前に、水でしたね……。はい、何も無いのでそのまま飲んでください。」

と言うとオプスルアの手のひらに魔法で水を顕現させた。それを見てユウイチは、飛びつくように水を飲み始めるが、いきなりガブ飲みしたせいでむせてしまい、オプスルアに空いている手で背中を擦ってもらいながら、ゆっくり水を飲んでいた。

「王妃様ありがとうございます。」

「これで落ち着いて話ができるかしら?まずは食事はどうしてたの?」

「取らないでも大丈夫になりました。」

「??たしか封印する際に食料とかなにも無かったわよね?食べなくてもよくなったってこと?」

「はい。何か深く瞑想すると身体に、多分エーテルが入ってきて、生きていくエネルギーは確保出来てました。」

「ユウイチさん。貴方の身体は興味深い事になってるわね。エーテルだけで生きていけるなんて、本当に仙人にでもなったのかしら?」

「仙人ですか?言われてみれば日本でも仙人は霞を食べ生きると言う言葉がありますから、間違いでもないのかな?っていうか、王妃様はなぜここに?」

「あらお義母様かあさまって呼んでも良いのよ?」

「まだ早くないですか?」

「それはそれとしてまたお話しましょう。今回来たのは、そろそろ出てきなさい。もう3年経つわよ。」

「そっちの話ですか……。そうですか3年ですか……。」

「ユウイチさん。あなたのした事は取り返しのつかない事なのは理解しています。ただ、もう十分でしょう。セレス達も待っているわよ。それにこれを……。」

オプスルアはユウイチにセレスが作った封印の結晶を渡した。

「それはね、セレスが作ったのよ。あなたの為のエーテルを封印する結晶よ。」

ユウイチは受け取った結晶をまじまじと見ながら

「セレスがですか……俺は、出てもいいんでしょうか?取り返しのつかないことをして、俺は出てもいいですか?」

「いいんじゃないかな?」

とオプスルアは軽く答えると悠一はえっ!?っと声には出さないが顔が驚いた顔をしていた。

「ユウイチさんは、そもそもここに入ることもしなくても良かったのよ。あなたが制御出来なかったエーテルだって、元はといえばそういうふうにさせられたと思えばいいのよ。貴方は悪くない。けどこれは国を担う者としては失格の答えね。けど、1人の人…、オプスルアとしては出てもいいと思いますよ。」

「王妃様、ありがとうございます。」

「とりあえず、これからの事はどうするの?」

「王妃様。……すいません。いきなり過ぎて考えがまとまらないです。少し………1日考えさせてください。俺としても出てセレスたちに会いたい気持ちはあるんです。けど、自分が起こした事への整理がつかないっていうのが本音です。セレスが作ってくれたこの石についてもすごく嬉しいんです。でも、自分はどうするべきかを今一度考えたいんです。王妃様、わがままで申し訳ありませんが、少し考えさせてください。」と悠一はオプスルアに姿勢を正し、頭を下げた。

「そうね。急すぎましたね。………分かりました。また明日来ます。それまでに考えておいてください。」

とオプスルアは立ち上がり、結界を通り抜けて外に出ていった。

オプスルアはそのまま乗ってきた車に乗り込み城に向けて戻っていき、城に戻ると国王の私室へ向かい、メイドに入室の許可をもらい、国王と話し始めた。

「あなた、戻りました。」

「ルア、おかえり。ユウイチは元気だったかな?」

「元気にしてましたよ……。人間辞めてましたが。」

「はい?」

「ユウイチさんは、食事を必要とせずエーテルを直接身体を動かすエネルギーに変換出来るようになってました。」

「…………まことか?どういう環境で出来るのか気になるが、奴は出てくるのか?」

「急に言われても整理がつかないから1日考えさせてほしいだそうです。」

「たしかに奴の言う通りだな……。セレスにはどう話す?」

「セレスは………明日以降に決まったことを伝えればいいと思いますよ……。」

「それでよいのかのう?」

「いいんです。あんな神具並みの物をいきなり作ってくるなんて、私もかなり驚かされておりますし、謹慎と伝えでおりますので、大丈夫でしょう。」

「この結晶の残りはどう取り扱う?宝物殿に入れておくかの?これらも宝具として取り扱う物だろうな。」

「あなた、取り扱うのが苦労させられる物を何でも宝物殿に置かないでちょうだい。ほんとに従者が入れなくなってしまいますので………。1つは魔導士団に見せてみましょう、何か使えるヒントを出してくれるかもしれませんよ。」

「それでもいいが、他の結晶はどうする?」

「残りは………やはり宝物殿に入れておきましょうか。」

「そうじゃな。何か今日1日でえらく老けた気がするのじゃが………。孫に会いたいのだが……。」

「ミツキとジンはまた来る日を聞いておきましょう。私も会いたいわ。」

と、沙月と結への親書を送る為に孫に会いたいと言う一文を添えて作成していった国王夫婦であった。







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