Side 沙月ー6

「あれ?私………悠一さん!?」

(ここどこ?あの世かな?にしては病院の感じがするし、私は助からない状態だったよね?)

私は、今着ている病院の検査着のような物をほどき、撃たれたはずの傷をさがすが、見当たらない。

(やっぱり私死んでますよね?撃たれたキズや他の傷も無いですし。キレイな身体になってますよ?

けど、身体は動くし、点滴は刺さって………いる?点滴?私、生きてるの?何で?とりあえず、周辺の情報を確認………と言っても敵性勢力の中ならその行動でも不味いわね……。)

「沙月…目が覚めたのね。」

「………結さん?」

音もなく扉が開き、私がいる部屋の中に結さんが入ってきた。

「あの〜私は……悠一さんは無事ですか?」

「一応無事よ……今はね。」

「どういうことですか……どこか怪我でもしたんですか?誰にやられたんですか?」

「それを説明するには、沙月………撃たれたあとの事覚えてる?」

と唯さんが私に近づいてきて、ベッドの横にあるパイプイスに腰掛けた。

「………すいません。覚えていません。」

「ならそこから話さないと、始まらないわね。あの時、沙月は死んでいたと思うわ。」

「死んだんですか?」

「えぇ、その後すぐに蘇生したのか、死んでいなかったのか、わからないの……。おそらく悠一が回復させたと思うわ。」

「悠一さんが、回復させた……ですか?」

「沙月が意識を失ったあと、悠一のエーテルが暴走したの。」

「暴走したってどういうことですか?」

「見せたほうが早そうね……。」

と手に持っているタブレットを操作しある動画を見せてくれた。

「これは、エーテルの爆発事故?えっ死者、負傷者が数万人?行方不明も……生物が死滅?」

「わかる?これ悠一がしたことよ。」

「何でこんな事に……何で私助かったんですか?」

「助かったことの理由は判明しているわ………、私達がエーテルを持っていたって事よ。」

「………何でエーテルを持っているんですか?」

「沙月……あなた、妊娠しているわ。3週目から4週目位よ。」

「えっ?妊娠したんですか?」

「そうよ。私も昨日わかったんだけど、妊娠2週目位よ。」

「ちょっと待ってください。妊娠したのと、エーテルを持ってることはなにか関係があるのですか?」

「えぇ、あるわよ。悠一の一部を私達が取り込んだといえばわかるかしら?」

「まさか、妊娠したからエーテルを持つ……いえ、子供がエーテルを持ってるということですか?」

「両方正解で、かつ身体の中にあるだけなら悠一の精液でもエーテルはあるわ。けど、正常に体内に取り込むのなら妊娠とかで、体内でエーテルを作り出して、そのエーテルが血液中に入らないと取り込んだとは言えなかったわ。」

「むっ………難しいですね。」

「確かなことは、私と沙月がエーテルを保有する、世界でも稀有な存在になったってことね。」

「そうなんですね……、それと私は何日くらい寝てたんですか?」

「2日よ。」

「2日ですか〜。悠一さんとセレスちゃんは今どこにいますか?」

「2人は今、フローティア王国にいるわよ。一緒かどうかは、わからないけど。」

「会えませんか?」

「セレスは沙月が目を覚ましたと伝えれば、すぐに飛んでくると思うわ。」

「悠一さんは?」

「悠一はね…………今は言えないわ。ごめん沙月。落ち着いて話せるタイミングになったら話しをさせて?」

「話せるタイミングっていつですか?」

「えっ?沙月?」

「悠一さんに会わせて下さい。」

「沙月、あなたはもう少し体力を回復させて、血も足りてないから、今は歩くのだってムリなの…雄一のことは、もう少し体力が回復してからちゃんと話すから……ねぇ。お願い。」

