第二章 魔法のある世界

第1話 魔法のある世界

『次のニュースです。

日本で発生した、エーテルの導きと呼ばれる現象から、3年が経ち、世界ではエーテルを身に宿し、魔法を使えるようになった、通称 魔法士 と呼ばれる方が世界で一万人を越えたと国連から発表がありました。

また、その発表ではあくまでも使える方が、一万人超えたということですが、エーテルを保持しているが魔法が使えるほどではない方、または、保持しているが気がついていない方が多数いるとの事で、各国ではある年齢を決め、その年齢になった方への検査を義務化するなど、魔法が使える方を早期に発見するため及び魔法で発生した事象への各種法整備の取り決めを国連に加盟している国として協議していくとの共同声明が発信されました。』

『次のニュースは、その魔法士がおこしたとされる事件についてです。

昨日昼頃、◯◯市高砂にて、銀行を襲撃され現金を強奪される事件が発生しました。警察からの発表では、この事件の犯人は3人組、そのうち少なくとも1人は、魔法士と見られており、炎を手から出し、行員に怪我を負わせ現金の入った金庫を破壊し、現金約2億円を強奪したとの事です。犯人は逃走しており、警察が付近を捜索しておりますが、魔法士が関連した事件では、昨日も別の傷害事件で警察官が負傷するなどしており、県警本部長よりの発表で、自衛隊や警察内の魔法士を対策員として、この強盗事件に派遣し、早期解決を図るとしております。』

「沙月〜、これ呼ばれてるの?」

「そうですよ〜、私の部隊で対応したほうが安全なので〜、先に隊員に現場で対応しなさい〜って、行かせてますよ〜。」

「その隊長さんは、いつ行くのかな〜?」

「結さ〜ん、私は2人を保育園に連れて行ってから、のんびりと向こうに行こうとしてますよ〜。」

「いいの?(笑)それ?」

「私が行くと、隊員がビビるのでのんびりと行ったほうが、隊員は喜びます。」

「ママ〜、おしごといくの?」

「サツキママ、おしごと?」

美月みつきじんく〜ん。そうですよ〜ママはおしごと行きますよ〜。」

「「いつかえってくるの?」」

「保育園でいい子にしてたら、早く帰ってきますよ〜♪」

「じゃあ、はやくホイクエンいこ〜!みつきちゃんカバンもった〜?」

「もったよ〜じんはもういくの?」

「はやくホイクエンいって、いいコにしてたら、サツキママがすぐにかえってくるんだよね?」

子供達の無垢な願いに結は困った顔をしながら

「沙月?今日帰ってこれる?」

沙月は苦い笑顔で、

「ガンバリマス。」

と自衛隊の制服のジャケットを羽織り外に出る準備を整えていく。

美月と心の服装を、結と沙月が確認し、いつも通りうちの子可愛いと確認し、4人で保育園に向かうために、家を出て、ワンボックスカーに乗り込み結の運転で走り出した。

車の中では、沙月と美月、心が保育園で習った歌を歌っているのを、結が聞いて時折、拍手をしたりして和やかに運転していると、10分程度で保育園に到着し、心が車から飛び出して保育園の中へ入っていき、美月は沙月に抱きついて離れたくないとダダをこねだした。

沙月はいつものことだと思いつつも、結にアイコンタクトして、結も首肯し美月に

「美月?サツキママがオシゴトいけなくなるよ〜?いい子にしてないとママが帰ってこれなくなるよ〜?いいのかな〜?」

と言うと、美月が首をイヤイヤと振りつつも、離れて結の所に近づいてそのまま抱きついていき、

「ヤッ!?ママはやくかえってきて!!」

と沙月を見ながら叫び、結から離れて、保育園に入っていった。

「行ったわね?」

「行きましたね〜。」

「よし、私達も行こう。」

「結さ〜ん、いつもすいません。」

「それはお互い様なんだから、助け合うのは普通でしょ?」

「はい。あの事件の犯人は速攻でシバいて、今日中に帰ってきます。」

「沙月?2人の前でシバくとかは言わないでね?真似したらどうするの?」

「………はい。気をつけます。」

「んっ、じゃあ今日も駐屯地の正門まででいい?」

「はい。よろしくお願いします。」

と結が運転し、沙月が勤務している駐屯地まで車を走らせていく。

車の中では結と沙月が

「ほんとに最近は、魔法を使った犯罪が増えたわね?」

「本当に増えましたね。急に魔法なんて使えてしまうと、人は全能になった気持ちになって、時に人としてのタガを外してしまって過ちを侵すんですよね。」

「この世界の人にとって……と、動物にとっても、魔法やエーテルはまだまだ早かったのかな?それとも遅すぎたのかな?どちらにせよ今じゃなかった………かな?」

「いつ魔法と出会ったとしても、最初は戸惑いますよね…、私達が子供を育てて、毎日が初めての事があったりして困ったりするのと変わりませんよ〜。」

「それはそうね……確かに変わらないかもね?」

「そういえば、セレスちゃんは、次いつ来るとか言ってました?」

「センターゲートで顔見るけど、忙しいみたいで、心や美月と会いたい〜って言ってるけど、しばらく無理そうね?代わりに国王様や王妃様が孫連れて泊まりに来いとか言ってるけど、沙月休み取れそう?」

「あ〜、事情話せば中隊長とかは、休めって言いそうだけど、犯罪での対応が……ですね〜。」

「まだ後継者が見つからない感じ?」

「いるにはいるんですが、もう少し鼻柱をバキバキに折らないと、調子に乗って失敗しそうで目下教育中になります。若いからやり甲斐はあるんですがね……」

「沙月……おばちゃんの様な思考になってるわよ……」

「えっ?お・ば・ち・ゃ・ん?

