第2話 力による……

結はセンターゲート(魔法研究の最高峰の機関で、唯一異世界のフローティア王国への出入口がある施設)に到着し、仕事場でもある部屋に向かっていた。

「先生、おはようございます。」

「おはようございます。」

「夏川先生おはようございます。」

「おはようございます。」


自身の部屋に向かう通路で施設の人間から挨拶をされつつ、自身の部屋に到着した。


「ふぅ~。さぁ今日も頑張りますかぁ〜」

部屋の中に常設されているコーヒーメーカーのスイッチを押し、コーヒーが出来るまでの間に、パソコンを立ち上げ、メールなど部屋にいなかった間に届いたメッセージを確認していく。

「特に急ぎの仕事の依頼は無いかな?」

コーヒーが出来た音がして、結が取りに行き砂糖を入れてのんびりと飲んでいると、入口から来客を知らせるアラームが鳴り、結が返事をして扉を開くスイッチを押し、扉が開くとこの施設の長である松岡所長が入ってきた。

「おはよう。朝からいきなりすまないが、結君に依頼があってね。」

「おはよう ございます所長。内容をお伺いしたいので、少しお待ちください。」と結が追加でコーヒーを作り始めた。

その間に松岡所長は、部屋にある応接セットのソファーに座った。

コーヒーを作り、松岡所長の前に置き

結も松岡所長の対面のソファーに座り話をする体制になり

「おまたせしました。」

「かまわんよ。コーヒーを飲みながらでいいので、この論文の私見を聞かせてもらえないかね?」と松岡所長がスーツのポケットからSDカードをだして、応接セットの机の上に置いた。

それを結は手に取り、自身のタブレットを持ってきて、SDカードを読み込ませ、カードの中に入った論文のデータを確認しだした。

5分程度経ち、結が論文をある程度流し読みし

「所長、この論文…過激すぎませんか?」

論文のテーマは、魔法による人類の進化と魔法の力による新たなる産業の革命と書いており、魔法に目覚めたものを新人類とし、その魔法を使い火を使えるものに火力発電をさせたり、水を出せるものは、渇水時のタンク代わりや人工の池などを作成させる。土系なら土壌操作と、新人類と言いつつもこれでは、魔法士を隷属化して働かせるような記述が書いてあった。

(書いてある内容としては、私も松岡所長も想定したことがあり、実現可能とは言えるけど、魔法士が力を使うにはエーテルが必要で、空気中にエーテルは限られた量しか無いのは、研究者なら知っているはずなのに……)

「これは、魔法士を電池や使い捨てとしか思ってない書き方で、悪意すらありますね。」

「やはりそう思うかね?私も見て思ったが、やはり大陸側の考えを感じる書き方だね。」

「この論文は……、考え方は間違いなく大陸側の考えですが、魔法に対して無知過ぎませんか?著名な方が書いたとは思えません。」

「これはね、国内の大学生から送られてきた論文なんだが、国内にもこういった考えを持つ者が増え始めているようでね………。特に魔法での犯罪が起きるとね………。」

「あ〜今の法律や規制もほぼ無いので、魔法を持たない方からしたら、危険な別の生き物のような扱いをしても仕方ないとは言え……、ただ今だど言えることであって、魔法についてはあと数世代後にはエーテルを感じて魔法を使う人の方が多くなると、この論文の考えは通用しないとはわからないのですかね?」

「まぁ、そうなんだがね、やはり普通の考えでは自身の生きている間のことしか考えを思考しないと言うのも間違いでもないのだがね……。」

「困ったものですね〜。ただ魔法については法規制がようやく目処がたったと言うのが救いではありますね。」

「他人事のように言うが、結君がガンガン規制案に意見を付けて、具体的にまとめさせたのではなかったかな?」

「そうなんですが〜、あの議員って言う人たちは、逃げ腰で長い物に巻かれる、1発言程度では梃子でも動かない、美味い話には飛びついて来るのに、不味いと思えばそんな事聞いてないとか言うわブーイングの嵐を平気でするし、頭きて何度魔法をぶっ放そうかと思ったことか……。」

「結君……気持はよく分かる。大変だよね〜。だが…………早まってはいかんぞぉ〜。気持ちはわかるけど。」


夏川結は現在、研究者としてセンターゲートに勤めているが、この数年で自身が魔法を使えるようになり、魔法学や研究等の権威としても有名となっており、国内の魔法についての法規制の会合にも参加し、センターゲート内での研究による、魔法の学び方や制御方法、魔法を使える者の発見方法等を世界に発信しており、世界の魔法を使う者からしたら女神様と言われる程になっていた。

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