「分かりました。寝ていれば良いんですか?すぐに体力を取り戻して悠一さんのところに行きます。」

「ゴメンね。沙月……ゴメン。」


この日から3日が経ち、セレスが来たが、顔はやせ細り、今にも倒れそうな感じだが、何かを秘めた感じで私のお見舞いに来てくれた。

「お姉ちゃん元気になった?」

「は〜い、おかげさまで元気になってますよ〜。セレスちゃんは疲れていますね……何か私に伝えるために来ましたか?」

「やっぱりわかりま…す…よね……。はい。お話したいことがあります。ユイさんもすぐに来ますから、その時にお話しします。」

「おまたせ。セレス…いいの?伝えるのは私がするわよ。」

「ユイお姉ちゃんありがと……でも、これは私も覚悟を決めてきたから、私が言う。サツキお姉ちゃん。今からお姉ちゃんやお腹の子の様態が急変する可能性のあることを言わなければいけません。先に謝らせて下さい。こんな事になってごめんなさい。」とセレスが涙を堪えるように、決心が揺るがないように自分を鼓舞する様に私に告げてきた。

「ユウイチは今フローティア王国にいるのは聞いてるよね?フローティア王国には私が連れていきました。本当はお姉ちゃん達にも来てほしかったけど、怪我が治っていたとしても、すぐに移動させるには無理があると判断し、センターゲートで2人を預かってもらいました。2人が重篤な怪我から治った理由は、万能薬を身体に使ったからと言うのが説明しやすいです。万能薬というのは、エーテルを濃縮した液体で身体をもとに戻す治療薬になります。ユウイチの身体を治したのも万能薬です。」

「私は万能薬で助かったの?どこにあったんですか?」

「ゴメン、お姉ちゃん。万能薬を使ってはいないの。ユウイチのエーテルを近距離で濃密に浴びた事で、万能薬と同様の効果があったと言えば分かりますか?」

「ということは悠一さんが自身のエーテルを使って、治してくれたということですね。」

「そうなんだけど、実はそれで終わらなかったの。」

「どういう事?」

「ユウイチはね…エーテルを制御出来なくなって、自身の中に持っていたエーテルを放出したの…それが爆発事故と言うことになってる。」

「何で悠一さんはこんな事に

…………まさか?

…………うそですよね?

……………違いますよね?

セレスちゃんもしかして、悠一さんが制御が出来なくなった原因って………。」

「うん。2人が撃たれて、サツキが死んだと思って、自制が出来なくなったの………」

「そんな………それじゃあ悠一さんは?ひとりにしておいてはダメですよね?すぐに私を連れて行ってください。」

「沙月、落ち着きなさい。」

「お姉ちゃん、話しはまだ終わってない……の。聞いて?」

「くっ………ふぅ〜、はい。」

「あの時、私やお姉ちゃん達は私が張っていた障壁の中だったから、吹き飛ばされなかったけど、周りはね……物は吹き飛ばされたりしたくらいなんだけど、人は弾けるように爆発したりして、戦争でもここまでひどくないと言える状況になってしまいました。それを…その光景を、ユウイチは自身の制御出来ないエーテルで起こしてしまったのを目にしてるの。

そしてね……私がユウイチの制御出来ないエーテルをユウイチごと閉じ込める結界を一時的に張って何とか抑えたけど、悠一はその後気絶するように倒れたわ……。」

「では悠一さんは今どうなってるんですか?」

「それも一つ一つ説明していくよ。まずその後のお話しです。爆発から少しして、自衛隊の人達が来て、私達4人をセンターゲートまでこの前乗ったオスプレイ?で運んでもらいました。その方たちはサツキお姉ちゃんの事知っているみたいで、すごく心配してたから、あとで連絡して上げてください。

そのあと、マツオカ所長さんに、お姉ちゃん達を預けて、寝ているユウイチと2人でフローティアへ戻り、エーテルが暴発しても安全な場所を作り、そこでユウイチを安静にさせることになったわ。ユウイチが起きるまでは私もマールスとで交代に見てたんだけどね……、目を覚まして安心して、私達が少し目を離した時にユウイチが自殺したの。

