第8話 セレスの悲願
沙月や結が犬型の魔物の件で右往左往してから1週間程経ったある日、フローティア王国では、セレスが自身で作成した魔法具を試していた。
「マールス、どう?出来てそう?」
「姫様……これは私に聞かれても専門外ですよ。」
「けど、エーテルが出ているかを確認するくらいはできるよね?どう出てる?」
「おそらく出ていませんね。空気中にあるエーテルが邪魔をして分かりづらいですが、姫様のエーテルは出ていないと思いますよ。」
「よし。ようやく出来たかな?」
「おめでとうございます。でいいんですかね?」
「おめでとうでいいんです〜。これでユウイチと会えるかもしれないのに……ちょっとママの所に行ってくる。」
とセレスは城の中にある作業部屋から移動し、王族の私室エリアに行きオプスルア王妃の部屋にやってきていた。
入る前にドアをノックし、入室の許可を中にいるメイドにもらい、静かに入室していった。
「失礼いたします。お母様。」
「…………セレス?何か悪いものでも食べましたか?」
「………………お母様?」
「こんなに静かに、淑女のような振る舞いをするなんて、ホントにセレスかしら?」
「ちょっとママ!ひどくありませんか?」
「そう思うのなら日頃から淑女たるようにしてくださいね。……で、何かお願い事かしら?」
「うん…、じゃなかった。はい。お母様にお願いと確認していただきたいものがあります。」
「お願い……ねぇ。聞いてからにしましょう。お願いとは何かしら?」
「ユウイチの封印を解除していただきたいです。」
「それはユウイチ君次第ですね。あと確認してもらいたいものは?」
「これです。」
とセレスはネックレスをオプスルアに差し出した。
オプスルアは手に取り、ネックレスをよく見ると、ペンダントトップに直径3センチはありそうな赤い宝石がついており、宝石には何かの文字が彫り込まれていた。
「セレスこれは?………この文字どこかで見たことあるわね。」
「それはエーテルの放出を抑制というか封印する魔道具です。」
「これは……セレスが作ったの?」
「はい。ユウイチ用に大きなエーテル結晶で作りました。」
「セレス……この魔道具の作り方を知っているのは他にいるのかしら?」
「マールスには見せたけど、作り方は知りません。」
「そう………。セレス、あなたすごい発明をした意識はあるのかしら?」
「はぇ?」
「呆けないで聞きなさい。これは魔法が使える者にとっては、最大の脅威になり得るものよ。体につけると魔法が顕現出来無くなるなんて、大変な魔道具です。」
「……はい。」
「これは間違いなくこの魔道具の製造方法は外に出せません。セレス、この中の魔法文字を見えなくできるかしら?」
「出来なくはないけど、そのエーテル結晶には無理です。新しく作る時には隠すための文字も組み込めば何とかできると思います。」
「あと、この大きさのエーテル結晶どこで入手したのかしら?この大きさならなかなかの金額だと思うけど?」
「それは、私の貯めていたお小遣い数年分を出して買いました。」
「そう……ならいいのだけれど、存在するのはこれ一つだけ?」
「う…、はい。出来たのはこちらの一つだけになります。」
「出来たのは?未完成の物はあるの?」
「いえ、失敗作というか、試作で小さいエーテル結晶が何個かあります。」
「その結晶も同じ効果があるのかしら?」
「はい。けど、私のエーテル量でなら、何とか封印出来る結晶になって、ユウイチのエーテル量には恐らく足りないので、その大きさにしました。」
「そうですか……、セレス?これもだけど、一度全て私が預かります。」
「えっ!?そんなママ、なんで!!」
「セレス!……この技術は国を滅ぼす可能性のあるものよ……。そこまで考えて発言をしているのよ。そこをまず理解しなさい。」
「!?………はい。ふ〜。……………少し落ち着かせてから残りの結晶を持ってきます。」
「そうね……。少し落ち着いて話をしましょう。セレス、決してユウイチやセレスが嫌いでこんなこと言っているのではないの、この国の王配であるからこそなの。私情でこの国を滅ぼす事なんて出来ないのよ。そこは理解してね。」
「うん。わかってます……、じゃあ部屋に戻って残りを取ってきます……。」
とセレスが肩を落とすように部屋を出ていき、残ったのはオプスルアとメイドだけであったが、すぐにメイドに
事の重要性を理解しているメイドはすぐに国王を連れてきた。
「王妃よ。火急の用件とは何事だ?」
「あなた。セレスはやはり天才ですね……。これを作って持ってきました。」
とオプスルアはサートゥルヌスにセレスが作った結晶を手渡した。
「なんだこれは?」
「あなた……それを持ったまま、魔法を顕現してみてくださいまし。」
「分かった。………?どういうことだ?顕現出来ぬ………。ルアよ……。これは発掘した遺物とかではないのか?これをセレスが作ったのか?」
「あなた……間違いなくセレスが作った物よ。遺物だとどれだけ良かったか………。」
サートゥルヌスはめまいを起こしそうになりながら、
「そうか…、セレスは?」
「今、それの試作で作った結晶を取りに戻ってるわ。」
「そうか……では来るのを待つかな。」
数分するとセレスが戻ってきて、中に入ると国王も居ることに少し驚いていたが、すぐにオプスルアの下に歩いていき、袋に入れて持ってきた残りの結晶を手渡した。
「ママ、作ったのはこれで全部になります。」
セレスが手渡したのは合計で4個の結晶で、結晶の表面や内部に模様ののように文字が書いてあった。
「セレス、色々試行錯誤してたみたいね。」
「うん、最初は昔の遺物を参考に作ったけど、思ったような効果は出なくて、エーテルを抑えるだけならすぐできたけど、封印となると少し改良して、新しく作り直した方が効率が良くしてなったけど、使用する人のエーテル量により使い分けないと、強力過ぎる結晶を長時間使えばエーテルが欠乏して生きていけなくなる可能性があるもので……。」
「そうなのね……。セレス………ユウイチに今すぐ会えると言ったら?」
「会いたいよ……でも、会うのなら、サツキやユイもミツキもジンも一緒にユウイチに会いたい。」
「そう……では、私がユウイチと会ってきます。」
「ママが?」
「ええ、そうよ。」
「どうやって入れるの?」
「ヒントをいえば、封印をしたのは、私とユウイチだからかな?それ以外は秘密。
あなた、少し出かけてきます。」
「ああ、わかった。気をつけてな。」
「ええ、行ってきます。セレスは部屋で少しばかり謹慎していなさい。」
とサートゥルヌスとセレスに伝え、オプスルアは自室を出て、ユウイチが封印されている神殿へ向かった。
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