第3話 フローティアでの……
「ユウイチ。おはよう。」
セレスは悠一が封印されている洞窟の前で、返事の返ってこない挨拶を一人でしていた。
セレスはここに悠一が封印されてから、フローティアにいる時は必ず朝に来て挨拶をして、朝食を食べながら来れなかった日の事や前の日に起きた事を話したりしていた。日本に行った時の次の日は朝以外でも、この場所に来て必ず悠一の子供の美月と
「じゃあ、ユウイチ……お仕事に行ってくるね。」
とセレスが洞窟のある山を降りていった。
(毎日、ありがとうなセレス。)
封印されている相楽悠一はセレスに感謝していた。
悠一自身が持っているエーテルを制御出来ずに暴走させて、大規模災害を起こしてから自身で封印してから数年が経ち、自身で通常生活に困らない位の制御は出来るようになっていた。
だが自身の持つエーテルの全体的な制御となると、未だに制御が出来ずにいた。
ここ数ヶ月で何とか自身の持つエーテルの総量が把握できたが、その量は明らかに封印された時から増えており、暴走した時のエーテル量なら総量を把握した時には制御出来るようになっていたが、増えた分のエーテルを制御することは不可能と思える程増えており、現在保持出来ているエーテル総量は封印時の最低でも10倍はあると悠一は考えていた。
封印をされた場所だが、人が入れないどころか、虫一匹通さない仕様となっており、悠一は食事の配給等も考えずに何も無い状態での封印をされていた。
だが、悠一は生きていた。仙人が霞を食べ生きると言われる逸話があるが、仙人のごとく悠一も生きていた。
封印については、悠一と一緒に封印をかけた魔法士は、もしも悠一が生命の危険になった際は、必ず封印が解除されるようにしていたが、食事のことを何も考慮せずに封印してしまい、少し時間が経ち、落ち着いてからそれに気づいたが、かと言ってすぐに封印を解除するわけにもいかず、数日で悠一が倒れてしまい封印が解除されると思い、食事や医療班を用意していたが、数ヶ月も何も無い事にドン引きしていた。
封印を手伝った魔法士は、セレスに悠一は何食べて生きているの?と最初の頃は真面目に心配していたが、数年たった今では、「空気かエーテルでも食べてるんだね。」と一人つぶやいていてセレスが乾いた笑みを向けていた。
実は悠一は封印することになった理由の一つであるエーテルの制御を覚える過程で、エーテルを体内から排出したり、体外よりエーテルを取り込んでいた際に、エーテルを体を動かす力に変換が出来るようになっており、エーテルの総量が増えたのも、この変換できるようになったことが原因である。
ちなみに今のエーテル量で前回の様な暴走をすると、爆心地直下の地球の地殻程度までなら爆発の衝撃でえぐれて地球滅亡待ったなし、かつ、もれなく地表のエーテルを持ってない人全滅レベルにはなると想定している。(あくまで悠一の私見)
悠一は封印された理由の一つである、エーテルを暴走させたことで大規模災害を起こしたことによる贖罪のための封印ではある為、当初はセレスが来ることに封印された事に対しての意味合いが無いと思っていたが、洞窟の中は何も無く普通だと一週間もすれば発狂する者もいるのではないかと思う場所であったが、半年もするとセレスが来るのが楽しみになっていた。
だが、封印の構造と封印に使われている洞窟は魔法を使うと明るくはなるが、内からも外からも見えずにお互いの顔もわからず、声も聞こえずであったが、洞窟の外に誰かが来た気配位は分かる程度には悠一が成長したため、おそらくセレスが来たと思うようになっていた。(元々気配察知程度はエーテルを持つようになってから出来てはいた。)
セレスが子供の事を悠一に向かって話してはいるが、聞こえていない為、自身に子供がいる事はもちろん知らない。
洞窟を離れたセレスは、近くに停めていた自動車に乗るために近づいて、付近に居た護衛の女性に話しかけられた。
「セレス様、もう戻られますか?」
「うん。ユリシア、朝から付き合わせてゴメンね。」
「いえ、大丈夫です。これも姫様の護衛としての任務に入っております。では参りましょう。」
ユリシアと呼ばれている護衛に促され、自動車(魔法で動く自動車)にセレスと2人で乗り込み、車は動いてフローティアのお城に向けて走り出した。車の中では、セレスとユリシアに会話は無く20分程で、セレスの住んでいる城の一角に到着した。
「到着いたしました。姫様、どうぞ。」
ユリシアがセレスを城の中に案内する。
そのままセレスの執務室に入り、今日の業務をこなしていき、昼になれば昼食を取り、午後も執務室で書類を確認したり来客対応したりして夕方になると夕食をとり、自室に戻りプライベートな手紙等を確認したり返信の為に文書をしたためていく。
それが終わる頃には深夜と呼べる時間となり、そのまま就寝といった、多忙な一日を毎日過ごしているが、セレスについては、王位継承権を破棄しており、王族としての仕事というのではなく、王国の仕事をして多忙を極めていた。
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