ただねユウイチは死ねなかったの……首を刃物で切って私やマールスからみ見ても致命傷となるほどの深い傷だったの。……だったんだけど傷がみるみるうちに再生して何事もなかった感じで傷が無くなったの、それには私もビックリしたし、ユウイチも呆然とするしかなかったわ。」

セレスは泣きながら沙月と結に説明していた。

「セレス。もう良いから…少し休もう。」

「ううん。ユイお姉ちゃん、決まったことあるから……お話しをさせて下さい。

沙月お姉ちゃんゴメンね、続きをお話しします。

事故の次の日、パパとママがユウイチと面会して、今後どうするかを話をしたの。決まったことは、ユウイチはね取り返しの無いことをしてしまった罪の償いとして、死ねないのなら誰もいない場所に幽閉もしくは拘束してほしいと願い出たの……ただね、パパとママはそれは甘えだと叱責したの。けど、悠一の持っているその力は危険である事やそれを悪用する者が現れる可能性が否定できないと考えているの。

であるなら、制御出来る様になれば良いのではという事になったんだけど、ユウイチはね……制御出来るまでは私は危険な存在として取り扱うべきです。私が自身の力を制御出来なくてフローティアの皆さんや地球の人を殺すとかにならないように、何とか出来る方法が確立されるまでは、私を封印かなにかで閉じ込めてくれませんか?とパパに直談判したの、そう言われるとね?為政者としてはより安全な策をしなければいけないと言うことで、ユウイチの意見を採用しユウイチを王族のみしか入らない山奥の神殿に封印を施す事が決定したわ。」

「そうですか。結さんどうしましょう?」

「沙月…私もどうしたら良いかわからないわ。」

「お姉ちゃん達、ゴメンね。私もどうしたら良いかわからないの。」

と3人共が悠一の事で悩み、泣いて、困惑していた。

「セレスちゃん…悠一さんはいつその神殿に行くの?」

「それは、実はもう行って、封印されたわ。ごめんなさい…パパやママに私がユウイチの封印作業の妨害をする可能性があると、執行の日を教えてくれなかった上に薬で眠らされてたの。」

「なかなかハードな停め方をされたわね。」

「うん。やっぱりユウイチの事を一番に考えた上で、パパがしたみたいだから、怒れなくなっちゃった……。けど昨日はね……たくさん泣いたけど、お姉ちゃん達にも言わないとってすぐにこっちに来たの……」

「そうだったんですね〜セレスちゃん……ありがとう。」

と私はセレスに近づきセレスの震えている身体を抱きしめた。

「サツキお姉ちゃん、ゴメン、な、さい。」

「セレス。私からもありがとうね。話すの辛かったよね?」

と結さんが私とセレスを抱きしめてくれた。

「ユイお姉ちゃん………」



少しの時間だけど3人で思いっきり泣いて、少し落ち着いた所で、結が口を開いた。

「決めた。私ね魔法をもっと研究する。研究して、悠一の力を制御出来る機械か技術を作るわ。セレス手伝ってもらっても良い?」

「お姉ちゃん……うん、手伝う。私も自分の力をもっと付けて、ユウイチを抑えれるくらいの術者になる。」

「私は……もっと強くなる事ですかね?エーテルを持っているのなら、もっと強くなりますよね?悠一さんを止めれるくらいになります。結さんやセレスちゃんにもお手伝いお願いしないといけないですがね……。」

「お姉ちゃん達、エーテルを使えるから、魔法の授業もしないとね?けど、まずは、元気な子供の顔を見せてください。話しはそれからです。」

「それはそうですね〜」


(悠一さん、待っていてください。次は悠一さんをちゃんと守れるくらい強くなりますから。早く会いたいので、私はがんばりますよ〜。目標があるとやっぱり燃えますね〜。)

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