……………確かに最近そんな感じが……イヤイヤワタシマダ三十前半オバチャンジャナイ。」

「沙月……20代の子に若いがついてる時点で……ね?」

「うぐっ!?」

「は〜い、沙月着いたわよ?」

「えっ?ムムムッ………行ってきます。帰れるようになったら連絡します。」

「りょうか〜い♪気をつけてね」

と沙月が車から降り、駐屯地の入口に向かっていった。

(沙月〜無茶はしないでよね?さぁ私も仕事いこ〜。)


沙月が駐屯地内に入ると、1人の隊員が近づき、敬礼をしてきた。

「おはようございます。卯花隊長。」

「おはようございます。町田一曹。」

と沙月も答礼し、沙月は目的の場所へ向かいだした。それを追うように町田も後ろをついて行く。

「一曹、他の隊員は出てる?」

「はい隊長。一班は昨日の要請後に現地にて情報収集、二班は一班との交代するために現地におります。三班は隊長を現地へ送迎するためと情報整理、引継ぎにて駐屯地で残っております。」

「よろしい。現地の情報を教えてもらえる?」

「はい。口外できない情報が含まれておりますので、タブレットをどうぞ。」

「う〜ん、逃走先…、被害者、けが人、犯人は………、これは確定?」

「はい。」

「分かりました。今から行ける?」

「はい。車は用意しております。」

「じゃあ、行きましょう。」

(犯人が炎使いで要注意レベルかぁ〜、危険度高いのなら急ぎで解決しておかないと、暴走されたら、周囲が消し炭になりますね。)

沙月が部下に案内され、車で移動しあと数分で犯人の足取りを追っている部下の下に到着しようとしていた時に、同乗している情報整理を担当している、別の部下の携帯から着信音が鳴り、すかさず携帯に応答し、内容を聞き取っていき………

「卯花隊長よろしいでしょうか?」

「はい、どうぞ〜。」

「犯人が見つかりましたが、現在二班2名が対応、一班2名が周囲への安全確保と担当する警察に連絡等対応しているとのことです。」

「じょ〜できですね〜。あとどれくらいで着きま……!?」

と沙月があと何分で着くかを確認しようとした所で、数百メートル位の正面で20メートル以上の高い火柱が上がるのが見え、沙月や車に乗っている部下も揃って見て固まっている。

「………停めましょうか?」

「分かりました。」

「三班は情報整理と報道対応お願いね。あと、今からやることは見てない。でお願いね。」と言い残し、沙月はその場から消えた。

次の瞬間……見えていた火柱が消え、何事も無かったように、静かになった……。聞こえてくるのは遠くから近づいてくる緊急車両のサイレンの音位で、先程まで悲鳴に似た避難を促す声も、火柱を近くで見て逃げる時に泣き叫んでいるような声も聞こえなくなっていた。


「は〜い。状況終了。撤収しますよ〜。」

「隊長……手に持ってるその犯人をお預かりいたします。」

「あ〜矢野二曹、おはよう。よろしくね。」

「あっ……おはようございます。」

「一班は昨日から帰ってないのよね?報告書は二班に書いてもらうから、その子(犯人)渡したら、上がりなさいね。」

「良いんですか!?」

「ちょっ…隊長。私達、来て引き継いだだけで、報告書作るんですか?」

「あら〜じゃあ二班は報告書作らないのなら、帰っても元気みたいだし、私と一緒に訓練しましょうか?」

「二班2名は、一班から引継ぎ報告書を作成いたします。」

「一班2名は、二班へ引継ぎ下番いたします。」

「は〜い、お疲れ様でした〜。一班は私と戻りましょうか?」

「了解しました。車を回してきます。」

一班の班員が任務で使用する車両を、沙月の前に止め、沙月ともう一人の班員が乗車するのを確認してから、車をゆっくりと出発させた。

「そういえば、隊員は全員怪我とかはしていませんか〜?」

「はい。全員無傷であります。ただ、服や靴が煤けたり、汚れや擦過傷が出来た程度であります…………隊長……?」

「はい。なんでしょうか?」

「先程いきなり隊長が目の前に現れ、犯人を拘束したように見えたのですが、あれはどのようにされたのでしょうか?」

「あれは、簡単ですよ〜上から接近して、炎の中に突っ込んで、中に居た犯人を気絶させて、終わりです。」

「隊長……炎の中に突っ込んだんですか?」

「あ〜気合いで………というのは嘘ですが、魔法で全身防御して突っ込めばうちの隊員なら問題なく出来ますよね?」

「あの熱量では、少し時間はかかりますが出来るかと……ですが、隊長みたいにいきなり相手の力量確認無しでは難しいかと思慮します。」

「そこに関しては、私だからできると言うことで。」

「はい。」

「まぁ、みんなより魔法を早く覚えたし、よく使うから……まぁ人より力を使うのがうまいとは思いますよ〜。2人も魔法を使い身体に慣らして色々なことを出来るようにしてくださいね?」

「「はい。了解しました。」」

(ほんとに頑張ってくださいね…、そうしないと……私を止めれませんよ。)







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